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しおりを挟む「どうか、どうかお願いします勇者様! 世界をお救い下さい! 」
国王が勇者に頭を垂れる、が
「嫌だ! 」
勇者は頑なだった。
「そこをどうかお願いします、このままでは世界が終わってしまいます! 」
「知ったこっちゃない! 世界なんて終わればいいよ! 」
「そんな、勇者様! 」
「俺はもう勇者じゃない! 勇者は辞めたんだ! 」
*****
「やっと帰って来た! 」
勇者が街に帰って来たのは世界を救う旅に出てから一年が過ぎた頃だった。
見事、勇者は世界を救いここへ帰って来た。
勇者の凱旋である。
街の者が総出で勇者を迎えた。
勇者はなれた様子で手を上げて答える。
そうして王宮へと出向いた勇者は国王に報告する。
「世界を救って参りました」
「おお、勇者! 今回も見事であったぞ! 」
王は勇者を褒め称える。
ただ、その場には居るべき人が居なかった。
「王よ、姫はどちらに? 」
「あ、嗚呼。姫な。姫は部屋に居る。少し体調がすぐれないようなのでな」
「そうでしたか、ではすぐに見舞いに参りましょう」
「いや、その何だ、勇者も疲れているだろう? ゆっくり休んでからでもいいので
はないか? 」
「大丈夫ですよ、このくらい。もう三度目ですからね」
勇者は今回で三度、世界を救っていた。
「それでは失礼します」
勇者はすぐに姫の元へと急いだ。
それも当然だろう、何せ姫は勇者の婚約者なのだから。
「姫、帰ったよ! 体調が優れないそうだが大丈夫かい? 」
そう言って入った姫の部屋では見知らぬ男が姫に覆い被さっており、それを目に
した勇者は一瞬理解出来ずにフリーズしてしまったが、すぐに男を殴り飛ばした
のだった。
「姫、大丈夫ですか! 何処から入って来た! 衛兵! 衛兵はいないのか! 」
勇者が人を呼ぶが、姫は勇者には目もくれず殴り飛ばされた男の方へ
「大丈夫? ちょっと何するのよ! 」
何故か助けたはずの勇者が怒鳴られた。
「何って、俺は姫を助ける為に…… 」
「誰もアンタになんて助けを求めていないわ! 何よ勝手に人の部屋に入って来て
どういうつもりよ! 」
「勝手にって、俺は君の婚約者だろ? 」
「婚約者? そんなもの破棄してやるわ! 」
「破棄ってそんな急に」
「だってアンタはずっと居なかったじゃない! 私が側に居て欲しい時に居てくれ
無かったじゃない! 」
「それは仕方ないじゃないか! 僕は勇者なんだ! 世界を救わないといけない」
「そうね、アンタは世界だけ救っていればいいわ! 私を寂しさから救ってくれた
のは彼だった。だからもうアンタとの婚約は破棄するわ! 分かった?
分かったならさっさと出て行って! もう二度と現れないで! 」
勇者は部屋から追い出された。
「俺は一体、何の為に、今まで、うわああああああ」
その日、勇者は勇者を辞めた。
*****
「勇者様、その、姫の事は誠に申し訳なく思っております。我が娘のした事は
とても許される事ではないでしょう。でもそれとこれとは話が違うではないです
か? 世界の危機なのです、どうか世界を救ってはくれませんか? 」
「嫌だ」
「勇者様」
「俺はもう三度も救ったんだ、十分だろ? それを何だ? お前達は一体俺に何を
してくれたと言うんだ? 後は自分達で何とかすればいい。俺はもう疲れた、
帰ってくれ」
こうして世界は終わりを迎えた。
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