この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

３７アドラスの考察

「おかえりなさいませ、アドラス様」とメイドのハンナが玄関で出迎えて言った。

「ただ今、」

「医療ギルドの半日の見学はいかがでしたか？」

「うん、医療ギルドとはいえ万能ではないということがわかったよ、でも今日来た患者はパーフェクトでなおしていたけど、知ってる？感染症と病は光魔法でも直せないんだよ、その場合は医師か薬師なんだって」

「感染症は知ってましたけど、病になったら光魔法でも直せないんですか？それはしりませんでした」

「アドラス様、もう少しで昼食のお時間です。お着替えをいたしましょう」と執事長の代わりにアドラスを医療ギルドまで出迎えにやってきた侍女のマリアが言った。今頃父上と執事長は執務室で、領地にかかわる執務をしているはずだ。
玄関わきに置かれている大きな柱時計を見ると１１時半だ、あと３０分で昼食である。
マリアとともに自室に戻ったアドラスは、マリアに着替えさせられながら食事のあと漢方薬の本を見てみたいと考えた、これまで植物学の本を読んでも漢方薬の本を読んでみたいと考えなかった。
＜この家にあるといいんだが、なければ父上に買ってもらおう。＞


「あなた、これはどういうことですの？」　

アドラスの母エリザベスは4枚の宝石商と仕立て屋からの領収証を夫の机にバンとたたきつけた。
どれもとても高額の金額の数字が書かれていた。
夫は顔を青くしてつばを飲み込む。執事はだから言ったのにと息を飲み込み主をちらりと見た。
「たかが飯屋の女に、この私でもなかなか買ってもらえないこの高額の宝石代とドレス代、絶対に許せませんわ。一体こんなものかってやって飯屋の女をどこに連れて行こうというんですか？それはどこの夜会ですの？あなた！、ヘンリー！！」

「うう・・・・ボルマー伯爵家の夜会だ。」

「なんですって！？親であるボルマー伯爵の生誕パーティーに、ご自分のパートナーとして連れて行くとおっしゃるの！そのパーティーならこの私が半年も前から準備してましたわよ、ドレスもアクセサリーもすでに決めてましたのに、一体なぜあの女を私の代わりに連れて行くとおっしゃるの、あまりにひどい裏切り行為ですわ、それともあなたはこの私といずれ離婚するからとそういってあの女を連れて行くというのですか？アドラスが知ったらあの子は何というでしょうか、あの子はまだ８歳、誇り高く誰よりも聡明なあの子が母親が夫にないがしろにされていると周りの貴族からあざけられて足蹴にされてどれほど傷つくでしょう……あなたはあの子のことをお考えになりませんでしたの！？あの子が余りに哀れで不憫ですわ・・・・・ううううぅ」

「あ、いやその、すまぬ、アドラス、お前の言うとおりにする、」

「本当ですの？そのお言葉に嘘偽りはございません？」

「嘘ではない、やはりいくらねだられたからと言ってあまりにも軽率だった。」

「ああ、あなた、やっぱりあなたはわたくしのご信頼を申し上げる旦那さまでしたわ、うれしいですわ、信じてますわヘンリー」

「エリザベス、愛しているよ」

「ああ、あなたわたくしもですわ、わたくしの愛は永遠にあなたとアドラスのものですわ」

「すまなかったエリザベス、愛しているよ、この際言っとくけど私は君と、離婚するつもりはないから、私の妻は君だけだ。」

「ええ、ええ、愛していますヘンリー」

「僕もだよ」



「はあー」

「どうなさいましたアドラス様、ため息などついて」

「のどが渇いたな、それに見学で少し疲れた、でも大丈夫だよ」

「そうですか？ならよろしいのですが、今お飲み物をお持ちしますね、」

「うん、ありがとう、マリア」
パタン！
マリアがお辞儀して部屋から出て行った後、アドラスは長椅子にどさっと腰を下ろした。
アドラスはさっきまで透視していたことを考えた。　
＜まじめに仕事してるかと思ったら、父様女に懐柔させられて、親であるボルマー伯爵の　生誕パーテ－こと寄子貴族の集まりでもある年一回のパーテーに、母様のかわりに愛人を連れて行こうとするとは！、それでは母様はお飾りの妻でいつ離婚になっても不思議ではないと周りの貴族に思われるではないか！おれの父上がそんなばかとはおもわなかった！！、それともそれこそが目的か！？・・・・・・・・・・・・・・・・・
一応母上に言われて取りやめにしたらしいが信用はならないな、俺は将来父上の後を継いで、ミュラー領の領主になるつもりだったが、母上に万一があった時この家に愛人と愛人の連れ子を入れ、後妻にするかもしれない。そうなったらいずれ後妻との間に子が生まれて俺は追い出されるな、このままでいいわけがない。何か対策を考えるべきだ。
一番いいのは手に職を付けるべきだが、すると医療ギルドか、優秀な医療ギルド員は確かにどこに行ってもくいっぱぐれがないな、それに薬学の知識があったらより生存確率が上がるのでは？ヒール治療もできる医師か薬師になれるかもしれない。いいじゃないか、それに俺の修繕魔法だが、医学的に本当に有効性がないのかな、修繕魔法は結局物を修繕するしかできないのかな、人間には応用できないのか？俺には透視能力があるから骨と筋肉、する気になれば内臓まで透視できるはずだ、かなりえぐいと思うけど物は試しと実際にやってみるかな、いわば前世のエコー検査だな、そのうえで修繕魔法、あるいはヒールが使えたら、もしかしてがん治療もできるかもしれない。やっぱ俺前世医師になりたかった未練が今世でもかなり引きずってるかもしれない＞

コンコン！
マリアがワゴンにカップとティーポットを乗せて戻ってきた。
カップに注がれる紅茶から馥郁たるいい香りがする。
それを口元で傾けて紅茶を飲むアドラス
「おいしいよ、まりあ」
マリアはにっこりとほほ笑む。

＜マリアを今透視するのはやめておこう、せっかくおいしい紅茶を飲んでるのにきっと食欲がいっぺんに失せるぞ＞
そう思うのでマリアを透視するのはやめたアドラスだった。

＜透視するならやはり男性か、その方がマナーにかなってるな＞