872エンの婚約破棄

菫川ヒイロ

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 何やら婚約者がぺちゃくちゃと丁寧に話してくれていますが、私にはそんなもの
 に興味はなくて、心底どうでもいいのです。
 
 
 所詮は上辺だけの付き合いだった訳ですから、もっと短く、要点だけを言って
 くれれば私もこんな無駄な時間を過ごさなくてもよかったのに。
 
 
 そう考えると、少し腹が立ってきました。
 私の大事な時間を割いてまで不満だの、馴れ初めだのを聞く事にどんな意味が
 あるのでしょうか?
 
 
 そう言えば今度パーティーがあったはずですが、それはどうしましょうか?
 一人でも行ってもいいとは思いますが、この人もおそらく来るのでしょうし、
 きっとみんなの話の種にされてしまうのでしょうね。
 
 
 今回は行くのは止めておいた方がいいのかもしれません。
 わざわざそんな所へ行くほど私も出来た人間ではないので、お家でゆっくりする
 事にでもしましょう。
 
 
 そう言えば、積んである本が増えるばかりでなかなか消化出来ていなかったので
 少しくらいは減らす努力をすべきなのかもしれませんね。
 しばらくは本を読んで過ごす事にしましょう。
 
 
 後はなにかあったかしら?
 折角、一人の時間が増えたのですから何かしたいものですが。
 私はそんなに多趣味という訳でもないので、こういう時は時間を持て余して
 しまって結局何もしないで時間ばかり過ぎているなんて事が多々あります。
 
 
 そう考えれば、時間の使い方としては婚約者がいた方が有意義に使えていたと
 いう事になるのか?
 
 
 まあ、どうでもいいですね。
 そんな事さえ考えるのが億劫です。
 
 
「分かりました。婚約破棄しましょう」


 漸く婚約破棄が成立したので私はお会計をします。
 
 
「872エンになります」


 私はお会計を済ませて家へ帰ります。
 どうやら、今回の婚約破棄は872エンの価値だったようです。
 






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