ラブについて

菫川ヒイロ

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 本当にそうなのか?
 私には疑問でしかないが、みんなは絶対にそうだと言う。
 そう言われても私にはいまいちピンと来ない。
 
 
 確かに、関係は良好と言っていい。
 毎日、それが当たり前のように会話を交わして笑い合う。
 そんな私達の関係は友達だろう。
 
 
 でもそれが違うのだとみんなは言うのだ。
 絶対に私の事が好きなのだという。
 まあ好き嫌いで言えば好きになるのだろうが、
 みんなはそれがラブの方だというのである。
 
 
 これがラブ?
 こんなものがラブなのだろうか?
 こんなにもよくあるものがラブだなんて私は知らなかった。
 
 
 みんなにそう言われてから私はラブについて考えるようになった。
 彼はそんなにも私の事を特別に思ってくれているのだろうか?
 毎日、こんなにも言葉を交わしているというのに、私にはその実感がまったく
 無かったのである。
 
 
 だからいつも以上に彼を見てしまうし、いつも以上に触れてしまう。
 そこに意味はない、ただ確かめる為だった。
 でも彼に変化はなかった、いつもと変わりはしない。
 いつも通りで、平常運転。相も変わらずつまらない事を平気で言ってしまえる
 彼に私は笑ってしまうのだ。
 
 
 そして私は結論を出す、友達だって。
 これがラブだと思えない私はきっとみんなとは違うのだろう。
 恋愛脳ではないのだ。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 あれから10年が経った。
 私達はお互いに結婚し、子供も居たりするけどたまにこうして会っては
 話をする関係が続いている。


「ねえ知ってる? アンタが私の事を好きだってみんなが言ってた事」


「え、バレてたの? 実はそうだったんだ」


 真顔でそんな事を言う彼は相変わらずにつまらない。
 だから私はついつい我慢出来なくて噴き出してしまうのだ。
 
 
「おい、もう少し我慢しろよ! 」


「ごめんごめん。相変わらず面白くないから笑っちゃった」


 私はみんなよりも恋をする事はなかったのだろう。
 なんでも恋愛に結びつける能力がみんなよりも乏しいのだ。
 でもその分、こうして今も笑い合える相手が居るのは私にとってとても大きな
 財産だと思うのだ。
 
 
 




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