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菫川ヒイロ

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悠々ライフ

勇者編 16

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 魔王は腕から勇者を振り落とすと手についた血を勇者の服で拭った。
 
 
「じゃあ手加減はしないでいいという事だな。まあ最初からするつもりなんてない
 のだがね。それじゃあとっとと始めようじゃないか、殺し合いというやつを」
 
 
 トーントーンと足を弾ませながら魔王はこちらの様子を伺う。
 そして一瞬で距離を詰めて来るとドコッ! と一撃。
 拳のタイミングが合っており、見事にふっ飛んで行く魔王。
 でも俺はそれをそのまま見ているなんて事はしないのだ、追撃である。
 
 
 飛んでいく魔王を地面に叩き落とす。
 魔王が地面にぶつかりへこむ、それでもまだ手を休めたりなんてしない。
 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
 拳を叩き込む。
 
 
「ま……て、ぼまえはまほう……つか…いじゃ」


 魔法使いが打撃をする事がそんなに珍しいのだろうか?
 魔王は俺の攻撃がお気に召さないらしいが、そんな事は知った事では無い。
 これが殺し合いというものだろうに、そんなに綺麗に出来るように俺は育っては
 来ていないのだ。
 
 
 でも最後くらいは見せてやてもいい、魔法って奴を。
 
 
 俺が振り上げたのは義手の方の手。
 それが振り下ろされればただの魔力の塊が魔王にぶつかり、全てを消滅させた。
 もうそこには魔王だったモノは何も残っていなかった。
 
 
 あっけない最後。
 でもそういうものだと思う。
 

「ほう、そんな使い方をするものだったのか? なかなか興味深い」
 
 
「凄いね! マクベって強んだね」


 見上げればそこにはパシュリダ達が居た。
 
 
「どうしてここに? 」


 そうどうしてここに居るのかが理解出来ないのだ。
 
 
「いや~お見事でしたよ! 勇者がすぐにやられてしまった時はどうなる事かと
 ひやひやしてしまいましたが、まさかこんなにもお強い方が居るとは。驚いて
 しまいましたよ、パシュリダさん」
 
 
「まあ、驚いたのは私も一緒だ。まさかここまでとは思っていなかったからな。
 それにあんな風に義手を使うって事も知らなかったし、なかなかに面白い使い方
 をする。確かにその腕ならば問題はないのだろうな、例え壊れてもまた作れば
 いいのだし。なるほどなるほど、これは新しいモノが作れそうだぞマクベ! 」
 
 
「ほうそれはそれはよかったですね。是非とも完成したら私にも見せて頂きたい
 ものです」
 
 
「それはもちろんですともアルガ―さん。今後ともよいお付き合いをしたいです
 からね」
 
 
「それはこちらも同じですよパシュリダさん。貴方の作るものは実に面白いものが
 多いのでね、私も毎回楽しみにしているんですよ」


 パシュリダがそんな話をしている相手の事を俺は知らない。
 知らないがその相手がとてもいいものであるとは到底思えないのだ。
 
 
 一通り話が終わったのであろう、そのまま帰ろうとするので止めた。
 
 
「どうかしたのか? もしかして一人では帰れないとかではあるまいな? 
 それはそれで困りるのだがな、出来れば自力で帰って来て欲しいんだよ
 勇者として。そうでないと皆が納得しないだろ? 雰囲気づくりとかって
 結構重要なんだよマクベ、分かるだろ? 」


 何の話をしているのかが分からない。
 勝手に話を進めないで欲しい、どうして俺が勇者になるんだ? 
 
 
「おや、あまり理解していないように見えますが説明はしているのですよね? 」


 暫しの沈黙。
 
 
「すまん、まだ話してなかったな。メンゴ」

 
 なんだかその一言で、一気にパシュリダの事が嫌いになった。
 
 
 





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