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しおりを挟む「はい、水」
ニロナに渡された水を飲みながら彼女の部屋を眺める。
殆んど無駄な物がなく、最低限の必要な物だけの質素な部屋だった。
物が無いと部屋が広く見えるが、冷たい感じする。
結局このまま帰すのは危ないと俺を家まで連れて来た彼女は温かい。
「飲みすぎなんじゃないの? 別に飲むなとも言わないけどさ、流石に飲まれる
のは駄目でしょ、リーダーなんだからさ」
「すいませんね、不甲斐ないリーダーで。面目ない」
どいつもこいつもリーダー、リーダーうるさいなと思う。
こっちも好きでやっている訳ではないし、じゃあ変わってくれよと言ったら
絶対に断るくせに、どうして俺がこんな思いをしないといけないのかが未だに
理解出来ない。
そもそも俺じゃなくてもよかったはずなんだ。
センマでもよかったし、寧ろそっちの方がみんな納得したはずだ。
俺なんかよりもいいリーダーになったはずだ。
そう思うとなんだか余計に腹が立って来た。
「帰る」
俺は立ち上がると玄関へ向かう。
「ねえ、誰になるの? 」
そして結局彼女もそうなのだと思った。
別に俺を心配していた訳じゃなく、ただその事を聞きたかっただけなのだ。
「そんなの言える訳ないだろ」
誰だってそうだ。誰だって自分が選ばれたくなんてない。
でもそれが決まりだった。
俺だって誰かを選びたくなんてない、でも選ばないといけない。
リーダーだったから。
ここは浮遊都市アルドラバルノ
ここで暮らせる人数は決まっている。
では、定員がオーバーすればどうすのか?
誰かがここから出て行くしかないのだ。
ここから出て行くという事は、もうここへは戻って来れないという事。
外との接触を一切取っていない俺達にとってそれは恐怖だったのだ。
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