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恋愛評論家
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しおりを挟む「そうね、そういう事なら今すぐ婚約破棄をお勧めします。だってどう考えたって
貴方の婚約者はマナーに欠けているんですもの。そんな人と結婚なんてしたら
貴方の人生が滅茶苦茶にされて終わりよ? 最悪、家ごと乗っ取ろうとしてくる
のが私にはわかります。だから今すぐ婚約破棄しなさいな、それがいいです」
今日もよく口が回るなと我ながら感心しているビリアンカ。
彼女の仕事はこうして人の恋愛に一々口出ししていちゃもんをつけて囃し立て
婚約破棄をさせるというものだった。言い方が悪いが糞みたいな仕事ではある。
それでも需要はあるのだから仕方が無いではないか。
需要と供給が成り立っているからこそビリアンカが必要とされているのだ。
そもそも彼女の元へ来るような人はもともと婚約破棄を望んでいるのだ。
その背中を押して欲しいというだけ、責任を他人に転嫁する事で自分が楽になり
たいというそんな打算や下心が彼等を彼女の元へと呼び寄せる。
だから彼女には何もないのだ。
自分が言っている事に対して悪意や悪気などある訳もなく、なによりも責任なん
て持ち合わせていない。あるとしたら少しばかりの善意なのだ。私のおかげで
みんなが幸せになっているという少しばかりの優越感と多めの料金が彼女を今日
も満たしていた。
だから誰も傷ついてなんていない。
だれも損などしてない。
ウィンウィンの関係がここにはあるだけだった。
「ねえ、アンタの所為で私、婚約破棄されたんだけど! 」
こういう輩がたまに来る事もあるがそんな事でビリアンカは動じない。
「そうですか。それで今回はどのような相談でいらっしゃったのですか? 」
彼女は彼女の仕事をするだけである。
「はあ? アンタの所為で婚約破棄されたのよ! 責任を取りなさいよ! 」
「責任と言われましても私は相談に乗る事は出来ますが……婚約破棄を決めたのは
彼なのですよ? 決断を下していない私に責任があるということでしょうか? 」
「そうよ、アンタが余計な事を言わなければ私は今頃彼と結婚出来ていたのに
なのに、アンタの所為で出来てないのだからアンタに責任があるでしょうが! 」
無茶苦茶な話ではあるがそんな相手をどうするかなんて大体決まっているのだ。
「具体的にどのように責任を取れと? 」
「どのようにって、誠意を見せろって事よ! 」
「分かりました、では20万を用意しました。これは私が頂いた報酬分ですので
これが私の責任分です。これで私にはもう責任はございまんので後は元婚約者の
方とお話ください。これ以上は私の仕事外ですので」
大体現金をそのまま渡せば何も言わなくなるのだ。
勢いだけでここへ来るような奴はその程度である。
その程度だから婚約破棄されるのだと私は思っているのだが、本人に教えて
あげるなんて事をしないのは依頼されていないからだ。
それにこのお金はすぐに帰ってくる。
現金を握りしめて出て行った彼女は結局お金を払わないとここから出る事が出来
ないのだから。まあ、無料で私と話せたと思えばそれはお得な事だと思うのだが
彼女がどう考えるかは私は知らないし、知った事ではない。
ただ、店を利用して料金を払わない人はただの犯罪者なのだ。
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