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菫川ヒイロ

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婚約破棄したはずの彼女が家に入り浸っている件

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 どうかしているとしか僕には思い当たる言葉が見つからない。
 だってそうだろ? 何故そんな事が出来る?
 まったく理解が出来ない。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「君との婚約を破棄する事にしたよ」


「何よ、急に。改まっちゃって」


 僕の言った事が伝わっていないのだろうか?
 彼女はまったくいつもと変わらない。
 
 
「僕はもう決めたんだ。もうこれ以上君との関係を続けて行く事が出来ないと
 言っているんだよ! 」
 
 
「そうなんだ。まあ、そういう事もあるよね」


 僕が強く言ったのに、彼女の返事はそんな感じでまったく状況が理解できている
 とは到底思えない。
 
 
 彼女は人の家だという感覚がないのか、それともそういう事を気にしないのか
 我が家のソファーに寝転がり、占領している状態で僕と会話を続ける。
 
 
「そっか、じゃあ私は今後もうここでこうやってくつろぐ事も出来なくなっちゃう
 という事か。それは残念だな。じゃあ最後にお義母さんに挨拶しないといけない
 な。お義母さ~ん! 居る? 」
 
 
「何、どうしたの? 何かあった? 」


 寝転がったまま他人の母親を呼びつけるとはどういうつもりだ?
 
 
「何か今、婚約破棄されちゃったの。
 だからもうここには来れなくなっちゃうわ、私」
 
 
「え、そうなの? でもたまには来てくれていいのよ、別に。私に会いに来て
 くれればそれでいいんだし、ね? 」
 
 
「そう? じゃあ、たまに会いに来るよ。良かった、ここ居心地いいからさ。
 もう来れないとか絶対無理って思ってたんだよね。じゃあまた来るから」
 
 
 彼女はそう言ってその日は帰って行った。
 僕的にはもう来てなど欲しくはない。ないが母の友人として来るというのであれ
 ば反対など出来るはずもないが、流石にまた来るなんて事があるだろうか?
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 あった。
 それも翌日。
 すぐに彼女はやって来て、当然の権利を行使するようにソファーを占領した。
 
 
 でも僕はそんな彼女を無視した。
 存在しないものとして扱い、過ごした。
 だが流石にである。
 
 
 流石にもう1か月である。
 もはや我が家に住み着いていた。
 僕にも我慢の限界というものがある。
 
 
「おい、もう出て行けよ! いい加減にしてくれ。ここはお前の家じゃないんだ。
 何堂々と寛いでいるんだ、帰れ! 」
 
 
「何、急に。怖いんですけど。ちょっとお義母さん、帰れとか言われてますよ私!」


「何を騒いでいるの? もう、喧嘩とかして仲がいいわねあんた達。
 もうお母さん寝るからね! 」
 
 
「おやすみ! 私ももう寝るから」


 彼女はそう言うと本当に寝てしまった。
 
 
 
 
 どうしてこうなった?
 
 
 
 
 
 

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