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17 同棲
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「一緒に住まないか?」
付き合うことになったその日のうちに、蓮がそう言った。
「え?」
「普通のカップルなんかは、付き合ってみてから同棲を決めたりするんだろうが、俺たちにはそれは不要だろ。それこそ桜介の体のホクロの数すら分かってんだから」
「ほ、ほく、ななな何言ってんの!?」
「何今さら慌ててるんだよ。銭湯なんかもよく一緒に行ったしそんな恥ずかしがることじゃねぇだろ?」
「れ、蓮さんは情緒ってものがないの!? どうしてそんな冷静なんだよ!」
「愛を自覚しちまったおっさんはそんなもんだ。かっこいいだろ?」
「何それ。全然かっこよくないし!」
桜介は顔を真っ赤にして蓮に抗議した。
けれど蓮は意に介した様子はなく、むしろ桜介の様子を楽しんでいるような節も見え、桜介をさらに怒らせる結果となった。
「で、一緒に住んでくれねぇのか」
「……住むけど」
「けど、なんだよ?」
「あんまり家賃高くないとこじゃないと俺は無理だよ」
「そんなことは気にするなよ。むしろ家賃くらい俺が払う」
「そんな。だめだよ」
「何言ってんだ。俺の同僚たちで結婚してる奴らは奥さんと子供養ってるやつもいる。お前一人くらい俺にだって養えるんだ」
「でも」
「とりあえず休みの日は部屋を見て回ろう。楽しみだなぁ」
蓮はウキウキで、桜介は少しだけ憂鬱だった。
もちろん、蓮との同棲は楽しみだし一緒に住みたいと思っていることに偽りはない。
けれど、家賃などを全額払ってもらうことには抵抗があった。
桜介の性格上、住まわせてもらっているという気持ちが捨てきれなそうだからだ。
蓮と奇跡的に交際が始まったわけだから、できれば対等な関係でいたい。
おまけに、桜介は異性愛者である蓮に付き合ってもらっているという負い目があるので、蓮の分の老後のための貯金をしっかりと貯めて欲しいと思っているのだ。
それからは蓮は仕事帰りなどに着々と部屋の候補を決めてきて、桜介に打診してきた。
どれも家賃もそこまで馬鹿高いわけではなく、桜介も半分負担できそうな額だったので桜介は安心した。
無事にその部屋に引っ越して、2人の同棲生活が始まった。
鍵には蓮が買ってきたお揃いの革製のキーホルダーをつけた。
休みの日でも呼び出しがかかる蓮は忙しそうで。それでも家が一緒なので一緒にいられる時間が格段に増え、桜介は好きな人と居られる幸せを日々噛みしめていた。
この世に桜介を愛してくれる人などいないと悲観していた頃に、親身になってくれた。好きでいてもいいと安心させてくれた。桜介の気持ちに答えてくれた。桜介にとってもはや蓮は唯一無二の存在だった。
そんな蓮と付き合えることになったなんてと、あれから何度も何度も思った。
そんな穏やかな日々が1年続いた。
桜介は最近の蓮の様子がおかしいことに気がついた。
家によく客が来るようになった。
家のチャイムが鳴ると蓮は俺が行くからと桜介を居間に残してすっ飛んで行く。
集合ポストの郵便物も、桜介がチェックしようとすると怒るようになった。
あまりデートに連れて行ってくれなくなった。
「桜介、知り合いから旅館のチケットもらったんだが、俺は仕事でいけないし友達と行ってきたらどうだ?」
ある日、蓮がそう言ってソワソワしながらペアチケットをくれた。
蓮のぎこちない笑顔を見て、桜介も笑った。
ーー1年か。長かったような短かったような。だけど俺は蓮さんにここまで付き合ってもらえて幸せだったな
「ありがとう。たまには旅行ってのもいいかもね」
笑顔で受け取りそう返事をすると、蓮はあからさまにホッとした顔をした。
付き合うことになったその日のうちに、蓮がそう言った。
「え?」
「普通のカップルなんかは、付き合ってみてから同棲を決めたりするんだろうが、俺たちにはそれは不要だろ。それこそ桜介の体のホクロの数すら分かってんだから」
「ほ、ほく、ななな何言ってんの!?」
「何今さら慌ててるんだよ。銭湯なんかもよく一緒に行ったしそんな恥ずかしがることじゃねぇだろ?」
「れ、蓮さんは情緒ってものがないの!? どうしてそんな冷静なんだよ!」
「愛を自覚しちまったおっさんはそんなもんだ。かっこいいだろ?」
「何それ。全然かっこよくないし!」
桜介は顔を真っ赤にして蓮に抗議した。
けれど蓮は意に介した様子はなく、むしろ桜介の様子を楽しんでいるような節も見え、桜介をさらに怒らせる結果となった。
「で、一緒に住んでくれねぇのか」
「……住むけど」
「けど、なんだよ?」
「あんまり家賃高くないとこじゃないと俺は無理だよ」
「そんなことは気にするなよ。むしろ家賃くらい俺が払う」
「そんな。だめだよ」
「何言ってんだ。俺の同僚たちで結婚してる奴らは奥さんと子供養ってるやつもいる。お前一人くらい俺にだって養えるんだ」
「でも」
「とりあえず休みの日は部屋を見て回ろう。楽しみだなぁ」
蓮はウキウキで、桜介は少しだけ憂鬱だった。
もちろん、蓮との同棲は楽しみだし一緒に住みたいと思っていることに偽りはない。
けれど、家賃などを全額払ってもらうことには抵抗があった。
桜介の性格上、住まわせてもらっているという気持ちが捨てきれなそうだからだ。
蓮と奇跡的に交際が始まったわけだから、できれば対等な関係でいたい。
おまけに、桜介は異性愛者である蓮に付き合ってもらっているという負い目があるので、蓮の分の老後のための貯金をしっかりと貯めて欲しいと思っているのだ。
それからは蓮は仕事帰りなどに着々と部屋の候補を決めてきて、桜介に打診してきた。
どれも家賃もそこまで馬鹿高いわけではなく、桜介も半分負担できそうな額だったので桜介は安心した。
無事にその部屋に引っ越して、2人の同棲生活が始まった。
鍵には蓮が買ってきたお揃いの革製のキーホルダーをつけた。
休みの日でも呼び出しがかかる蓮は忙しそうで。それでも家が一緒なので一緒にいられる時間が格段に増え、桜介は好きな人と居られる幸せを日々噛みしめていた。
この世に桜介を愛してくれる人などいないと悲観していた頃に、親身になってくれた。好きでいてもいいと安心させてくれた。桜介の気持ちに答えてくれた。桜介にとってもはや蓮は唯一無二の存在だった。
そんな蓮と付き合えることになったなんてと、あれから何度も何度も思った。
そんな穏やかな日々が1年続いた。
桜介は最近の蓮の様子がおかしいことに気がついた。
家によく客が来るようになった。
家のチャイムが鳴ると蓮は俺が行くからと桜介を居間に残してすっ飛んで行く。
集合ポストの郵便物も、桜介がチェックしようとすると怒るようになった。
あまりデートに連れて行ってくれなくなった。
「桜介、知り合いから旅館のチケットもらったんだが、俺は仕事でいけないし友達と行ってきたらどうだ?」
ある日、蓮がそう言ってソワソワしながらペアチケットをくれた。
蓮のぎこちない笑顔を見て、桜介も笑った。
ーー1年か。長かったような短かったような。だけど俺は蓮さんにここまで付き合ってもらえて幸せだったな
「ありがとう。たまには旅行ってのもいいかもね」
笑顔で受け取りそう返事をすると、蓮はあからさまにホッとした顔をした。
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