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菫川ヒイロ

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 tatatataターン tatata ターーン
 tatatata tata ターンターン tatatatata
 ターーン ターーン tatata ハイっ


 メロディーを口ずさみながら指揮者の真似事をしていたのが急にこちらにフッて
 来られた所で何が出る訳でもないし、何か出て来るなんて思っているのはあまり
 にも短絡的過ぎないか? と思うのです。
 
 
 いくら待っても何も出ては来ないし、出そうという努力を俺がする事はない。
 だから早く諦めて欲しいのだが、こういうのを平気で待っていられる精神力は
 どうやったら身につくのだろうか? 俺には存在しない。
 
 
「タタタン? 」


 無理やりひねり出した俺のフレーズはお気に召さなかったようで、もう新しい
 メロディーを考える方向へシフトしてしまったようだが、流石にこっちを処理し
 てからにしてくれてもいいのではないだろうか? 
 
 
 何気に傷ついていますよ?
 
 
 とは言っても俺の気持ちなんて、ましてや他人の気持ちなんてまったく眼中に
 ないから何も期待はしていない。そこは理解しているつもりだし、そこが彼の
 良い所でもあるのだ。
 
 
 そういう所に少しばかり憧れている。
 
 
 でもそんな事は口にはしない。
 そういう気持ち悪い事を何でもないような顔で言え無いからこその憧れなのだ
 ろうと自分で自分を分析するが、それはそれは気持ち悪いとも思った。
 
 
 やはり俺は天然モノではないのだ。
 
 
 あくまで憧れている奴が真似をして装っているだけの俺が本物になんてなれない
 所はこういう所なのだろう。根本が違う、深い部分で自分が違うのだと思って
 しまっている。
 
 
「それで何かあったのか? 」


 いつだって最小限で、いつだって核心をついて来る。
 それも全てが急に来るから何も準備は出来ていなくて、出て来るのは諦めか
 本当の事しか出て来ないのだ。
 
 
「嗚呼、婚約破棄されたんだ俺」


 そんな事を別に言うつもりじゃ無かったし、考えたくも無かったから頭の中から
 除外していたはずなのに、出て来たのはそれだった。
 
 
「結婚してなくてよかったな」


 その言葉の意味を俺が理解するにはそれなりの時間が必要だった。
 結婚するはずだった相手から別れを告げられたのであって俺はもちろん結婚なん
 かしていない。だからしてなくてって事は俺を振った相手だという事なのだろう
 から、要は元婚約者と俺が結婚していたとしても結果は同じで別れる事になるの
 だから結婚する前に別れる事が出来てよかったと言ってくれているのだ。
 
 
「そうかもしれない」


 俺は納得してみたが、それっていつから思っていたのかが知りたかった。
 
 







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