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しおりを挟む私には病弱な妹が居ました。
でも今はすっかり元気なっています。
きっとお薬がよく効いたのでしょうね。
*****
医者が言うにはとにかく安静にして下さいという事でした。
だから安静にして過ごすのが妹の日常です。
そんな病弱な妹を私達家族は看病する日々でした。
「いつもありがとうお姉様」
「いいのよそんな事、気にしなくていいから。早くよくなるといいわね」
「ええ、ありがとう」
「調子の方はどうだいモスリ? 」
「あ、ビリカンさん」
妹の部屋へ私の婚約者のビリカンがやって来ました。
「丁度よかったわ。私水を取り替えるから、妹の相手をしておいてくれる? 」
ビリカンは病弱な妹の事も気遣ってくれる、とても優しい人。
だから私もつい彼に甘えてしまいます。
「お姉様、そんな言い方。折角お姉様に会いに来てくれたのに、失礼よ! 」
「何、構わないさ。それとも僕じゃ役不足だったかな? 」
「そんな事ないわ! 」
私はビリカンに妹の相手をさせている間に用事をすませると、部屋で着替えを
しました。
「待たせたわね、行きましょうか? 」
今日はビリカンとのデートの日でした。
*****
「どういう事? 何を言っているの? 」
いつものように家にやって来たビリカン。
いつものように迎え入れた私。
でも彼はもう私の婚約者ではなくなっていました。
「君との婚約を破棄させて欲しい」
突然の申し出に私は驚きました。
でも私にはもっと驚く事がありました。
「僕はモスリと結婚したいんだ! 」
私の頭の中はもうぐちゃぐちゃでした。
一体、何がどうなってこうなったのかさっぱり分かりません。
「モスリには僕が必要なんだ! だから僕はモスリと結婚する! 」
「何を言っているの? 」
「ええ、そうね。分かったわ。アナタもそれでいいわよね? 」
「ああ、そうだな。それがあの子の望みなら」
「え? え? 」
何故か両親が認めてしまいました。
確かに妹には甘い両親ではありましたが、これはいくら何でも無茶苦茶じゃない
ですか!
「じゃあ、すぐにでも式を挙げよう。あの子が元気な内に」
それを聞いて私は何も言えなくなってしまいました。
*****
それからと言うもの二人の結婚の準備を見せられる日々に我慢出来なかった私は
家を出ました。無理です。どう考えても納得できません。
たとえ妹の為とはいえ。
そして結婚式に私は出席しませんでした。
手紙が来ましたが、読まずに破り捨てました。
それから、妹は元気に暮らしています。
今度、子供も生まれると風の便りで聞きました。
どうやらモスリに必要だったのは私の婚約破棄だったようです。
あのやぶ医者に教えてあげましょう、最高の薬は婚約破棄だったと。
応援ありがとうございます!
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