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勇者編
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しおりを挟む俺はてっきりパシュリダの元で実験なり何なりのお手伝いなんかをするのかと
思っていたが俺にはそういう事が出来ないらしい。パシュリダの弟子になる事が
出来るのは選ばれた者だけなのだそうだ。残念ながら俺は選ばれた訳ではなく
つれて来られた者だった。
ただ金の工面は本当にしてくれた。
でもそれは勇者パーティーの一員となればという条件付きであった為に俺は
迷う事なくそれを選んだ。魔物がどうだとか色々と説明は受けたが、結局やる事
は冒険者とさして変わりはない。敵を倒せばいいのである。
とりあえず前任の魔法使いを倒して俺はその地位を手に入れた。
ここではそれがルールなのだとしたらそれに従うだけだ、罪悪感よりは目的を
優先させる。もう我慢をする事は止めるのだ。
それはとても楽しい時間だった。
ここでは何だって手に入ったし、聞けば返してくれる者がいた。望んでいたもの
をやっと手に入れられた気分だったのだ。だからこんなにもアイディアが溢れ出
すのだろう。環境が違うだけでこんなにも楽な事があるなんて知らなかった俺に
とってここは最高の場所だった。
「ねえ、何してるの? 」
次期パシュリダになる子供が聞いてきた。正直子供は苦手だった。
嫌な事を思い出してしまうからあまり関わり合いにはなりたくはないけど、
それでも無下にする事が出来ないのはどうしても弟とダブって見えてしまうから
だった。
「これは成長剤みたいなものだな。これを飲めば少しだけ強くなれるんだ」
「へえ、じゃあ僕も強くなれるの? 」
「まあそうだな。ある程度はそうだが、誰でも限界値はあるからな。それ以上とか
を目指すのなら別の方法をとるべきだな。まあそこまでして強くなりたいとかで
なければこれで十分だろうがね」
「飲んでいい? 」
「子供にはまだ早い。そもそもまだ実験段階だからな、どうなるかが分からない
以上飲ませる訳にはいかない」
「じゃあこっちは? 」
「ダメだ」
「これは? 」
「ダメ」
そうして終わる事がない質問が続き、俺がうんざりし始めた頃になって漸く
パシュリダがやって来た。
「入るぞマクベ。何だ、見ないと思ったらこんな所にいたのか? ここは楽しい
だろうが、マクベの邪魔をしてはいけないぞ。それは私達が気をつけねばならな
い所だ」
誰がそんな事を言っているのだと言いたくなったが、口を噤む。意外とちゃんと
師匠としての役目を果たしている事に関心したのだ。
「でも師匠はいつもマクベにいろいろ聞くではありませんか?
それはいいのですか? 」
「うっ、む。問題ない。私はそういうのは弁えているからな。聞いていい時に聞い
ているのだ。だから何も問題はないのだ。 」
何故か偉そうに言っているが、実際はどっちも同じくらい俺の邪魔をしている
という事実に早く気が付いて欲しい。
「で、どんな用事ですかパシュリダ? 何かあるのでしょう? 」
「ああ、そうだった。王様が呼んでるぞ」
それは俺がここから旅立つ日が決まったという事だった。
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