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母の日
しおりを挟む5月8日の午後。
机に兄達4人が着席し、会議が始まった。
『ではこれから母の日会議を始めます。』
司会をするのは三男の棗。
『会議を始める前に一言いいですか~?』
『はい、椿さん。発言を許可します。』
手を挙げたのは四男の椿。
『あの、何故毎年こうなるんですか~。』
花沢家では毎年母の日当日に母の日会議が始まる。
しかし、どうみてもこれはもっと前にやっておくべきだ。
その質問に三男が答える。
『愚問だな。僕達が何故こんなギリギリに会議をするのか。それは、1つ。母の日を忘れているからだ。』
そんなに誇らしく言われても困る。
『あの~、解決策が~』
『発言を許可していない!!いいか、母の日を忘れていた事はしょうがない!!そんな事をしても時間は過ぎていくだけだ!!これからのことを考えろ!』
『すいませ~ん』
三男の威圧感に押され黙る四男。
しかし、今日だけはまともな事を言っていた気がする。
『では、何をするか決めましょう。』
『は~い。』
手を挙げたのはまた四男。
『はい、椿。発言を許可します。』
『ここは無難に花をあげるのは~?』
『ばっかもーんっ!!!』
四男の提案に三男はキレて、頭を叩いた。
『いた~っ!!!しかも波平みたいに怒られたよ~!?』
三男に頭を叩かれた四男は頭を押さえる。
『いいか、椿。そんな事をして喜ばれるのは小学生までだ。女は物を貰って喜ぶ生き物だ。枯れる花なんていらないんだよ!!』
『すいませ~ん』
女に対してのイメージが壊れている。
『はい……』
次に手を挙げたのは次男の柊だ。
『はい、根暗な柊兄さん。発言を許可します。』
『ケーキをあげるのはどうだ……?』
『あーね。なるほど。あ、でも最近母さん体脂肪気にしてたからなぁ。後から気にされても困るよね。』
『確かに……』
さっぱりとケーキは却下された。
『え~?それだけ~?俺に対してのあたり強くない~?』
不満を漏らす四男。
『では、他にありますか?』
しかし、その発言は三男によってスルーされた。
『はい』
次に手を挙げたのは長男の葵。
『はい、葵兄さん。発言を許可します。』
『母さんが帰ってくるまで後5分しかない。』
特に焦った様子もなく淡々と言う長男。
ここは焦るとこだろ絶対。
しかし、長男の性格上、どうしようもないのだ。
『え!?もうそんな時間!?』
『だからお手伝い券とかもうシンプルなのでいこう。』
『よし、それ採用!それで行こう!!』
どうやらお手伝い券になったようだ。
今までの議論は何だったんだろうか。
『えー、では、葵兄さんのを採用します。』
『え、じゃあ俺のでもよくない~!?俺のもシンプ……いたい~!!』
『発言を許可していません。』
『今日の棗兄さん俺に酷くない~!?』
会議の結論はお手伝い券に決まり、後は母親を待つだけとなった兄達。
そこへ、妹と母親が帰ってくる。
『『ただいまー!』』
『『『『おかえり!!!』』』』
手厚く出迎え、、、4人は目を見開いた。
母親は家を出た時よりも数段美しくなっている。
これは一体、、、
三男が母親に質問をする。
『あの、母さん、どうしたの?』
『ふふっ、菫がね、エステとかヘアサロンに連れて行ってくれたのよ♪今日は母の日だから♪』
恐るべし妹、菫。
妹は母親の横でにこやかに笑っている。
4人はアイコンタクトを取り、先ほど作ったお手伝い券を一斉にゴミ箱に捨て去った。
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