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菫川ヒイロ

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帰り道

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「ねえ、アンタ一体どういうつもりでここにいるの? 」


 別にそんな事を言われたぐらいで私の気持ちが変わるなんて事はなかった。
 
 
「アンタこそ、どうしてここにいるのよ。私は彼に選ばれてここに居るの。
 それでアンタはどうしてここに居るの? 」
 
 
 そう、私は選ばれてここに居るのだ。彼の為にここに居る。
 だから他人に何かを言われる筋合いはない。
 寧ろ、アンタ達の方こそ何をそんなに偉そうにしているのか? と聞きたかった。
 
 
「ふ、何を言うのかと思えばそんな事。 アンタはまだ何もわかっていないようね。
 ここに居る全員が彼に選ばれたからこそここに居るのよ。アンタは気が付いて
 いないようだけどね」
 
 
「え? 」


 それは一体どういう事なのか?
 私だけが特別じゃあなくて他の人達もそうだというのか?
 だとしてもどうして彼女が私に聞いて来たのかがわからない。
 
 
「じゃあ、アンタと一緒じゃない。私もアンタと同じように選ばれたからここに
 いるんでしょうが! 」
 
 
 私には彼女が言いたい事が分からなかった。
 
 
「察しが悪いわね。もう次が始まっているのよ? 」


 そう言われて私ようやく理解する。そして周りを見ればみんなが私の方を見て
 いたのだ。そう、ここからはどんどん脱落者が出てくるのだ。それぞれ貴族に
 選ばれる事が第1ステージ。そしてその選ばれた者達で争うのが第2ステージ。
 どうやら私はグループの中で一番の狙い目らしかった。
 
 
 誰もがまず私からと思って見ている。
 周りには敵しか居ない。
 でもそれがどうしたというのだろうか?
 そんな事は最初から分かっていた事だ。
 最後に残り、選ばれるのは一人だけなのだから。
 それならばここで見せておくべきなのだろう、今後私に手を出させない為にも。
 
 
 やってやりますとも、私が彼の花嫁になるのだから。
 
 
 





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