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44隠れ家を作ろう

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「ありがとうございました。またのご利用を」

アドラスは御者に馬車の途中からの乗車代金10エルクを渡した。先に街に入るときの入場料は冒険者ギルドタグを門番に見せて、アドラスの場合は無料だった。
アドラスは自分が初めて他領に来たことに、ちょっとわくわくした気分だった。
この町はエルベ領の領都ジュダークである。
人口はアドラスの住むミュラー領の領都と変わりはない4千ほど、町の建物や雰囲気もあまり変わりはない。通りを行きかう人々の中を、リュックを背負って進むアドラスは、情報集めはどこですべきか、というかお腹がすいたので、持ってきたバケットを食べるに都合いいところはないかと探した。
アドラスは町の中をリュックを背負いテクテクと歩く。
5月だというのになかなか今日は日差しが強く、アドラスは額を無意識に拭った。
すると屋台がいくつも通りに並んだところに出た。フルーツジュースを売る店、串焼きの肉を売る店、一見するとお好み焼きに似たものを焼く店、アクセサリーを売る店などなど、アドラスのお腹をこれでもかと刺激する、おいしそうなにおいを各店がたてる。
アドラスは串焼き屋の前に立った。そういや今世では貴族の生まれのおかげで串焼きなんて食べたことがなかったんだときづいた。
「おじさん、この串焼きの肉は何なの?」

「ああいらっしゃい、こいつはホーンラビットの肉だよ、でこっちは魔鶏の肉だ、」

「じゃ、ホーンラビットを2本に、魔鳥の肉を2本頂戴」

「はいな、坊や落とさないように気をつけてな、袋に入れてやるからな、お代はしめて8エルクだ。」
アドラスは代金を支払い、近くにあるベンチに腰を下ろして、リュックを下ろし通りを眺めながら、うまいうまいと串焼きを食べていた。
買い物かごを片手に小さな子供を連れあるく母親、小ざっぱりした服を着て通りを笑いながら足早に歩く青年の二人組、中年の商人らしい人が通りすがる。
向かい側にふと新聞スタンドがあることにきづいた。
<あれ、このエルベ領のことが乗ってる地元の新聞か?そうだこのエルベ領の地図があるかも、ただやみくもに空き家を探すのは無理かもしれない、俺の遠視能力と透視能力ををそんな風に使ったことは今までないからな、それに人にうかつに聞くのは危険かもしれない。一応このエルベ領がどんな領か調べる必要があるのでは?情報収集か・・・・・>
アドラスは食べ盛りの育ち盛り、ペロッと串焼き4本平らげて、たれで汚れた手をズボンのポケットにはいったチリ紙で拭いとり側のごみ箱にポイと捨てた。
新聞スタンドで地元新聞を買い地図も買った。
ベンチに戻り、水筒をリュックから出して、紅茶を飲みながら新聞を読む。
記事の一面を飾っていたのはこのエルベ領の領主オースチン男爵の誕生パーティが領主の館で盛大に行われたこと、男爵の長男が5歳の誕生日パーティが来週あること。そしてアドラスの注意はある記事で目に留まった。
「放火!?空き家への放火がこれまでに5件だって!?犯人はまだわからず捕まっていないだと。」

<これってこの俺が仮に空き家を修繕し拠点にしても、放火犯に空き家に火がつけられたらおしまいってことじゃないか!!今まで人が住む家には放火されてないっていうけど、この記事読むといつそうなるかわからないって書いてあるな。うーん・・・・・これはどうしたらいいんだろう。>
アドラスは一軒の店に入った。そこは女性子供が食べに入るホットケーキと飲み物を売る専門店だった。日本がまだこの世界に存在していた時代、ホットケーキのレシピが伝えられ、
以後、各家庭でも食べられたり、ホットケーキ専門店もできたのである。

店内はすいていた。
<これは時間的なことで空いているのか?まあいい、>

「いらっしゃいませ、ご注文は何になさいますか?」
そういってウエートレスは水の入ったコップをテーブルに置いた。

「メニューください」
アドラスはウエートレスから渡されたメニュ―表をさらっとみる。

「このラズベリーの生クリームのせホットケーキをください、飲み物は後で注文します」

「わかりました、店長ラズベリーの生クリームのせホットケーキ入りました」

「あいよ、ラズベリーの生クリームのせホットケーキ一つね」
その声に前を見ると、この店はオープンカウンターだったことに、アドラスはきづいた。
コックは中年に差し掛かる男性だった。

「あのここじゃなくカウンターで食べてもいいですか」

「いいですよ、お客様のお好きな通りに」

「ありがとうございます」
<店長のほうがウエートレスよりは放火の情報知っていそうだからな・・・・・・>
そう思いコップの水を一息に飲み干し、隣の椅子に置いてあったリュックを背負い、カウンターに向かって歩き出したのだった。




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