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プー
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しおりを挟む「ねえ、聞いてるのプー? 」
プー
私の幼馴染であり、婚約者である。
「え。ああ、うん」
その返事で絶対に聞いていなかった事は分かるのだ。
付き合いが長い分余計に分かる。
今は完全に他の事を考えていたのだ。
例えばあのおじさんの掛け違えているボタンの事とかだろうか?
それとも飼い犬にいきり立っているおばさんの事かもしれない。
要はプーはそういう奴なのだ。
私達は今、大お爺様のお住まいへ向かっている所だった。
これから私達が結婚する事を報告に行く最中で、失礼がないようにプーには
いろいろ言ってみたが、通じただろうか?
否、きっと右から左へ通り抜けて行った事だろう。
でももう仕方が無い! 私がどうにかフォローすればいいだけだ!
そう割り切った私とプーは大お爺様のお住まいに到着した。
*****
「君がケルシーの結婚相手か。よく来てくれたね」
大お爺様はベットの上で体を起こして出迎えてくれた。
「今日は、体調の方はよろしいんですか? 」
大お爺様の体調があまりよろしく無いという事は聞いていた。
「嗚呼。ケルシーの結婚相手が来るのだからちゃんと出迎えたかったのだがね、
すまないねプー君」
「いえ、そんな事は」
珍しくプーが緊張していた。
基本的に緊張なんてものとは無縁の世界で生きていると思っていたが、意外と
そうでもないようだ。
「私の最後の我が儘だ。大目に見てくれるかい? 」
「はい」
「そうか、ありがとう。君に会えてよかったよ。ケルシーの事を頼んだよ」
「はい」
こうして大お爺様との会話は終わり、私達はお屋敷を後にした。
*****
帰り道、プーは私の手を握って歩いている。
何だか今日は私の知らないプーの姿をよく見る。
「なあ、俺より先に死なないでくれよ」
突然プーはそんな事を言う。
大お爺様と会って何を思ったのだろうか?
それがプーなりの答えなのだとしたら、
私と死ぬまで一緒に居る事を決めてくれた彼に最大限の愛を示そう。
「ええ、きっと大丈夫だと思うわ」
だから私そう言った。
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