341 / 383
夢で逢えたなら
1
しおりを挟む「おはよう、ミーア」
目を覚ました私が最初に聞いた声はかすれた声で、
まだはっきりとしない意識の中でゆっくりと声のする方へと頭を動かすと
そこには初老のおじさんが涙を流していた。
この人は誰だろう? どうして泣いているのだろう?
そんな疑問が浮かび、そしてまた眠ってしまった。
*****
私は目を覚ます。
よく知っている天井。
体を起こす。
そこは私の部屋だった。
私は自分の体の調子を確認してから部屋を出た。
「おはよう」
両親に挨拶をすると二人とも嬉しそうに挨拶を返してくれる。
「ミーア、調子はどうだい? 」
「ええ、もう大丈夫よ。すごく調子がいいみたい」
「そうかい、それはよかった。今日はコンフィーが来るのだったね、
すぐに食事にしよう」
そうして家族で食卓を囲む、家族団欒だった。
*****
食事を終え、寛いでいるとトントンとドアをノックする音。
そして私がドアを開けるとそこにはコンフィーが立っていた、花束を持って。
「ありがとう」
私はお礼を言って花束を受け取ると母に渡した。
「それでは行ってきます」
そう両親に言うと、私はさっそくコンフィーと出かけた。
*****
近くの公園のベンチに二人で並んで座る私達は周りからどういう風に見えて
いるのだろうか?
「ミーア答えは出たかな? 」
「ええ、婚約は破棄しようと思います」
「どうしてだい? 」
私の答えが納得出来なかったようで、コンフィーが理由を聞いて来た。
「もう、歳を取り過ぎたわ。今更結婚なんてとても、私には出来ないわ」
そう、私達は歳を取り過ぎていた。
私は随分と長い間眠っていた、その間にどれだけ季節が過ぎて、
世界はすっかり様変わりをしていた。
私が目覚めた時、最初に声をかけてくれたコンフィーもすっかり
私の知っている彼ではなくっていて、誰だか分からなかった。
私の婚約者は初老のおじいさんになっていたのだ。
目を覚ましてから数か月、記憶の中の彼と今そこにいる彼がまったく一致せず
私は自分がおかしくなったのかと思ったが、よく考えればそれは当然の事。
彼は成長し、私は眠っていたのだ。
変わってしまった彼と変わらない私。
そこに違和感を感じずにはいられなかった。
「分かったよ。それじゃあ元気でね」
彼はそう言うと行ってしまう。
ベンチ座る私と行ってしまう彼との距離。
もう私が横を歩く事は出来ない。
どうすればよかったのだろうか?
せめて、同じ時間を過ごせていられればよかったのか?
なら、貴方と夢の中で逢えたならどんなによかっただろうか?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる