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菫川ヒイロ

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夢で逢えたなら

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「おはよう、ミーア」


 目を覚ました私が最初に聞いた声はかすれた声で、
 まだはっきりとしない意識の中でゆっくりと声のする方へと頭を動かすと
 そこには初老のおじさんが涙を流していた。
 
 
 この人は誰だろう? どうして泣いているのだろう?
 そんな疑問が浮かび、そしてまた眠ってしまった。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 私は目を覚ます。
 よく知っている天井。
 体を起こす。
 そこは私の部屋だった。
 
 
 私は自分の体の調子を確認してから部屋を出た。
 
 
「おはよう」


 両親に挨拶をすると二人とも嬉しそうに挨拶を返してくれる。
 
 
「ミーア、調子はどうだい? 」


「ええ、もう大丈夫よ。すごく調子がいいみたい」


「そうかい、それはよかった。今日はコンフィーが来るのだったね、
 すぐに食事にしよう」
 
 
 そうして家族で食卓を囲む、家族団欒だった。


 
 
 *****
 
 
 
 
 食事を終え、寛いでいるとトントンとドアをノックする音。
 そして私がドアを開けるとそこにはコンフィーが立っていた、花束を持って。
 
 
「ありがとう」


 私はお礼を言って花束を受け取ると母に渡した。
 
 
「それでは行ってきます」


 そう両親に言うと、私はさっそくコンフィーと出かけた。
 
 
 

 *****
 
 
 
 
 近くの公園のベンチに二人で並んで座る私達は周りからどういう風に見えて
 いるのだろうか?
 
 
「ミーア答えは出たかな? 」


「ええ、婚約は破棄しようと思います」


「どうしてだい? 」


 私の答えが納得出来なかったようで、コンフィーが理由を聞いて来た。
 
 
「もう、歳を取り過ぎたわ。今更結婚なんてとても、私には出来ないわ」


 そう、私達は歳を取り過ぎていた。
 私は随分と長い間眠っていた、その間にどれだけ季節が過ぎて、
 世界はすっかり様変わりをしていた。
 
 
 私が目覚めた時、最初に声をかけてくれたコンフィーもすっかり
 私の知っている彼ではなくっていて、誰だか分からなかった。
 私の婚約者は初老のおじいさんになっていたのだ。
 
 
 目を覚ましてから数か月、記憶の中の彼と今そこにいる彼がまったく一致せず
 私は自分がおかしくなったのかと思ったが、よく考えればそれは当然の事。
 彼は成長し、私は眠っていたのだ。
 
 
 変わってしまった彼と変わらない私。
 そこに違和感を感じずにはいられなかった。


「分かったよ。それじゃあ元気でね」


 彼はそう言うと行ってしまう。
 ベンチ座る私と行ってしまう彼との距離。
 もう私が横を歩く事は出来ない。
 
 
 どうすればよかったのだろうか?
 
 
 せめて、同じ時間を過ごせていられればよかったのか?
 
 
 なら、貴方と夢の中で逢えたならどんなによかっただろうか?
 
 
 
 
 
 



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