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しおりを挟む「ねえ、この後お茶でもどう? 」
「たまには息抜きも必要でしょ? 」
そう言って彼に詰め寄る女を見た。
「どうしてあんな女と彼が? 」
「いやいやらしいわよ? 」
「何か弱みを握られているらしいわ」
「お可哀想に」
そんな陰口を言われている事を知っている。
「あらごめんなさい、気が付かなかったわ」
「あまり調子に乗らない方がいいと思うわ」
「貴女なんかに彼は相応しくないわ」
直接そう言われた事もある。
全て予想出来た事で、予想通りで、全てが私への試練なのだとしても
私にはそれに耐えうるだけものなど何もなかった。
今のこの現状が私の世界の全てであって、そこから逃げ出す事が私には
最優先事項だった。
「留学する事にしました。だから婚約破棄して下さい」
そんな理由で婚約破棄をする必要なんてまったくなかった。
でもそれが私なりのけじめのつけ方だった。
無理やりねじ込んでもらったのだ、今更無かった事には出来ない。
新しい環境で新しい生活を始めるには何もかもリセットすべきだ。
そんな私の我が儘を彼はすんなりと受け入れてくれて安心したけど、
彼の期待に応える事が出来なかったような、見限られてしまったような、
なんとも言えない複雑な気分で少しぐらい言い訳でもと未練がましく考えて
しまう自分をどうにか抑え込んだというのに……
どうして居るのだろうか?
合った目線をすぐに外してしまった。
嘘だと、信じたくなかった。
彼が空港に来ている事に。
「帰って来るのを待っているよ。その時は必ず俺がお前を守るから。
もう誰からも何も言わせないようにするから、だから俺にもう一度チャンスを
くれないか? 」
そう言われてから一年後、私は帰って来た。
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