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そのままの君でいて
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しおりを挟む「伯爵、こんな所にいらしたのですか? 」
父がやって来た。
そう言えば今日はパーティーをすると言っていたが、伯爵を呼んでいたとは。
父はまた何かをたくらんでいるのだろう。
「なかなか素晴らしい庭ですな」
「そ、そうですか。気に入ってもらえたのなら何よりです。そこの愚息の唯一の
取り柄でしてね」
「そうか、君はこの家の。すまない、気づかなかったんだ」
「いえ、こんな姿で申し訳ありません」
俺は今、作業着姿なのだ。
これで貴族だと気付く人などいないだろう。
「君はパーティーには出ないのかい? 」
伯爵にそう聞かれてどう答えるべきか迷った。
なにせ俺は浮気相手の子供で、そんな俺が公の場に出るなんて事が許される訳も
ない。そもそも俺自身がそんな場所へ行きたいと思わないのだ。
「おい、早く着替えて来い。お前もパーティーに出ろ! 」
言い淀む俺に父が言う。
「はい」
父が言う事は絶対だ。
*****
着替えた俺がパーティー会場へ行くとビリドリの面倒を見るように言われた。
どうやら気に入られたらしい。
「分かっているな? 失礼の無いようにするんだぞ! 」
父にそう言われたが、どう振る舞っていいかなど俺が知る訳もなく。
「貴方、パーティーは初めてなの? 」
「ええ、そうです」
「何、その言葉遣い。そんな話し方じゃなかったでしょ? 」
彼女にそう言われても、父から無礼の無いようにと釘を刺されているので
どうしようもない。
「まあいいわ。私が教えてあげるからついて来なさい」
彼女は自分が教える事が出来るの嬉しくて仕方がないようだった。
だから俺も彼女に教えられた通りにマネをした。
*****
無事パーティーも終わり、伯爵様と彼女を見送る
「大丈夫だったでしょうか? 愚息がご迷惑をおかけしませんでしたか? 」
「ええ、大丈夫よ。それよりも貴方、自分の子供の事をそんな風に言うのは止め
なさい! 私はお父様にそんな風に言われたくはないわ! それに彼はとても
素晴らしい人よ! 」
「はい、承知しました」
「また後日連絡するよ」
こうして最後まで彼女は彼女のままだった。
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