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菫川ヒイロ

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旅に出る

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「遅えぞ! 」


 村を南へ出た所では既にみんなが待っていた。
 どうやら俺が最後のようである。
 
 
「ごめん、婆ちゃんに見つかっちゃって」


「そうか……ちゃんと言って来たんだな」


「うん」


 俺がそう言えばクスルーは満足そうに頷いた。
 俺とクスル―は幼馴染である。だから婆ちゃんの事をクスル―もよく知っていた
 し、二人でよく怒られた。でも婆ちゃんはいつもクスル―よりも俺の方をきつく
 怒るのが納得出来なかったが、今ならちゃんと分かるようになった。
 
 
「よし、じゃあ行くぞ」


 クスルーの号令のもと俺達20人は歩き出す、南へと。
 俺達の目的は当然恋をする事だ、一番いいのは結婚する事だがそんな贅沢なんて
 言える立場にない事ぐらい分かっている。言ってしまえば俺達は不良品である。
 そんな不良品の俺達が、知らない場所からやって来たような奴らが結婚なんて
 出来るのは奇跡に近い。
 
 
 それでも俺達は村を出て恋をする為に歩き出した。
 南を選んだのは当然理由があり、南下すれば俺達を受け入れてくれる場所が
 多いからである。南の国の人達は大らかで、知らない場所からやって来た者に
 対しても寛容だという噂を耳にした事があったからだ。
 
 
 zakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzaku
  zakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzaku
 zakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzaku
 zakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzakuzaku


 二列縦隊で進む俺達はなんだかピクニックにでも行っているようである。
 そう思うとなんだか嬉しくなってきてしまうのも仕方がない事で、だから一人が
 歌を口ずさめばみんなも歌い出し、最終的に大合唱が始まった。
 
 
 俺達はイルジャンの戦士 度胸なら誰にも負けないぜ
 全てを腕一本で薙ぎ払う この足があれば何処へでも一とっ飛び
 誰かが俺達を呼ぶ 泣いているのは君かい? よく我慢したね。
 カウントはいつだってスリーツーワン ぶっ飛ばされる覚悟は出来たかい?
 
 
 礼などいらない 欲しいのは君の笑顔だけ
 それが俺達イルジャンの戦士 誰もが憧れるイルジャンの戦士
 一人で百人力 二人で千人力 三人で国を救ってしまう
 そんなイカした男に俺はなりたいだよ
 
 
 そして歌い終わったら山を越えていた。
 今日はここまでだ。だからすぐに寝床と食事の準備をする。
 もちろん今日はキャンプファイヤーをする事はみんなの約束事だった。
 炎はキラキラと夜空に映える。
 
 





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