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12月4日
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しおりを挟む本当の事を言ってしまえばきっと怒られるのだろうけど、でもそれを我慢出来る
ような私でもないので言ってしまおうと思う。
「アンタの事、好きじゃなかったわ」
確かに昨日は好きだった。
きっと今日になる直前までは好きだったと思うのだけれど、今日になった瞬間に
その思いは消え失せてしまったのだ。だからこれは仕方がない事だし、そういう
事はよくある事なのだから許して欲しい。気持ちなんてものは簡単に変わってし
まうものなのだから。
「どういう事? 何の話をしてる? 」
どうやら彼にはまだ理解が出来ていないようだけれど、まあそれはどうでもいい
事でもある。要は私の気持ちの話なのだし、他人に私の気持ちが分かるなんて事
がある訳もないのだし、とりあえず言いたい事は言えたから私はそれで満足なの
である。
「そうね、ただの別れ話かな。まあ短い間ではあったけどそれなりに楽しかったと
は思う。うん、たぶんそうよね? 」
「何だよそれ! ふざけるな! 人の気持ちを何だと思っているんだ! 」
「何? いきなり大声をださないでくれる。怖いし、そういうの嫌いなんだけど!」
まったくどうしてすぐに大きな声を出すのだろうか?
育ちの悪さと頭の悪さを両方一気に出して来られても何も変わったりはしないの
にどうしてそんな事をするのだろうか? 嗚呼、馬鹿だからだ! そういう理由
ならば納得ができた。
「昨日告白して今日別れ話とか頭がおかしいんじゃないのか? 」
一体それの何がおかしいのか私は理解できないけれど、クーリングオフとか知ら
なかったりするのだろうか? というかあれか、これが所謂悪徳業者という事な
のだろう。それならば私がここでひく訳にはいかない。私の権利は行使させても
らいます。
「何もおかしくなんてないわ、当然の事でしょ! 」
そうこれは私の権利なのだから何も間違ってなどいない。
否、そもそも間違っていたのだ。私達が付き合うなんて事があるはずがないのに
ただあの場の雰囲気でそうなってしまったというだけの事で、あの時の私の気持
ちは正常な判断ができない状態だった。であるならば今の私の判断こそが正常で
ある。よって彼と付き合うなんて事はありえないのだ。
それにこれはお互いにとっていい事だとさえ私は思うのだ。
こんなにも早く運命の相手ではないと分かったのだから、こんなにも素晴らしい
事はないではないか! 無駄な時間を過ごさずに済んだのだ、さっさと運命の相
手を探すべきなのではないだろうか。
「なんでお前がキレてるんだよ。意味がわかんねえよ。何なのお前は? 俺がどん
な気持ちで告白したと思ってるんだ! 馬鹿にするなよ! 」
「はあ? 何を言っているの? アンタの気持ちなんて知る訳ないじゃん!
じゃあアンタは私の気持ちが分かるとでもいうの? 」
「知るかよそんなもん! 」
「だから私も知らないって言ってるだけでしょ! 」
嗚呼嫌だ嫌だ、自分の事しか考えられないくせに自覚をしていないなんて。
それなりに生きてきたはずなのに、何を学んで生きて来たのだろうか?
振られたばかりの私に告白してくるなんて姑息な事を平然とするような奴に何か
を期待する方が馬鹿なのかもしれないけれど、それでもそんな単純な罠にひっか
かってしまった私には言い訳が出来るぐらいの材料が欲しかったのだ。
だからせめて最後くらいは余裕を見せて欲しかった。
「なんだお前、気持ち悪! 」
振られた腹いせに私の悪口を吹聴するような小物ではあって欲しくなかったけど
得てしてそんなものである。
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