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あの時、彼に言った事は間違っていた
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しおりを挟むどうして私はあんな事を言ってしまったのだろうか?
今になってそう思うのは、私の中で何処か引っかかる所があったという事なの
だろうけど、あの時はそう言うしか無かったのだ。
「婚約破棄して下さい」
私は彼にそう頭を下げた。
そこには決して嘘は無かった、私は本当にそう思ったから申し出たのだ。
そして彼は私に理由を聞いて来る。
「どうしてなんだい? 」
当然だろう。
突然そんな事を言い出した相手に問いただすのは彼の権利と言っていいものだ。
だから私は説明をする。
「別に貴方が悪い訳じゃないのよ。その……なんだろう。私の問題みたいな感じで
だから全然貴方は悪くないからね」
出来るだけ誤解の無いようにしたかった。
本当にただそれだけだったのだ。
「他に好きな人が出来たのかい? 」
「違うの、そういう事ではないわ。ただ、その。何て言えばいいのかな……」
「僕は君の力にはなれないのかい? 」
「うん、なれないわ」
だからきっぱりと拒絶した。
「貴方はそのまま変わらないでいてね」
そして、それが彼にかけた最後の言葉だった。
*****
私は彼を久しぶりに見た。
私は変わらないでもいいと言ったが、それは変わらないからこそなのだろう。
でもそれは流石にダメなんじゃないかと思う。
彼が新しい彼女と歩く姿が目の前にあっても、私は彼女になんて目もくれず
貴方の腕にばかり目が行ってしまう。
私の名前が刻まれたその腕には新しい女の名前らしきものが追加されていた。
何でそんな事になる?
私の名前が消えておらずに追加するとか、どういう感覚だ?
こんな事ならもっと、ちゃんと、はっきり言っておくべきだった。
女の名前を腕に彫るような男は嫌いだと言っておけばよかった。
これからもあの腕に私の名前があるのかと思うと気分が悪い。
今すぐにでもあの腕を引っこ抜いて、海へ投げてしまいたいのだ私は。
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