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しおりを挟む「今日は祈らないのかい? 」
「ジルが死んだよ」
「そうかい」
シスターが祈りを捧げている中で俺はただ高い天井を見上げていた。
分かっていた事ではあるけど実際にそうなってしまったら意外とショックは大き
かったのだ。覚悟はしていたのになあ、何の役にも立たなかった。
神様、俺の選択は間違っていたのでしょうか?
そんな無意味な問いかけをしたくなるくらいに今の俺は苦しかったのだ。
もう数えきれないほどの死というものを見てはきたはずなのに 流石に今までの
とは訳が違うようだった。そして今夜もまた眠れぬ夜を過ごす事になるのだろう。
「帰るのかい? 」
「嗚呼」
「苦しくても泣いた方がいい時もあるんだよ。アンタ達はまだ子供なんだからさ」
そう言われると余計に泣けなくなってしまう。
だって俺は子供ではないからだ。
俺は教会の前に捨てられていたそうだ。
それが不幸な事だと思うかもしれないがこの町ではとても幸福な事だった。
捨てるのならその辺の道端でもよかったし、そもそもすぐに殺そうとしなかった
というだけでもラッキーだったのだ。
「アンタは神様に生かされているんだよ」
シスターにそう教え込まれて育った俺はその言葉を信じていた。
だから毎日ちゃんと神様に祈りを捧げていたし、みんなが自分と同じように
しているものだとばかり思い込んでいたんだ。
成長すれば当然、行動範囲が広がっていく。
教会の中しか知らなかった俺が外の世界を初めて見た時は気持ち悪くて嘔吐した
のは良い思い出だ。それ程までにこの町はシスターが教えてくれたような、俺が
想像していた世界とはまったく違っていたのだ。
何もかもが加工される事もなくそのままそこにあるのだ。
頭の中に直接語り掛けて来るような感覚、フィルターを通さずにそのままの
感情が投げつけられる。俺はあまりにも無防備過ぎたのだ。
ただ人間とは不思議なもので慣れる生き物だった。
いつの間にかそんな感情に何も感じなくなって来るようになったのはきっと
ジルと遊ぶようになったからだと思う。俺はジルからいろんな事を教えてもらっ
たのだ。
この町でのルールは全てジルから教えてもたった。
楽しい場所も、近づいてはいけない場所も、教会の事も。
「教会は特別な場所なんだ、唯一誰も手を出せない場所だからな。だからこそ
誰もが狙っている場所でもあるんだよ、だからお前は気をつけるべきだソイダ。
守りたいんだろ? 」
ジルにそう聞かれて俺はゆっくりと頷いた。
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