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菫川ヒイロ

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お前しかいない

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 次の日、栄ちゃんは学校に来ていた。
 普通に登校して、普通に席に座っている。
 これといって何かをする訳でもないのだけれど、ただ席にぽつんと座っていた。
 
 
 でもここは学校だから、
 当然のように他人の気持ちが分からない連中が山のようにいて、
 当然のようにちょっかいをかけて来る。
 
 
 だから栄ちゃんはずっと無視していたが、それにも限界が来たのだろう、
 いきなり席を立つと、教室から出て行ってしまった。
 それも授業中だったので教室の中はざわつくし
 
 
「おい、何処に行くんだ」


 突然の事に、教師は声を上げても動く気配がない。
 だから私が栄ちゃんを探しに行った。
 まったく何しているんだろう、私。
 
 
 でも栄ちゃんを学校に来るように言ったのは私で
 だから栄ちゃんは来たのだから……だから……
 私が探しに行く事は間違ってはいないはずだ。
 
 
「何してるの? 」


 やっと見つけて聞いてみれば
 
 
「何も」


 そんな返事は返って来るが、私と目を合わせようとしない栄ちゃん。
 そんな栄ちゃんの隣に私は腰を下ろして、一緒に授業をサボタージュした。
 そんな事があった日から、栄ちゃんはたまに学校に来るようになっていた。
 
 
 まあそれは、私の新作を読んだ次の日なのだけど
 それでも必ず来るようになったのだ。
 そして私は栄ちゃんの担当係として日々を過ごすようになった。
 
 
 教師だって面倒事は嫌だろうし、嫌々付き合われる方も当然嫌だろう。
 教師だって人間なのだから、何でもできる訳ではないのだ
 そんな彼らが期待するべき対象ではないのは明らかだろう。
 
 
 なにやら言ってくる輩もいたが、駆除したところで
 何処からでも涌いて来るのだからどうしようもない。
 そんなものの為に頭を使う余裕は、私にはまったくないのだ。
 
 
 たった一人の読者の為に私は新作を書かなくていけないのだから。
 
 




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