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31アドラス6歳

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王太子殿下の婚約が決まったのはアドラスが5歳の時、お相手は隣国ウエルネス王国の第一王女アドリアネ王女殿下だった。そして一年後の今日王太子殿下は結婚される。
ウエルネス王国はバリアス王国を挟んでサンザー帝国と対峙する王国だった。
此度の婚姻でバリアス王国とウエルネス王国は同盟を結んだ。もしサンザー帝国がバリアス王国を攻めたら約定により軍を派遣することを明示した。そしてもしサンザー帝国がウエルネス王国をせめたらバリアス王国もまた軍を派遣し加勢することを取り決めたのだ。
完全な政略結婚だったがこの同盟を取り結んだ政略結婚により、国内はお祭りムードだった。それはこのミュラー領でも変わらない。
アドラスの平民の友人ジミーの母は、きっはいつもより客が多く大忙しだと言って職場であるエルマの店に、出勤していった。
アドラスの両親は王太子殿下の結婚式に参列するため王都に出かけて行き、アドラスは例のごとくお留守番だった。そこでアドラスはバスケットに野菜サンドイッチと卵サンドイッチにフルーツケーキとドーナツ、プラムの実を詰めて入れ、さらに砂糖入りの紅茶を水筒に入れてジミーの家を訪ねた。
何時ものごとく護衛はシッロの兄弟だったが、護衛にもバスケットを持たせ、家名のない一般市民用の馬車でたずねたのだ。ジミーの父は商品を馬車に乗せ、村から村に周り商品を売っていたが、ある日土砂降りの雨がつづいた日、がけ崩れが起こり馬車事埋まったという。
以来母親は父親が家族を残し家を出て以来、エルマの店で料理を運ぶ接客の仕事をして、子供のジミーを育てた。
そのため、ジミーは少しでも母親を助けるため、ギルドで薬剤採取の仕事をして母親を助けてたという。ジミーの母は父親がかけ崩れで死んだと知った時悲しかったが、でもこれで父親はもう自分たちを裏切ることはないという思いがしたという、その言葉にジミーは何とも言えぬショックを抱いた。それは夫に裏切られた妻の思いと、父親を亡くした子供の悲しみの違いかもしれない。夫婦は所詮他人同士だが、父と子は血がつながった肉親同士だからだ。


シッロとハリーは、テーブルにバスケットの中身を広げていた。
バスケットから取り出した数々おおいしそうなサンドイッチやら、鳥の足のローストチキンにフルーツケーキ、ドーナツにプラムの実に温めなおした砂糖入りのおいしい紅茶に目を輝かせるジミー。
ご相伴とシッロとハリーの分もあった。今日はめでたい王太子殿下の結婚の日、この日は祝日とされ、国中あちこちで飲めや歌への光景がと繰り広げられる。
セオルーガ神に食膳の感謝の祈りを上げ、一同食べ始める。
「うま、野菜サンドイッチおいしい、」とジミー

「卵サンドイッチもあるよ、鶏が今日卵産んだんだ。」

「アドラスの家の鳥の卵おいしいな、さすが金持ちの家の鶏は餌からして違うんだろうな」


「それはアドラス様が言い出したんですよ、より新鮮な卵を食べるためには屋敷で鶏飼った方がいいと言って、」

「だって、伝書鳩は屋敷ですでに飼ってるのに、鶏飼ったってそんなおかしくないでしょ。」

「確かに同じ鳥科と言えば鳥ですね、おかげで毎日新鮮な生みたての卵が食べられるようになったけど。」

「さてと食べ終わって紅茶を一服したら勉強と魔法の練習をするよ、ヤギも飼ったしね」
アドラスが言うと「えっ、ヤギも飼ってるの?」とジミーは驚いた。

「うん、新鮮なヤギのミルクが飲みたかったからね、ヤギのミルクって栄養があって体にいいんだよ」

「そういえばアドラスが、牛乳が飲めなくて飲むと腹をくだす人は、ヤギの乳がいいって言ってたね。」

「うん、そう。さてと、食べ終わって紅茶を一服したら勉強と魔法の練習をするよ」

「うん、ありがとう、アドラスに教えてもらうとよくわかるんだ。」
教会学校で読み書き計算を教えていたが、女手一つで育つジミーは安いとはいえ有料の教会学校に通うのは経済的に苦しかった。だからアドラスが勉強の本や小さな黒板やチョーク、ノート類を用意し、勉強や魔法をジミーに教えているのだ。
ジミーの母はそんなアドラスのことを、裕福な商人の息子と思って心から感謝していた。が、ジミー自身は資産家の訳ありの子と思っていた、まさか領主の嫡子だとは灯台下暗しで夢にも思ってなかった。
<読み書き計算ができれば将来職業の幅が大きくなる。より高収入の安定した職業につけるのだ。>
今現在ジミーに教えてるのは、前世日本の小学生でいうところの小学校2年生レベルの算数と国語だった。アドラス自身は家庭教師が「坊ちゃまは天才です」と驚喜し、とっくの昔にこの世界では前世小学校に当たる幼年組レベルは終えていた。
だが反対にマナーに苦手意識があった。
母に言わせれば「年相応なところがあってホッとするわ」と喜んでいた。


食事をし一服し算数と国語が終わると、魔術コントロールのためのお手玉位の魔道具のボールを二つ手にし空中に放る、次々と色を変えようとする。水属性なら一番出やすい色は水色だが他にも赤や黄色・緑・青と橙など色を次々変えていく。目下のところジミーは水色に青と2色、色が変わるところまでだった、これをさらに増やしていくのだ。アドラスが見本を見せるためお手玉のように放る。このおもちゃに見える魔道具は、貴族の子や裕福な家の子弟のみが持つ魔力コントロール専門の魔道具だった。平民の子たちはこれを持たないので、おかげで魔力があっても大雑把な、出力もそれほど多くない魔法になってしまうのだ。
だからアドラスは館にあった、余った魔力コントロールのボールをジミーに貸したのだ。
「水色、赤、黄色、緑、青、」 
「うわー相変わらずアドラスはすごいなあ」
「まだだよ、橙色が出てない・・・・はい頑張ってみて、ジミー」
「うん」
アドラスは魔法の師匠から、これで各色でグラデーションに変化するようになったら、一応魔術コントロールの基礎は終わりですと言われ終わりをめざして、アドラスはひたすらお手球式魔道具を空中に放るのだった。
そんなアドラスを横目にジミーも頑張るのだった。
いつの間にか太陽がだいぶ傾き、アドラスはまたねとジミーに別れを告げ、シッロとハリーを連れてその日屋敷に返ったのだった。



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