上 下
66 / 89

62サセックス領の暴動

しおりを挟む
サセックス領は領都レジーナを中心に5つの村々がある、一つの村に合計100人ばかりが住んでるところもあれば2~300人住む村もある。
それらの村々を商隊が毎年いくつも村を回り、買い付けたりあるいは品々を売ったりして商売をするのである。
だが今年は税が2年前から50パーセントになったため、村からは棄民まで出る始末で商隊の数はめっきり減った。
しかしそんな中でも村を回る商隊はあり、その中には奴隷商もあったが、明けガラスの一人であるジャンはもっぱら日用雑貨や綿の布に塩や油などを専門に売り、村々からは村の内職である刺繍や麻の布、農産物を買い付けていた。
だが今年はどこの村もひどい不景気で客の数も減る一方だった。
しかし村の客たちが商隊に求めるものは、何も品々の売買ばかりではなく、領都レジーナや他の村の動きや事件の情報を、それとなくしいれるという役目もあったのだ。
そういう時は必ず村長の家に泊まり、夜はちょっとした宴会になり、村の男たちや宴会用の料理を作る女たちが集まり、商人から周りの村や領都レジーナで何が起こっているか話を聞くのである。
明けガラスのジャンはこの時、ほかの村の情報のほかに領都レジーナで暴動が画策されてる話をしたのだ。

「暴動だと!?それは本当か!?」
村長は驚きの声を上げ、一緒に料理と酒を飲んでいた村の男衆や接待の女衆はしんと静まり返った。

「あくまでも噂だぜ、」

「うわさか」

「ということにはなっているが俺が仕入れた情報によると、領都の連中はこの暴動を成功させるためほかの村々と連携して一斉蜂起をねらってるそうだ。そうすれば子爵の持つ騎士団も手におえずに暴動を鎮圧できないからな、あんたたちはどうする?
このまま領主に従い税を50パーセント払い続けるのか?
俺が見たところ、この村でも棄民した家がだいぶあるな。この時間にもなって煙突から煙が立ってないのが何よりの証拠だ。」

「確かにあんたの言うとおりだ。
村はだいぶさみしくなってしまった。連中は主に王都を目指していった。
一家離散よりはましな選択だと俺は思っている。」

「あんたたちはいつまで領主の横暴に我慢し続ける気だ。
どこまで耐える気だ。領主一家の贅沢で豪勢な暮らしをさせ続け、さらに領主は領主お気に入りの愛人に、高価な宝石やドレスを次々と買い与えさせるために、領民はかわいいわが子や妻を泣く泣く奴隷に売り、税をはらうのか?
違うだろ?」

「おれたちにどうしろと?」

「村長、もうすぐ感謝祭だな、」

「ああ、今年は盛大に感謝祭を祝えない、感謝祭の後には領都か徴税官が派遣され税の取り立てがある。いったい何人の村人が税を払えるかわからねえ。」

「村はそんなに追い詰められてるのか!?だったらもうやるしかねえだろ、領都では感謝祭の後に暴動をおこすと計画されてる、時間は教会の暮れ六つの鐘が鳴るのが合図でいっせい蜂起だ。」

「それは本当なのか!?」

「本当だ。俺はこう見えても、地下レジスタンスから村長あてに、一斉蜂起を誘う手紙を預かってる。」

そういうとジャンは服の襟から手紙を引き抜いて村長の前に差し出した。
村長はごくりと生唾を飲み込み、折りたためられた手紙を広げて読んだ。

立て!勇気あるサセックス領民の諸君!!と題された手紙はもはや領民にとってこれ以上の税の取り立ては限界であり耐え切れないこと。生きていくために領主打倒が宣言されていた。
決行の日時は感謝祭当日の暮れ六つの時間に領都をはじめ各村々、サセックス全領域で暴動が開始されることが宣言され、熱烈に参加してほしいことが書かれていた。
村長はしばし考えこみ目を閉じた。村民たちは息をつめて村長の言葉を待った。
やがてすっと目を開けた村長は
「よし、わしはやるぞ、みんなはどうだ?わしはもう領主打倒しか道はないと思う。これ以上耐えたってもはや我々には死を待つばかりだ。わしはやるぞ!」

「村長!わしらもついていきます、俺たちはもう生きるも死ぬのも一緒だ。」

「そうだそうだ!このまま飢え死にするのを待つくらいなら領主を倒すんだ!」

「「「「領主を打倒するんだ!!」」」」
こうしてこの村もまた、他の村々と同じく領都一斉蜂起の暴動にひそかに参加することを決定したのだった。

感謝祭まであと三週間を切っていた。




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...