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しおりを挟む『汝運命を欲さば、戦への備えをせよ』
扉の前に浮かび上がった文字を見て俺は執事のゴズフと頷き合う。
「行きましょう坊ちゃま。ここが最後のようです」
俺は重い扉をゴゴゴゴと開けた。
中は何もない空間だったが気を抜いてはいけない。
今までもこういう状況はあった、ここから急に敵が現れるのだ。
俺とゴズフは慎重に動く、何が起きてもいいように常に警戒を怠らない。
そうして真ん中辺りまで来た所で急に扉が閉まり、上からモンスターが降って
来た。
ドスンっと砂煙を巻き上げて降って来たそいつは、1、2、3、4、5、6。
合計6本の腕をもっており、それぞれに剣を握っていた。
これがここのボスなのだろう。
振り下ろされる剣を避けながら、俺達は互いに逆方向へと走る。
一撃でも当たれば、致命傷になると分かるその剛剣を交わしながら俺達は攻撃
する。
どれくらいの時間が経ったのだろうか、もう限界だった。
本当に紙一重の所で俺達は勝利をつかみ取った。
「助かったよゴズフ。お前が居なければ俺はとっくにやられていた」
「何をおっしゃいますか坊ちゃま。よくぞここまで頑張ってこられました。
さあ、この箱をお開け下さい」
俺はゴズフに言われた通り、箱を開ける。
婚約破棄をする為、運命の相手を見つけにダンジョンへと入った俺達はさまざま
な困難を乗り越えて漸く、運命の相手が……そう思って箱を開けると文字が
浮かび上がった。
『運命の相手、汝の隣に』
そして横を向けばそこにはこちら見ているゴズフがいた。
「お前が運命の相手なのか? 」
確かにここまで来る間、ゴズフには何度も助けられたし、彼が居なければ俺は
とっくの昔に死んでいただろう。でも、ゴズフが俺の運命の相手でいいのか?
*****
俺はずっと考えていた。
確かに婚約破棄は叶った。
ゴズフを運命の相手だと紹介したら、汚い物を見るような顔をされたが。
目的は達成したが、何かを失った喪失感がある。
何だろうこの気持ち、今までに感じた事のないこの気持ちは?
これが婚約破棄をするという事なのだと知った、春だった。
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