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されど初恋
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しおりを挟む「おい、さっさと来いよ」
いつの間にかそんな言葉使いをされているという事に私は最近気が付いた。
基本的に彼の周りの人達がそういう言葉使いだから気が付くのが遅くなってしま
ったというだけなのかもしれないけれど、ただ初めの頃はそうではなかったのは
覚えているのだ。外見の割にはちゃんと話せるのだと思った事を覚えている。
それが慣れだとか、親密になったからと思えればきっと私は幸せで居られたのだ
ろうけど、生憎私はそこまで馬鹿ではいられなかった。それは最近周りをよく見
れるようになったからで、彼ならそんな言い方はしないだろうなって思うように
なったのも結局全てはヨギの所為なのだ。
「俺と付き合って欲しい」
それが久々に会ったヨギからの言葉だった事に私は驚いた。
「そんなの無理に決まってるでしょ! 」
でも断る言葉はすぐに出て来た。
何を今更言っているのかと思ったし、私がどんな気持ちでいたのかも知らないく
せによくそんな事が口にできるものだとも思った。私には彼の告白を断る権利を
十二分に有していたからこそ怒鳴りつけられたのだ。
あの時の私がどれだけ惨めだったか。
絶対に私だとばかり思っていたのに、貴方との将来を思い描いていたあの時間は
一体何だったのだろうかと、浮かれていたのが馬鹿みたいだと思いながら幸せそ
うな友達の顔を見るのがどんなに苦しかったか貴方には分からないのでしょうね。
思い描いた未来。未来への淡い希望。手に入るはずだった幸せは全て私の手から
こぼれ落ちてしまった。もうあんな思いはしたくないし、全ての根源である貴方
とはもう会う事さえ憚れたのだ。それでもこうして会ってしまう自分を理解なん
てしたくないけれど、それよりももっと貴方の事を理解したくはなかった。
貴方がする事には全て理由があるのだと私は分かってしまうから、これにも何か
しらの理由があるのだろうって思うけど、それでも受け入れられない事ってある
でしょ? 恋に理由なんてないのだから、ただ自分の感情を優先させただけなの
に……私の気持ちも分かってよ。
背を向けた貴方に私は問いかける。
『これが貴方の望んでいた事なの? 』
でも貴方が答えてくれる事はもうないのだ。
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