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祭り2
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「ちょっと、毒味とか良いって。俺の顔知ってる人なんて少ないんだから」
隣を歩くロノエゼトリーの裾を引っ張り小声で伝えると、ロノエゼトリーは片眉を上げた。
「おや。気づかれてしまいましたか。さすがミズホ様です。ですが、いくらご尊顔を知る者が少なくても、警戒を怠るわけにはいきませんよ」
「……そうかもしれないけど……。もし本当に何か入ってるのがあったとしてロノエの体は大丈夫なのか?」
「私の体の心配をしてくださるんですか? 嬉しいです。私たちの体は人間や獣人が使うような毒などは耐性を持っているので問題ありません」
「ふーん」
毒に耐性があるならば、毒味してもらっても問題ないかと頷くと、ロノエゼトリーはにっこりと微笑んだ。
「魔力が十分に制御できるようになれば、毒の耐性も習得できるようになりますよ」
「ぅぐ」
毒味の話は藪へびだったらしい。せっかく祭りの楽しい気分だったところで、魔力制御についての話になり、瑞歩は食べていた甘辛肉サンドを喉につまらせた。
「ああ、大丈夫ですか。ほら、お水を飲んでください」
「ごほっ、ごほっ。ん。ありがとう」
背中をさすってくれるロノエゼトリーに向かって笑い、魔力瓶に入れられた水を受け取ると、ロノエゼトリーの肩越しに、エドウィンがいるのが見えた。エドウィンの方も瑞歩を見ていたが、瑞歩と目が合うと気まずそうな顔をして目をそらされ、瑞歩は首を傾げた。
「ミズホ様? どうかされましたか」
「あ、いや。ほらあそこにエドウィンがいたから……。でも、目そらされた。機嫌悪いのかな」
「エドウィン……? ああ、バーの店主ですね。彼も屋台を出しているんですね」
ロノエゼトリーに言われるまで気が付かなかった瑞歩だが、確かにエドウィンは屋台の前で呼び込みをしているような服装だ。普段バーにいる時は、それなりにきっちりした服装をしているので、ラフな服装に身を包んだエドウィンは新鮮だ。半袖のシャツから出た腕には狼の毛が生えていて、この季節を過ごすにはかなり暑そうに見える。もしかしたらエドウィンが不機嫌なのは、この暑さが原因かもしれない。
「寄っていかれますか?」
「うん。売ってるのさっと見て、さっと買おうかな」
エドウィンに近づきその屋台を見ると、どうやらジャーキーを売っているようだ。
この国でよく食べられている牛や豚に似た肉のジャーキーや、美味しいとされる食用の魔物などのジャーキーで、どれも興味を惹かれた。今回はもうお腹いっぱいで瑞歩のお腹にはもう何も入りそうになかったが、エドウィンの屋台にはビールサーバーも置いてあり、次にこんな機会があったのなら飲みながら祭りを散策するのも楽しそうだとワクワクした。
「とりあえず全種類1つづつお願い」
「せっかくですので、一緒に買いにいきましょう」
「え、いいの?」
「はい」
先ほどまではロノエゼトリーが1人で買いに行き、瑞歩は他の護衛と待機していたので、ここでもまたロノエゼトリーが買ってきてくれるのだと思っていた。けれど、エドウィンの店だし、瑞歩も直接話したい。
「いらっしゃい」
そう言ったエドウィンの機嫌は特に悪くなさそうだったので、瑞歩は、先ほどのは勘違いだったのかとホッとした。
「こんばんは。エドウィンも屋台を出してたんだね」
「ああ。こういうイベントごとで気に入ってくれた人が店に来てくれたりするらしいからな。俺の店はまだ出したばっかだから、客を増やせそうなことはなんでもやってみてるんだ」
「そうなんだ。すごいね」
「こういう祭りには今まで獣人は参加できなかったから、ただ参加するのが楽しいってのもあるけどな。やっぱ新国王さまさまだ。ミズホもそう思うだろ?」
「えっ……、え、うん。そうだね」
答えに困っていると、ロノエゼトリーが横でくすりと笑った。
それを見てエドウィンは顔をしかめた。
「あんたは……ミズホが最初に店に来たときに迎えに来た悪魔だよな」
「はい。ロノエと申します」
「ふぅん」
エドウィンは人が良さそうな笑みを浮かべているロノエゼトリーを胡散臭そうに見つめた。
「エドウィン、この人は胡散臭そうな顔で笑うけど、別に悪いことを考えてるわけじゃないんだよ。ただ、そういう顔なだけ」
「ミズホさま」
瑞歩のロノエゼトリーに対するフォローのつもりの言葉を聞いて、ロノエゼトリーは笑顔を崩さずに、瑞歩を見下ろしてきた。
隣を歩くロノエゼトリーの裾を引っ張り小声で伝えると、ロノエゼトリーは片眉を上げた。
「おや。気づかれてしまいましたか。さすがミズホ様です。ですが、いくらご尊顔を知る者が少なくても、警戒を怠るわけにはいきませんよ」
「……そうかもしれないけど……。もし本当に何か入ってるのがあったとしてロノエの体は大丈夫なのか?」
「私の体の心配をしてくださるんですか? 嬉しいです。私たちの体は人間や獣人が使うような毒などは耐性を持っているので問題ありません」
「ふーん」
毒に耐性があるならば、毒味してもらっても問題ないかと頷くと、ロノエゼトリーはにっこりと微笑んだ。
「魔力が十分に制御できるようになれば、毒の耐性も習得できるようになりますよ」
「ぅぐ」
毒味の話は藪へびだったらしい。せっかく祭りの楽しい気分だったところで、魔力制御についての話になり、瑞歩は食べていた甘辛肉サンドを喉につまらせた。
「ああ、大丈夫ですか。ほら、お水を飲んでください」
「ごほっ、ごほっ。ん。ありがとう」
背中をさすってくれるロノエゼトリーに向かって笑い、魔力瓶に入れられた水を受け取ると、ロノエゼトリーの肩越しに、エドウィンがいるのが見えた。エドウィンの方も瑞歩を見ていたが、瑞歩と目が合うと気まずそうな顔をして目をそらされ、瑞歩は首を傾げた。
「ミズホ様? どうかされましたか」
「あ、いや。ほらあそこにエドウィンがいたから……。でも、目そらされた。機嫌悪いのかな」
「エドウィン……? ああ、バーの店主ですね。彼も屋台を出しているんですね」
ロノエゼトリーに言われるまで気が付かなかった瑞歩だが、確かにエドウィンは屋台の前で呼び込みをしているような服装だ。普段バーにいる時は、それなりにきっちりした服装をしているので、ラフな服装に身を包んだエドウィンは新鮮だ。半袖のシャツから出た腕には狼の毛が生えていて、この季節を過ごすにはかなり暑そうに見える。もしかしたらエドウィンが不機嫌なのは、この暑さが原因かもしれない。
「寄っていかれますか?」
「うん。売ってるのさっと見て、さっと買おうかな」
エドウィンに近づきその屋台を見ると、どうやらジャーキーを売っているようだ。
この国でよく食べられている牛や豚に似た肉のジャーキーや、美味しいとされる食用の魔物などのジャーキーで、どれも興味を惹かれた。今回はもうお腹いっぱいで瑞歩のお腹にはもう何も入りそうになかったが、エドウィンの屋台にはビールサーバーも置いてあり、次にこんな機会があったのなら飲みながら祭りを散策するのも楽しそうだとワクワクした。
「とりあえず全種類1つづつお願い」
「せっかくですので、一緒に買いにいきましょう」
「え、いいの?」
「はい」
先ほどまではロノエゼトリーが1人で買いに行き、瑞歩は他の護衛と待機していたので、ここでもまたロノエゼトリーが買ってきてくれるのだと思っていた。けれど、エドウィンの店だし、瑞歩も直接話したい。
「いらっしゃい」
そう言ったエドウィンの機嫌は特に悪くなさそうだったので、瑞歩は、先ほどのは勘違いだったのかとホッとした。
「こんばんは。エドウィンも屋台を出してたんだね」
「ああ。こういうイベントごとで気に入ってくれた人が店に来てくれたりするらしいからな。俺の店はまだ出したばっかだから、客を増やせそうなことはなんでもやってみてるんだ」
「そうなんだ。すごいね」
「こういう祭りには今まで獣人は参加できなかったから、ただ参加するのが楽しいってのもあるけどな。やっぱ新国王さまさまだ。ミズホもそう思うだろ?」
「えっ……、え、うん。そうだね」
答えに困っていると、ロノエゼトリーが横でくすりと笑った。
それを見てエドウィンは顔をしかめた。
「あんたは……ミズホが最初に店に来たときに迎えに来た悪魔だよな」
「はい。ロノエと申します」
「ふぅん」
エドウィンは人が良さそうな笑みを浮かべているロノエゼトリーを胡散臭そうに見つめた。
「エドウィン、この人は胡散臭そうな顔で笑うけど、別に悪いことを考えてるわけじゃないんだよ。ただ、そういう顔なだけ」
「ミズホさま」
瑞歩のロノエゼトリーに対するフォローのつもりの言葉を聞いて、ロノエゼトリーは笑顔を崩さずに、瑞歩を見下ろしてきた。
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