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2章 学園編

26話「終わりを告げる紙」

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  あの後。特に何かが起きる事もなく朝を迎え、そのままザナール港に辿り着く。

 着くなりすぐに海沿いにある指定の倉庫まで荷物を送り届けると、作業員らしき人物達が木箱を次々と荷台から降ろし倉庫の奥へと運び込んでいく。

 運び終えるとブタガエルも共に倉庫の奥へと入っていった。

「ここで暫し休憩をくれてやる。2時間後には必ず戻ってこい。」

 この嫌な言い方を残して。

 昨日の夜の話のよれば、木箱の中身は灰色魔石だ。

 恐らく取り引き先はオトンや。

 けど、生命エネルギーを使うから断念したんやなかったんかオトン!

  僕はそう思いながら皆の目を盗んで、真実を知るべく倉庫の中へと忍び込んだ。

 倉庫の中は薄暗く、辺りには同じような木箱が積み立てられたものがいくつもあった。

 更に奥へと進むと、ブタガエルがいた。

 どうやらブタガエルは誰かと話しているようだ。

 話ている相手は丁度影になっていて顔は確認できない。

 僕は木箱の影に潜み、様子を伺うことにした。

「さぁ!物は持ってきたぞ。約束の物を渡してもらおうか。」

 ブタガエルがそう言うと、木箱を確認するべく現れたのは、独特な黒文様の白い仮面を被り、全身黒装束。そして腰には日本刀を下げている。

 オトン!!

 やっぱりや。やっぱりオトンが絡んでたか。

 パキッ!

「誰だ!!?」

 しもた!そっちに集中しすぎえ足元の意識が外れてしもた。

 僕は踵を返す様にその場を去ろうとすると、既にオトンが前に立ち塞がっていた。

 あちゃー。

「何故お前がここにいる?」

 オトンの声が重い。

「いや、これは‥」

「なんだ!?誰かいるのか!?」

 ブタガエルが此方に向かってこようとすると、オトンは僕をもう一度影へと押し戻した。

「何もない。ただのネズミだった。」

  オトンはそう言うと、僕に紙を手渡し元の場所へと戻った。

 紙を開けると魔法で焼き文字が書かれている。

〔3日後に帰る。〕

  僕はそれを見るなり「ふぅ。」と深い息を吐き出した。

 時期が来たっちゅうこっちゃな。

  おっと、また何やら動きだしたか。

 僕はまた息を潜める。

 「いらぬ邪魔が入ったが、まぁいいだろう。改めて金を渡してもらおうか。」

「ふむ。先に物を確認させてもらう。」

 オトンが木箱の中身を確認すると、中に入っていたのはやはり大量の灰色魔法石だった。

  あんなに大量の魔法石。いったいどれだけの人間が生命エネルギーを奪われたんや?恐らくやけど、あの従者2人の周りに起こってる流行り病もあの石の所為だろう。

「確かに。これが金や。」

 オトンは異空間袋から金貨が溢れるほどズッシリと入った袋をブタガエルに手渡した。

「そこに大白金貨5枚分が入っている。」

 大白金貨!!?そないな大金をオトンは何処に隠しもっとったんや!?

「ぐふふふ!確かに受け取った。だがしかし、こんな物をどう使うのだ?他の魔法石と違い、なんの反応も示さん。これでは只のガラクタではないか。それとも何か特殊な方法でも?あの薬の様にワシに更なる知識を教えてくれ。」

「‥知る必要のない事だ。」

「ふん。つくつぐ掴めぬ奴だな。だがそれも終わりだ。おい!お前達!」

 ブタガエルがそう言うと、さっきの作業員らしき人物達が武器を持ちゾロゾロと現れ出しオトンを囲んだ。

「何の真似だ?」

 ブタガエルは醜い笑みを浮かべる。

「知れた事を。その魔法石の使い方を教えてもらうのさ。それほどの大金を出せる代物だ!只の石な訳がないだろう!さぁ、それをどう使う!!?答えろ!」

「金で済めばいいものを強欲にまみれた愚かな奴だ‥。」

「黙れ!!この人数相手に冷静でいられらるのも今のうちよ!取り押さえろ!!」

 作業員達が一斉にオトンに飛びかかる。

 だがその一瞬。チン!と刀を鞘に仕舞う音が響くき作業員達の動きが止まる。

 それを見たブタガエルは怪訝な表情を浮かべる。

「おい!貴様達!!どうした!?早くとりおさ‥え。?」

 ブタガエルが更に指示をだそうとすると、作業員達が一斉にブシャァ!と血が吹き出す。そして地面にドサドサ倒れていく。

「な!?」

 ブタガエルが唖然とする意味が分かる。

 あれはオトンの【抜刀・無拍子】。

 目にも止まらん瞬間の速さで斬りつける抜刀術や。

 知らんかったら何が起こったかわからんのやろう。

「ば、馬鹿な!?」

「交渉はこれで終わりだ。」

 オトンはブタガエルが引き止めるのを無視し、姿をまた闇の中へと木箱と共に消した。

「ぐぅ、彼奴めぇ!!」

 ブタガエルは頭に血管を浮き上がらせ怒りを露わにし、近くの木箱を蹴り飛ばし爪を噛む。

「この屈辱はらさでおくべきか!!どうにかして彼奴めに‥。」

 だが急に何かに動きを止めたかと思うと、その表情は不敵な笑みへと変わる。

「ぐふふ。そうか。あの手があったか!!!!」

 そう言ってブタガエルは何やらゴソゴソと懐に何かをしまい込むと、急ぎ足で入口へと向かうのだった。

 なんやねんいったい。と怪訝に思う所もあったが、それよりも僕にとって重要な事はオトンに渡された一枚の紙だった。

これは僕の終わりを告げる紙だ。

 今回はそれなりに楽しかったけど、これが忍としての定めや。

ーーーーー

 そう思った月影は、冷たく冷え切った寂しい瞳へと変わるのだった。


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