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シュワシュワ
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しおりを挟む「でも爺ちゃん。俺はギターがいいんだ。爺ちゃんのようにギターを弾きたくて
俺は練習して来たんだ。でも今はそのギターが無くて……」
未だにそんな事を言っているんだとクリューンは単純に思った。
「ロミロファン。ピアノも弦楽器さ」
そう言われてしまえばもうピアノを弾くしかない。
「いいから早く座れ」
「先生」
全てはこの為だという事は分かっていた。
自分は諦めたのだ。それでも卑しくここに居座った。
それを許してくれたジャビルッタにこれでやっと恩返しが出来る。
初めは自分にも才能があると思っていた。
でもそんなものなどないのだと思い知らされたのだ、この子供に。
ロミロファンにピアノを教えて欲しいと頼まれた俺は、
何も分かっていないガキで、その音色を聞いた時に俺はただただ嫉妬した。
だからロミロファンにとってピアノの練習はきっと苦痛だっただろう。
そしてロミロファンが練習に来なくなった時は嬉しかった。
本当に自分の事しか考えていなかった、どこまでも自分でしかなかった。
きっとここが分かれ目だったのだ。
その日から俺はもう自分のピアノが弾けなくなってしまった。
全てがロミロファンの真似でしかなくて、全て偽物の紛い物。
そんな自分に絶望し、バーテンダーになった。
だからチャンスだと思った。
彼の為に全ての準備は整えた。
これで漸く俺は救われる。
*****
それは世界だった。
何処まで広がっていく果てしない空に、煌めく太陽。
降り注ぐ光が泥臭い大地を照らす。
そんな場所でみんなが一人ぼっちだった。
そして出会うのだ、寂しがりや達が集まってマリンダになる。
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