この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku

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67ある雨の晴れた日の出来事(改)

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梅雨の中のある日、朝から快晴となった。
そんな日は教師も授業の前から機嫌がいい。
どこかそわそわしていると思ったら、マリアの話によるとフリップ先生のお見合いがうまくいったそうで婚約を交わしたそうだ。
相手は小さな領地もちの男爵家で跡取り娘、領地は小さくとも商売を成功させていて子爵家レベルの資産持ちだ。
フリップ先生の家はもともと大きな商家の次男の出なので、これは商家同士のめでたい組み合わせだという。用は政略結婚だが、フリップ先生は相手のお嬢さんに強く好意を抱いているため色と欲がうまく合致した例だという。
何はともあれめでたいことと

「先生ご婚約おめでとうございます」

「ありがとうございますアドラス様」

「先生の婚約はおめでたいのですけど、そうなると僕の家庭教師の仕事はどうなるんですか?」

「残念ですがやめることになります。でも心配なさらないでください。
次の後任候補はアドラス様の父君がちゃんと探しておられますよ。
一応私も後任を任せてもいいと思った知り合いのものを子爵様に推薦しましたが、どうやら子爵様は心当たりのあるご自分でお探しになった方に、アドラス様の家庭教師をお任せしたいようです。
なんでも王都のなんていったか忘れたのですが、伯爵家のご嫡男などの家庭教師をなさっていらした方だそうです。
その方お体が少し悪いらしく、医師から田舎での転地療養を進められたそうです。と言っても人に移る病気ではないそうですが、アドラス様一人の家庭教師は十分できるので、この屋敷で住み込みの生活して療養がてらおしえられるそうです。」

「そうなんですか、それを聞いて安心しました。で、男の方ですか?女の方ですか?」

「確か男性だと聞きましたが・・・・・・」

<この分だと名は知らぬようだな>
「そうなんですか」

「では今日は授業は終わりです。これで失礼しますね」

「フリップ先生、ありがとうございました」


ぴしっ!、ガラガラガラガラ・・・・・・・・・・・。
フリップ先生が帰ると同時に聞こえるその音に、2階の自室の窓から外を見やったアドラスは、2人の護衛騎士付きの一台の馬車がこの屋敷の門のほうにやってくるのが見えた。
遠目にもその馬車にえがかれた家紋はグレーソン男爵家のものだった。
「アルバートとギルバートが来た!」
ミュラー子爵家から見て、コンラート男爵家のほうがグレーソン男爵家より手前近くにあったので、ギルバートはグレーソン男爵家の馬車にアルバートと共に相乗りしているのだ。

「アドラス、きたぞー!」
買って知ったるなんとやら、5歳のころからの付き合いであるギルバートは、自分よりおとなしいアルバートを従えて、元気よくアドラスの部屋のドアをあけ放って入ってきた。

「何して遊ぶ?」
アドラスの質問にギルバートはにやりと笑い

「剣だ!今日こそ勝つぞ!」

「オーケー、受けてたとう!」

「次は僕だよ」とアルバート



中庭で子供たちは剣を打ち合う。
それをアドラスの母親とメイドたちが観戦する。

「ヤァ!!」
アドラスが気合もろとも練習用の剣を振り下ろす。

「エイ!!」
それをギルバートが剣で受け止めてアドラスの剣をからだのよこに流す、そしてすかさずアドラスに剣をよこなぎに振るう。
たちまちアドラスはパッと後ろにとび下がる。
再び二人は剣を真剣に構えあう。
エリザベスは優雅に子供たちの剣の勝負を椅子に腰かけ、テーブルにセットされた紅茶とスコーンを食べながら観戦していた。
そばにはルーシーとマリアが「ぼっちゃまがんばって!」と応援していた。
アドラス対ギルバートの剣の勝負は今日までに35対6でアドラスが勝っていたが、最近ギルバートはかなりいい線まで行くようになりだしていた。

執務室で帳簿を片付けていたヘンリーは、ワーワーキャーキャー言う声が外から聞こえてきた。
補佐のマイクとカークもきっとギルバートとアルバートが来てアドラス様といつものように剣の打ち合いをしているのだとその声から判断した。
フクロウの壁掛け時計が3時を知らせた。
侍女がいつもの休憩時間だと、紅茶とフルーツケーキを台車に3人分乗せて執務室に入ってきた。

「休憩にしよう」

「はい、そうですね」

三人は卓上に置かれた紅茶とケーキを食べるために、いつものように長椅子にめいめい腰を下ろし食べ始めた。
子爵家の紅茶は割といい紅茶が使われているうえに、おいしそうなフルーツケーキに思わず舌づつみを打つマイクとカーク。
3人にとっては仕事休みの3時のお楽しみだった。
仕事で疲れた脳も甘いケーキで、エネルギー充填、リフレッシュ!。

今日は朝から空が晴れてたので、午前中に領地の視察に護衛を従えて三人で出かけた。
領地の橋の様子や農地の様子を見、村長から話を聞く。
今のところ例年どおりの様子で、橋が決壊する様子もない。
何せ修理してまだ2年、頑丈に高く作りかえてるのだ。
当然それなりに費用が相当お高くいったが、そのための税はしっかりと取っていた。
公共工事に税を使うのは当たり前、世の中には領民から税をとりたてるのをためらい、必要以下に税をとる領主もいるようだが、ヘンリーに言わせれば愚の骨頂であった。
そんなことをすればいずれ必ず莫大な借金となって領主に返り、国に税金が払えぬからと爵位返上、領地没収の憂き目にあう。
そうなったら次の領主となってきたものが強欲なもので領民からビシバシ税をとりたてたらどうするのだ?
結局苦しむのは領民なのだ。
だからヘンリーは、農地が豊作の時や、いつもどおりの出来の時はちゃんと税をしっかり取り立てるのだ。
そして領主として生活自体は質素にして、飢饉の時や豪雨災害の時に取り立てた作物の一部を積み立てて保管し、いざという時は領民に分配したり、市場に流し税金を払うために現金化するのだ。
そうしないと高利貸しから現金を借りて税を払うことになってしまうからだ。
だからと言って普段の年は必要以上に取り立てたりはしない。これこそが良き領主様とヘンリーが言われるゆえんだった。
ヘンリーは領主としての心構えを8歳のアドラスにも教え始めていた。
アドラスは父親の言うことをしっかり理解し、将来は自分の跡を継ぎ立派な領主になるだろうとヘンリーは今から息子の将来が楽しみであった。
だがその未来にバリアス王国を属国にしようとするサンザ―帝国が暗雲として垂れこめていたのだ。

この時ヘンリーは身近な真の敵をまだ気づいてなかった。

その真の敵とはアルバートの父グレーソン男爵であった。 




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