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菫川ヒイロ

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若葉

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「私のしている事って自然保護みたいなものなの。
 言うなればキャッチ・アンド・リリースって奴よね。これはみんなの為なのよ」
 
 
 彼女にどうして婚約破棄をしたのかと問えば、そんな言葉が帰ってきた。
 でも私にはまったく理解出来なかったのだ。キャッチ・アンド・リリース?
 何それおいししいの? 
 
 
「もちろんそうよ。だって私が立派な紳士に育て上げてからみんなの元へ届けて
 いるようなものなのよ? 十分おいしいじゃない? 好きでしょ紳士? 」
 
 
 彼女は当然のようにそう言って、悪びれる様子は全くない。
 自分がしている事に何の罪悪感も感じていないようだった。
 とはいえ回数が多すぎやしないか?
 
 
「だって仕方ないじゃない! 私が愛せるのは若葉の内だけなんだもの。
 そうなれば結果として婚約破棄をする回数が増えて行くのはどうしようもない
 事でしょ? 」
 
 
 どうやら自覚はしているようだった。
 なんだかんだと言った所で結局は自分の好みの問題である事に変わりはなく、
 ただ要らなくなったから捨てただけではないのか?
 
 
「あの感覚、感触は特別なものなのよ。まあ貴女には一生分からない事かも
 しれないけど、あれを知ってしまった私にはもうあれ意外で満足なんて出来ない
 のよ? 」
 
 
 恍惚の表情を浮かべ、熱い息を吐く彼女は今きっと思い出している最中なの
 だろうけど、私に一生分からない事を言われたって困るのだ。
 
 
「つまらない女ね。それで、結局貴女は何をしにここへ来たのかしら? 」


 そう私がここへ来た理由。
 それは彼女があまりにも婚約破棄をするので何か違法な事でもしているのでは
 ないかと調べに来たのだ、役所の方から。
 
 
 でも聞いた話からは何処にも問題は無かった。
 ただクセがつよい女が一人居ただけだった。
 だから私はもうここに居る必要はなく、さっさと戻る事にした。
 
 
 でも流石にそのまま戻るのは止めて、寄り道をする。
 やってられなかった、うんざりした、こんな理由をどう報告すればいいのか
 全くわからなかった。
 
 
「転職しようかな……」


 必死に勉強してやっと就けた仕事だったが、思っていたのと違った。
 否、いっその事彼と結婚するというのもいいかもしれない。
 あの紳士な彼なら私の事を分かってくれるはず……紳士?
 
 
 彼に確かめないといけない事が出来た。
 
 
 
 
 
 

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