1 / 1
・・
しおりを挟む
「酔っ払っちゃってさー、迎え来てくんねー?」
俺が電話をかけたのは、俺のお目付役である坂本健一。俺が物心ついた時には恋をしていた。
『……わかりました。どこにいらっしゃいますか』
電話口の坂本の声にさえ嬉しくなってしまうほどに好きだ。
「えーとねー、新宿のー、エクストラって店ー」
『承知しました。20分ほどで到着すると思います』
電話口で女の喘ぎ声がかすかに聞こえた。
「なにー、お前、また女連れ込んでんの? いいけどさ。お取り込み中に悪かったな。適当に泊まるからやっぱ迎えはいいや。」
不毛だ。
電話を切った俺は頭を抱えた。
坂本は、俺が5歳、坂本が10歳の時に俺の父親に拾われた。坂本の両親は父親の部下だったらしいが、借金を抱えて坂本を残して蒸発したらしい。
俺の父は、古くからある旅館の次男坊で今は東京で大きな会社を経営している。母はパワフルな人で世界中を飛び回って仕事をしている。両親とも忙しいので俺は父の実家である旅館に小さい頃から預けられていて、坂本もそこに一緒に住んでいた。
思えば、両親がそばにいない俺を一番に甘やかしてくれたのが坂本だったから好きになったのかもしれない。祖父も祖母も俺を甘やかしてくれたけど、旅館の仕事で朝から晩まで働いていたし、俺の世話係を自らかってでた坂本に両親も、祖父も、祖母も、そして俺も甘えきっていた。何が楽しいんだか22歳で父の会社で働き始めた俺のことをいまだに世話している。女は途切れることのないルックスだし、実際しょっちゅう女の匂いをさせている。
「……不毛だ」
先ほど思ったことをもう一度吐き出す。
「結構飲んでるね、隣いい?」
遊んでそうな顔の男だな。けど、体格とか雰囲気とかちょっとあいつに似てるかも。なんて。
「いいよ」
「名前、聞いてもいい?」
「志波洋介」
「それで、何が不毛なの?」
「聞いてたんだ」
「聞こえちゃっただけだよ」
男はにこやかに答えて続けた。
「それで?」
「別に、よくある話。ノンケの男に片思いしてんの」
俺は目の前の名前も知らない男に自分の片思いの愚痴を吐いていた。話しやすい男だった。遊んでる男ってのはやっぱ聞き上手なのかね。それでも彼はチャラそうな見た目とは裏腹に真剣に俺の話を聞いてくれた。
「……はぁ。話したらちょっとスッキリしたかも。ありがとう」
「いいよ、いいよ。俺しょっちゅうこの店に入り浸ってるから、また話したくなったらおいでよ」
あと、これ俺の連絡先。と彼は名刺にラインのIDを書いて渡してきた。
「相馬健っていうんですね……」
「聞いといて俺の名前言ってなかったね。ごめん、どう呼んでくれてもいいよ」
「じゃあ、相馬さんて呼びます」
相馬さんはふと考える顔をして俺に顔を寄せてきた。
「……やっぱりたけるってよんで?」
「ちょっと耳元でささやくなよ!」
「っぷ」
「ははっ」
あー。楽しいな。こいつが坂本だったらいいのに。などと失礼なことを考えてしまう。
「あ、俺もう終電。じゃあまた今度」
そう言うと相馬さんは慌ただしく会計をして、じゃあ、連絡待ってるから! と言い残して帰って行った。
俺も、そろそろ満喫でもいくか。
「あー、よかった。まだ居たんですね。お迎えにあがりました」
俺が腰を上げて帰ろうとした時、坂本が店内に入ってきた。
「え、お前どうして。女どうした? 迎えはいいって言っただろ」
俺がそう言うと坂本は何ともない声で答えた。
「ちゃんと送って行きましたよ? 洋介さんが俺を呼んだんじゃないですか」
その声は急に呼び出したことを怒るでもなくむしろ優しい声だった。
「え、だから俺、やっぱいいって言っただろ」
「まぁ俺も、1回はそうかと思ったんですけど、洋介さんを1人でどこかに泊まらせるのは心配だったので迎えにきちゃいました」
どこまでも優しい。女より俺を優先する。期待してしまいそうになる。
「お前って本当、過保護だな。俺もう22だぞ」
「洋介さんは幾つになっても、俺の弟みたいなものです。洋介さんのお父様には大変お世話になりましたし、恩返しがしたいんですよ。俺にできることがあれば何だってしたいんです」
いつまで経っても弟呼ばわりにチクリ、と胸が痛くなる。
「まじめだなぁ。もう恩はとっくに返し終わってお釣りがくるくらいだぞ。17年間も俺のお世話してたんだから」
俺がそう言っても坂本は、爽やかな笑顔のまま、まだまだ全然たりません。と答えた。
坂本が、俺の父親に対して恩を返したいと思っている間は、俺は坂本の近くにいられる。坂本がいくら女を抱いても、俺を優先してくれる。
「……すきだ……」
「え? 何か言いました?」
俺が小さく呟いた声は、坂本には届かない。
「お前って、運転うまいよな」
坂本が運転する車の助手席で俺は呟いた。
「え? なんです? 突然」
「いや、なんつーか、信号で止まる時とかもスーって感じじゃん。全然体に負担がかからないって言うか」
「あー。洋介さんや洋介さんのご家族を乗せる機会がたくさんあると思ったんでかなり練習しました」
「お前って俺の家族に対して変態的だな」
「え、はは。そうですか?」
「そこ、ハニカムとこじゃねーし」
俺がそう言うと、すみません。と言いつつ微笑みを絶やさない。坂本は割とどんなことがあっても笑っている。こいつの怒ったところを見たことがない。坂本と初めて会った時からずっとだ。
「さ、着きましたよ。じゃあ俺、車置いてくるんで先に帰っててくださいね」
坂本はそう言うと、俺をおろして駐車場に入って行った。
俺と坂本は、同じマンションの隣同士の部屋に住んでいる。これは坂本の希望だ。いつでも俺の世話ができるようにと。だから坂本は俺の部屋の鍵まで持っている。
坂本は俺の家族に対してかなり盲信的だ。父が頼んだ仕事もすぐに片付けるし、母が日本に帰国している間、進んで荷物持ちに出かけていく。俺が呼んでもすぐに飛んでくる。
ーー俺は一生かけて志波家に恩を返したいんです。
以前、何かやりたいことないの? と聞いた時に坂本が言っていた言葉だ。というか坂本は事あるごとにこの言葉を言う。坂本は多分、志波家の人間が死ねと言ったら笑顔で死ぬ気がする。それが俺にはとても怖い。
俺が、女と会うなと言ったら坂本は多分、本当に女と会わなくなる。
だから、俺が坂本のことを好きだと言ったら、付き合ってくれと言ったら、坂本は俺のことを恋愛対象として見てなくても俺に好きだと……愛してると言って、俺とそういうことをしてしまう。だから、言えない。一生このままの関係でいい、そう思っていたのに。
俺はその日、坂本とバーで酒を飲んでいた。
俺は坂本と飲んでいるという事実に興奮して、勝手にデートだと思ったりしてそれはもう楽しんでいた。だからかなり飲み過ぎてしまった。
べろんべろんに酔っ払った俺は坂本に肩を貸してもらいながら何とかタクシーに乗って俺の部屋まで運ばれた。
「こんなに酔っ払ってしまって……。すみません。途中で止めればよかったですね」
坂本はベットで横になっている俺の服を脱がせながら、水飲めますか? 先に水持ってきますね。と脱がされ途中の俺を置いて水を持ってきてくれた。俺が水を飲むとコップを受け取り、近くの棚に置いてまた俺を脱がせにかかる。もちろんパジャマに着替えさせるためだ。そんなことは分かっているけど坂本に脱がされているという状況で少し前の方が反応してしまった。
「俺、自分で着替えるから、もういいよ」
俺は、反応していることに気づかれる前に、坂本から離れようと声をかけたが、いいから寝ててくださいと返されてどうしようもなくなる。そのまま上半身を脱がせ終わった坂本は、ズボンに手をかけて動きを止めた。
「すみません、そういうことでしたか」
俺が恥ずかしすぎて無言でいると坂本は俺の目の当たりにタオルをかけた。
「好きな子でも、想像してください」
そういうと、坂本は俺のズボンとパンツを一気に脱がせて俺の緩く立ち上がってしまったそれを咥えてしまった。
「んっ、何やってんだ。いいよ、そんなことしなくて」
俺がそう言っても坂本は無言で舐めてくる。何で何も言わないんだ、あれか? 好きな子ってのを想像しやすいようにか?
「あっ、んぁ……ふ」
なんかこいつ、うまくねえ?
俺も22歳だ。経験がないわけじゃない。けど坂本は今まで体験したことないくらいうまい気がする。好きな相手だからってのがあるかもしれない。
「あぁ、ひ、いぁ……」
部屋には俺の声とぴちゃぴちゃという卑猥な音が響いている。
「あ、いくっ、口、離せっ」
坂本は一向に口を離さない。
「おぃ、あぁ、はぅ、はやく、ん、はなせ、え、ああっ!」
耐えきれずに坂本の口に出してしまった。目元のタオルをどかすと、坂本はいつもの笑顔だった。
「おま、もしかして、飲んだ?」
坂本はそれには答えずに、部屋を出て、すぐにタオルとお湯を持ってきて俺を拭う。俺は、疲れて意識を手放してしまった。
「おはようございます」
「……おはよう」
朝起きたら、気まずい俺をよそに坂本はいつもの笑顔で挨拶してきた。
そうか、確かに女を取っ替え引っ替えしている坂本にしたら何でもないことだろうな。まぁ相手が男ってのは何でもないかはわからないけど。もしかして、体だけならいいんじゃないのか? 俺は昨日のことを激しく後悔しているくせに全く逆のことも頭で考えてしまう。坂本がもし俺を抱けるんだったら、体だけだったら、坂本を縛ることもないし許されるんじゃないだろうか。
「どうかしました?」
坂本は、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「いっいや! 何でもない!」
「そうですか、ご飯できていますよ。食べていかれますよね」
「食べる、あ、ありがとう」
どこかぎこちなくなる俺の口調をさして気にする様子もなく朝ごはんを机に運んできてくれた。今日は、俺も坂本も休みだからゆっくりした時間が流れている。
「今日はどこかに出かけますか?」
「いや、俺はどこにも。坂本は?」
「俺も今日は予定がありません」
にこやかにそう答えた坂本に俺はつい聞いてしまった。
「あの……さ、坂本って男とやったことあんの?」
「いいえ、女性としかしたことはないです」
笑顔を絶やさず答える坂本に俺は緊張しながら続ける。
「えっと、さ……そのー」
「なんです? 随分と歯切れが悪いですね」
「えっと、俺のこと、抱ける?」
声がだんだんと小さくなってしまう。
「え?」
さっきまでいつもの微笑みを浮かべていた坂本の顔は明らかに引きつっていた。
「冗談だよ! 本気にすんなって。昨日の仕返し。なんつってな。じゃあ俺、自分の部屋帰るわ! ごちそうさま!」
そう捲し立てて、俺は自分の部屋までダッシュで戻った。
坂本、何も言わなかったな。まぁそうか、普通女しか抱けねーよな。いや、これで良かったんだ。坂本がいやいや俺を抱くことなんてない。そういうのは嫌だってずっと思ってたじゃねーか。
俺はスマホの画面を見る。
1人でいたくねーし。
ーー今日会えない?
相馬さんにラインを送る。すぐに既読がついた。
「既読つくのはや」
ーーもちろん。この前の店でいい?
ーーうん
18時、店が開店と同時に俺たちは席につく。
「で? 何かあったの?」
席につくなり相馬さんは聞いてくる。
俺は昨日あったことから今日の朝のことまでかいつまんで話した。
「なるほどね。随分思い切ったね」
「俺も言うつもりはなかったんだけどさ、つい、もしかしてセックスだけならいけんじゃねーかなって思ってしまって」
「まぁ、フェラされたらその先もいけるかなと思うわな」
「だろー? でもあいつは悪くないんだ。あいつは俺や俺の家族に対して何でも尽くしたがるから」
「洋介の親父さんが恩人なんだったっけ?」
「そう、だから多分恩人の息子が困ってたから抜いてやったくらいに思ってたら、調子に乗った俺に、俺のこと抱けるかなんて聞かれてドン引きしたんだと思う」
「いくら恩人の息子でもノンケの男がフェラするのは結構勇気がいることだと思うよ」
相馬さんは優しそうな笑顔でそう言ってくれた。やっぱりどことなく雰囲気が坂本に似ている。
「あいつは、志波家の人間が死ねって言ったら笑顔で死のうとする男だよ。実際そんなこと言ったことないから分からないけど」
目の前のグラスについたしずくを指でなでながら続ける。
「だから、俺はあいつにそんなこと言ったらいけなかった。多分あのままあの部屋にいたらあいつは俺のことを抱いたと思うから」
好きな男と、気持ちのないセックスなんて虚しいだけだろ。と付け加える。相馬さんは持っていたグラスを静かに置くと俺の方へ体ごと向いた。
「じゃあ、好きじゃない男と気持ちのないセックス、する?」
相馬さんは、いつもの笑顔ではなくいたってまじめな顔をしながら聞いてくる。
「ふふ、付け込むのがうまいね。いいよ」
そう俺が言った後すぐ後ろから、「ダメです」と聞こえた。振り返ると坂本が怒った顔で立っていた。
「うぇ!? 坂本? なんでここにいんの」
俺の問いかけはまるっと無視して坂本はカウンターにお金を置き俺の腕を掴んだ。
「帰りますよ」
そのまま俺の腕を引っ張っていこうとする。
「いや、俺、相馬さんと……」
「なんです?」
「いえ、何でもありません」
鬼の形相の坂本に俺は何も言えなくなる。坂本の怒った顔初めて見た。
「相馬さん! ごめん。また今度!」
俺が相馬さんに言うと相馬さんは笑顔で手を振ってくれた。だけど、坂本は今度はありません! と怖い顔で言ってくる。
坂本は車に俺を押し込むと運転席側に回って車に入ってきた。
「帰るのか?」
「いやですか」
坂本は、いつもの笑顔じゃない。まだ怒った顔をしている。
「お前、何怒ってんの?」
坂本は無言で苛立たしげにタバコを出して一息すう。
「……わかりませんか」
「は? え、なにが?」
ゆっくり車を発進させる。
「家が嫌だと言うならラブホにでも行きますか」
坂本から発せられた言葉が理解できない。ひどく冷たい声だ。なんだ? ラブホ?
あぁそうか。そういうことか。俺の願い通りに俺のことを抱いてやろうと思ってんのか。
あぁなんてことだ。体だけでもと思ったけど、実際本当にそうなったらなんて胸が痛むんだ。
あんなことを言わなければ良かった。つい、なんて言い訳にしかならない。俺は、ゲイで何人かとセックスしたこともあるけど、坂本は違う。坂本は俺や俺の家族が望むことは何でも叶えようとしてしまう。坂本のそんなところを俺は利用してしまうのか。俺を抱いた後、坂本が傷つくんじゃないのか。だめだ。そんなことはだめだ。
「おい、車止めろ、俺はさっきの店に戻る」
「だめです」
「おい、坂本、車を止めろ。言うことを聞け」
「……あんまり、うるさくすると口を塞ぎますよ」
坂本の普段聞かない、ひどく冷酷な低い声に俺はそれ以上口を開けなかった。
それからしばらく無言で車に乗っていた。いつも乗っているはずの車なのに今はひどく心地悪く感じだ。坂本がタバコを何本吸ったか数えきれなくなった頃、着きましたよ。と言われあたりを見渡す。森の中にある家の前にいた。何戸か同じ家が建っているようだ。
「ここは?」
「コテージです。今はオフシーズンなんで俺たちしかいないようですね」
「……俺、帰る、っむ、んー」
俺が言い切らないうちに俺の口を坂本の口に塞がれる。
「んー、んっは、ん、む」
その激しすぎるキスにだんだんと体に力が入らなくなってくる。坂本はゆっくり口を離すと俺の顔を見て、フッと笑った。その冷たい顔にゾクリと体が反応する。
「さぁ、車を降りてください」
そう言うと、坂本は運転席から降りて助手席の方までゆっくりと周りドアを開けた。しばらく動けないでいると坂本は俺の耳に顔を寄せて「もしかして無理矢理がいいんですか?」と聞いてきた。俺が慌てて首を振ると坂本は冷たい目で俺を見た。
「じゃあ早く降りた方がいいですよ」
俺はなぜか怒っているらしい坂本をさらに怒らせないように慌てて車から降りた。
「坂本、ちょっと待って!」
車から降りると右手を掴まれてグイグイとコテージの方まで引っ張られた。
ドアを開け中に入るとオフシーズンで人の出入りが少ないからなのか少しだけかび臭さを感じた。
「脱いでください」
「は?」
「服……セックスするのに邪魔でしょう」
「そのことは、もういいんだって。冗談だって言っただろ」
「冗談? 生憎俺にはそんな冗談は通じません。無理矢理やられたくないなら早く脱いだ方がいい」
坂本の目は本気だった。
「何泣いてるんです? 泣きたいのはこっちなんですが」
「……ないて、ない」
「泣いてるじゃないですか。ほら」
そう言って坂本は親指の腹で俺の目尻を拭った。
「そんなに俺とするのが嫌ですか。あなたから誘ったくせに」
「俺は……俺は……そうだ。坂本とはやりたくない。朝のは昨日の仕返しだったんだ。ほら、昨日あんなことしたのにさ、動揺してるの俺だけだったし」
坂本が俺なんかを抱かずに済むようにそう言った。
「そうですか」
坂本は先ほどまでと何も変わらないトーンで言った。
そして玄関に置かれていたリュックのところまで行くと中から何かを出した。暗がりでこちらに近づくまで全く見えなかったが手錠のように見える。
「な、なんでそんなもん持ってんの……?」
「先ほど購入してきました。朝のあなたのあの様子じゃ、もしかしたら必要になるかと思いまして。できれば使いたくは無かったのですが」
「じゃ、じゃあ使わなきゃいいんじゃないかな」
「でも、あなたが俺とはやりたくないと言ったので」
「ごめん、話がよく分からないんだけど」
「分からなくても良いんですよ。あなたは今から無理矢理俺にやられるというだけのことですから。分かっても分からなくても結果は変わりません」
「なんで……。俺、冗談だったって言ってるのに」
「俺も言いましたよね。俺にはそんな冗談は通じません」
「坂本は女が好きなんだよな……?」
「ええ。今まで付き合った人も全員女でした」
確認して、俺は安心した。申し訳ないけど随分とやる気満々になって俺を抱いてくれようとしているらしいが、抱けるはずがない。
俺は自分で言うのもなんだが男らしい見た目の方だ。義務感で俺に対して勃つなら世の中に精力剤なんていらねーんだよ。
坂本は安心した俺の顔を見て少し不快そうな顔をした。俺は坂本のそんな表情も初めてみた。
「何、ほっとした顔をしてるんです? ああ、大体分かりますよ。どうせ俺に勃つわけないと思いましたね? 残念でしたね」
そう言いながら坂本は俺の手をつかんで自分の股にあてがった。
「なんか飲んだ?」
「いいえ」
動揺でびっくりするくらい失礼な発言をした気がする。
「さあ、もうおしゃべりは良いですから自分で脱ぐのか俺に脱がされるのか決めてください」
俺は何も言わなかった。この後に及んでまだ坂本が冗談ですと言うのを期待している。
だって坂本が俺の嫌がることをするはずがない。
だが坂本は無言でいる俺をみて小さくため息をつくと持っていた手錠を使って俺を後ろ手に拘束した。
俺の抵抗など全く意に介さずに簡単に拘束されて俺は半ば放心状態になった。
「どうしたんです? もう抵抗はやめたんですか?」
坂本は俺のシャツをカッターで裂きながら聞いた。
その次にベルトのバックルを外してズボンからベルトを抜き取った。
「や、めろって!」
どれだけ抵抗しても、何の意味もないというように、俺は簡単に裸にされた。
服を全てきっちりと着ている坂本に対して、全裸で拘束されている俺。思い出したように恥ずかしくなった。
坂本は俺を横抱きにするとそのまま奥の部屋まで歩いて行き扉を開けた。
そこにはシングルの簡易的なベットが置いてあった。
坂本は一旦、俺を手錠から解放し、だがすぐにベットの柵に手錠を通してベッドに俺を拘束した。
坂本は一旦外に出て行って戻ってきた時には棒の両端に拘束ベルトがついたようなものを持っていた。
坂本はそれを俺の足に取り付けて、俺は足を開いた状態で拘束された。
「おい、マジで、やめてくれ。お願いだ。頼む坂本。こんなのお互いのためにならねぇよ。本当に、謝るから!」
坂本はそんな俺の言葉にも反応せずに、ただただ冷たい目で俺を見下ろした。
「口を開けてください」
「……いった!!」
口を開けない俺の頬を強くつねった。
「さぁ、口を開けてください」
尚も冷たい目で見下ろしてくる坂本が恐ろしく、俺はおとなしく口を開けた。
そこに穴の開いた器具を取り付けられた。
口を閉じられなくする器具らしい。その両橋についた紐を頭に回されて固定された。
「ああ、可愛いですよ。洋介さん」
口を閉じられず、足を思い切り開いた状態で拘束された俺をみて、可愛いと感じるのはおかしい。
俺が抵抗しなければ、俺は坂本とちゃんとセックスできたのだろうか。
「あ、あ、あ」
(これを解いてくれ、もう抵抗しないから)
だけどもうそう頼むことはできない。
まともな言葉が発せられない俺を、坂本はいつもの、あの微笑みでみている。
坂本はゆっくりとした動作で上着を脱いだ。ほどよく鍛えられた筋肉質な体。同じ男として嫉妬してしまうような綺麗な体に俺は目を逸らした。
今度はズボンを脱ぐようだ。目の端に映る坂本の動作がそう物語っている。しばらくして脱ぎ終わったのか坂本は近くの棚を開き中から液体の入ったものと大きな注射器のようなものを数個取り出した。
「さぁ、中を綺麗にしましょう」
「あ! あぁ!」
何をされるのか悟った俺は抵抗しようとした。
だが身動きが取れない俺に抵抗する方法もない。すぐに尻を掴まれて注射器を差し込まれた。
「あ、ああ! あああ」
俺の腰の下にはクッションを敷かれて、ちゃんと中に入っていくように腰を高くさせられた。
「もう1本分くらいいっときましょうか」
そう言って坂本は限界まで俺の体に液体を入れてやや三角形のようなディルドを液体が出てこないように最後に入れた。
お腹がぐるぐるとうるさい。腹痛でもう頭も回らなくなってきた。
その時、坂本は俺を抱えてベットから下ろした。
ベットの柵に拘束されたまま、俺はベットに体を預けるように跪いた。
(ああ、やっと出せる……)
だがそう期待した俺を嘲笑うように坂本は俺の口に自分の昂ったそれを突っ込んだ。
「ん゛あ゛ぁ」
喉から嫌な音が出る。
生理的な涙が出てくる。坂本は数回腰を動かした後、すぐに引き抜いた。
「きついですか?」
心底心配したような顔でそう問いかけてくる坂本に、俺は恐怖した。
誰がそのきつい目に合わせているんだ。だが拘束された口で坂本に向かってそう言うことはできない。
せめてもの抵抗に俺はキッと坂本を睨みつけた。
「睨みつける元気があるなら大丈夫ですね。さ、もうお腹も限界でしょう。出していいですよ」
坂本は俺の後ろに手を回して三角のディルドを抜き取った。
少し大きな音を立てて漏れたが、人間としてのプライドを捨てきれずギリギリのところで排泄を止めた。
「ん……」
苦悶の表情を浮かべる俺に坂本は微かに笑みを浮かべ、俺のアナルに自分の凶悪なでかさのそれをあてがった。
「!!」
坂本は抵抗しようとする俺の腰を掴み、ゆっくりと腰を進めてきた。
「……っ。ほらっ、全部入りましたよ」
坂本は俺を後ろから抱え込み緩やかに律動し、右手の人差し指と中指を俺の口に突っ込んできた。
口を閉じることができない俺はただただヨダレを垂らすだけだ。
律動の間にいまだ入ったままの浣腸液が漏れ出る音とお腹がぐるぐるとなる音、パンパンと乾いた音が部屋じゅうに響いている。
その時、坂本は突然俺の中から抜け出た。突然のことに俺は排泄を止めることができずに大きな破裂音と共に全て排出した。
全ての液が出終わると坂本はぐったりとする俺にもう一度挿入してきた。
「ああっ……」
脱力した俺はただ声を出すことしかできない。
坂本はそんな俺にお構いなしに、何かを探すように腰を回した。
坂本のそれがその一点に当たった瞬間、目の前を稲妻が走ったような衝撃があった。
坂本は俺の反応で気がついたのかそこばかりを上から押しつぶすように執拗に攻めてきた。
「ああっあ! あひゃ、あっああ、あああああぁあ、あ」
言葉にならない声を上げながら俺は絶頂した。
「……ふっ、……後ろだけでいけたんですか。っ、かわいいですね。っ、でも、俺はまだまだいけないので、っ、付き合って、もらいますよっ」
坂本は激しく律動しながらそう言った。
それから俺は朝になるまで犯され続けた。
朝起きると俺は坂本に後ろから抱きつかれながら寝ていた。
寝ていたと言うよりも気絶していたの方が近い。
猿轡は外されていたがお尻にはまだ異物感がある。
あれから何回中に出されたかも覚えていない。
中のものを今からでも外に掻き出さないと、お腹痛くなる。そうは思ってもいまだ手錠でベットの柵につながったままでどうすることもできない。
俺が少しだけ身じろぐと、すぐに後ろで起きた気配がした。
「んー」
坂本が唸りながら起き上がるのと同時にお尻に違和感が走る。
なぜいまだにお尻に違和感があったのか思い至って俺は勢いよく体勢を変えた。
ずるりと体からそれが抜ける感覚。
「あー、抜けちゃった」
坂本が間の抜けた声で言った。
「さ、か……もと、なんで」
渇きで喉がピリつくも、なんとかそれだけ言った。
坂本は無言で横の棚からペットボトルを取ってストローをさして俺の口元に差し出してきた。恐る恐る口をつけて飲んでみたが、特に変な味はしない。
俺は勢いよく飲んだ。
しばらくして坂本が口を開いた。
「申し訳ありません」
「……いや、俺が悪いんだ。坂本に頼めば必ず実行すると分かっていたのに。ごめん……本当に、ごめん。坂本は、俺と違ってノンケなのに。俺なんかと……あんなやり方になってしまうのは、仕方ない」
「洋介さん、それは違います」
「違わないよ。いいんだ、俺は。ありがとな坂本、こんな願いを叶えてくれてさ」
坂本に好きだと言ったことはない。だけど、セックスできるかどうか聞いただけでここまでやってしまう男に告げない方がいいだろう。
身動いだ拍子に手錠がカシャリとなった。
坂本はその音に一瞬ハッとした顔をした。
「違うんです! 洋介さん。俺は、あなたが望んだからこんなことをしたわけじゃありません! 俺は……俺は、洋介さんのことが好きなんです」
珍しく声を荒げた坂本にそう言われて一瞬勘違いしそうになった。そんな自分に苦笑した。
「俺も、坂本のことが好きだよ」
「違います! 俺のは、俺の好きは恋愛感情です」
一瞬思考停止して応えた。
「……は? だってお前、今まで散々女と付き合ってきただろ」
「全て体だけの関係です。交際していたわけではありません」
「今そういうことを聞いているんじゃなくて、坂本のセックスの相手はいつだって女だっただろ」
「はい。でも好きになったのは洋介さんだけです。めちゃくちゃに抱き潰したいと思うのも、骨の髄まで甘やかしたいと願うのも。そうでなければ、いくら恩人の息子でもわざわざ隣の部屋に住んで世話しようだなんて思いません」
「……本当に? 本当に俺のことが好きなのか?」
「俺は、洋介さんだけを愛しています」
その瞬間、俺は涙が溢れ出した。
「俺も……坂本のことがずっと前から好きだった。あ、あ……愛してる」
坂本は俺を強く抱き寄せて、優しいキスをした。
俺が電話をかけたのは、俺のお目付役である坂本健一。俺が物心ついた時には恋をしていた。
『……わかりました。どこにいらっしゃいますか』
電話口の坂本の声にさえ嬉しくなってしまうほどに好きだ。
「えーとねー、新宿のー、エクストラって店ー」
『承知しました。20分ほどで到着すると思います』
電話口で女の喘ぎ声がかすかに聞こえた。
「なにー、お前、また女連れ込んでんの? いいけどさ。お取り込み中に悪かったな。適当に泊まるからやっぱ迎えはいいや。」
不毛だ。
電話を切った俺は頭を抱えた。
坂本は、俺が5歳、坂本が10歳の時に俺の父親に拾われた。坂本の両親は父親の部下だったらしいが、借金を抱えて坂本を残して蒸発したらしい。
俺の父は、古くからある旅館の次男坊で今は東京で大きな会社を経営している。母はパワフルな人で世界中を飛び回って仕事をしている。両親とも忙しいので俺は父の実家である旅館に小さい頃から預けられていて、坂本もそこに一緒に住んでいた。
思えば、両親がそばにいない俺を一番に甘やかしてくれたのが坂本だったから好きになったのかもしれない。祖父も祖母も俺を甘やかしてくれたけど、旅館の仕事で朝から晩まで働いていたし、俺の世話係を自らかってでた坂本に両親も、祖父も、祖母も、そして俺も甘えきっていた。何が楽しいんだか22歳で父の会社で働き始めた俺のことをいまだに世話している。女は途切れることのないルックスだし、実際しょっちゅう女の匂いをさせている。
「……不毛だ」
先ほど思ったことをもう一度吐き出す。
「結構飲んでるね、隣いい?」
遊んでそうな顔の男だな。けど、体格とか雰囲気とかちょっとあいつに似てるかも。なんて。
「いいよ」
「名前、聞いてもいい?」
「志波洋介」
「それで、何が不毛なの?」
「聞いてたんだ」
「聞こえちゃっただけだよ」
男はにこやかに答えて続けた。
「それで?」
「別に、よくある話。ノンケの男に片思いしてんの」
俺は目の前の名前も知らない男に自分の片思いの愚痴を吐いていた。話しやすい男だった。遊んでる男ってのはやっぱ聞き上手なのかね。それでも彼はチャラそうな見た目とは裏腹に真剣に俺の話を聞いてくれた。
「……はぁ。話したらちょっとスッキリしたかも。ありがとう」
「いいよ、いいよ。俺しょっちゅうこの店に入り浸ってるから、また話したくなったらおいでよ」
あと、これ俺の連絡先。と彼は名刺にラインのIDを書いて渡してきた。
「相馬健っていうんですね……」
「聞いといて俺の名前言ってなかったね。ごめん、どう呼んでくれてもいいよ」
「じゃあ、相馬さんて呼びます」
相馬さんはふと考える顔をして俺に顔を寄せてきた。
「……やっぱりたけるってよんで?」
「ちょっと耳元でささやくなよ!」
「っぷ」
「ははっ」
あー。楽しいな。こいつが坂本だったらいいのに。などと失礼なことを考えてしまう。
「あ、俺もう終電。じゃあまた今度」
そう言うと相馬さんは慌ただしく会計をして、じゃあ、連絡待ってるから! と言い残して帰って行った。
俺も、そろそろ満喫でもいくか。
「あー、よかった。まだ居たんですね。お迎えにあがりました」
俺が腰を上げて帰ろうとした時、坂本が店内に入ってきた。
「え、お前どうして。女どうした? 迎えはいいって言っただろ」
俺がそう言うと坂本は何ともない声で答えた。
「ちゃんと送って行きましたよ? 洋介さんが俺を呼んだんじゃないですか」
その声は急に呼び出したことを怒るでもなくむしろ優しい声だった。
「え、だから俺、やっぱいいって言っただろ」
「まぁ俺も、1回はそうかと思ったんですけど、洋介さんを1人でどこかに泊まらせるのは心配だったので迎えにきちゃいました」
どこまでも優しい。女より俺を優先する。期待してしまいそうになる。
「お前って本当、過保護だな。俺もう22だぞ」
「洋介さんは幾つになっても、俺の弟みたいなものです。洋介さんのお父様には大変お世話になりましたし、恩返しがしたいんですよ。俺にできることがあれば何だってしたいんです」
いつまで経っても弟呼ばわりにチクリ、と胸が痛くなる。
「まじめだなぁ。もう恩はとっくに返し終わってお釣りがくるくらいだぞ。17年間も俺のお世話してたんだから」
俺がそう言っても坂本は、爽やかな笑顔のまま、まだまだ全然たりません。と答えた。
坂本が、俺の父親に対して恩を返したいと思っている間は、俺は坂本の近くにいられる。坂本がいくら女を抱いても、俺を優先してくれる。
「……すきだ……」
「え? 何か言いました?」
俺が小さく呟いた声は、坂本には届かない。
「お前って、運転うまいよな」
坂本が運転する車の助手席で俺は呟いた。
「え? なんです? 突然」
「いや、なんつーか、信号で止まる時とかもスーって感じじゃん。全然体に負担がかからないって言うか」
「あー。洋介さんや洋介さんのご家族を乗せる機会がたくさんあると思ったんでかなり練習しました」
「お前って俺の家族に対して変態的だな」
「え、はは。そうですか?」
「そこ、ハニカムとこじゃねーし」
俺がそう言うと、すみません。と言いつつ微笑みを絶やさない。坂本は割とどんなことがあっても笑っている。こいつの怒ったところを見たことがない。坂本と初めて会った時からずっとだ。
「さ、着きましたよ。じゃあ俺、車置いてくるんで先に帰っててくださいね」
坂本はそう言うと、俺をおろして駐車場に入って行った。
俺と坂本は、同じマンションの隣同士の部屋に住んでいる。これは坂本の希望だ。いつでも俺の世話ができるようにと。だから坂本は俺の部屋の鍵まで持っている。
坂本は俺の家族に対してかなり盲信的だ。父が頼んだ仕事もすぐに片付けるし、母が日本に帰国している間、進んで荷物持ちに出かけていく。俺が呼んでもすぐに飛んでくる。
ーー俺は一生かけて志波家に恩を返したいんです。
以前、何かやりたいことないの? と聞いた時に坂本が言っていた言葉だ。というか坂本は事あるごとにこの言葉を言う。坂本は多分、志波家の人間が死ねと言ったら笑顔で死ぬ気がする。それが俺にはとても怖い。
俺が、女と会うなと言ったら坂本は多分、本当に女と会わなくなる。
だから、俺が坂本のことを好きだと言ったら、付き合ってくれと言ったら、坂本は俺のことを恋愛対象として見てなくても俺に好きだと……愛してると言って、俺とそういうことをしてしまう。だから、言えない。一生このままの関係でいい、そう思っていたのに。
俺はその日、坂本とバーで酒を飲んでいた。
俺は坂本と飲んでいるという事実に興奮して、勝手にデートだと思ったりしてそれはもう楽しんでいた。だからかなり飲み過ぎてしまった。
べろんべろんに酔っ払った俺は坂本に肩を貸してもらいながら何とかタクシーに乗って俺の部屋まで運ばれた。
「こんなに酔っ払ってしまって……。すみません。途中で止めればよかったですね」
坂本はベットで横になっている俺の服を脱がせながら、水飲めますか? 先に水持ってきますね。と脱がされ途中の俺を置いて水を持ってきてくれた。俺が水を飲むとコップを受け取り、近くの棚に置いてまた俺を脱がせにかかる。もちろんパジャマに着替えさせるためだ。そんなことは分かっているけど坂本に脱がされているという状況で少し前の方が反応してしまった。
「俺、自分で着替えるから、もういいよ」
俺は、反応していることに気づかれる前に、坂本から離れようと声をかけたが、いいから寝ててくださいと返されてどうしようもなくなる。そのまま上半身を脱がせ終わった坂本は、ズボンに手をかけて動きを止めた。
「すみません、そういうことでしたか」
俺が恥ずかしすぎて無言でいると坂本は俺の目の当たりにタオルをかけた。
「好きな子でも、想像してください」
そういうと、坂本は俺のズボンとパンツを一気に脱がせて俺の緩く立ち上がってしまったそれを咥えてしまった。
「んっ、何やってんだ。いいよ、そんなことしなくて」
俺がそう言っても坂本は無言で舐めてくる。何で何も言わないんだ、あれか? 好きな子ってのを想像しやすいようにか?
「あっ、んぁ……ふ」
なんかこいつ、うまくねえ?
俺も22歳だ。経験がないわけじゃない。けど坂本は今まで体験したことないくらいうまい気がする。好きな相手だからってのがあるかもしれない。
「あぁ、ひ、いぁ……」
部屋には俺の声とぴちゃぴちゃという卑猥な音が響いている。
「あ、いくっ、口、離せっ」
坂本は一向に口を離さない。
「おぃ、あぁ、はぅ、はやく、ん、はなせ、え、ああっ!」
耐えきれずに坂本の口に出してしまった。目元のタオルをどかすと、坂本はいつもの笑顔だった。
「おま、もしかして、飲んだ?」
坂本はそれには答えずに、部屋を出て、すぐにタオルとお湯を持ってきて俺を拭う。俺は、疲れて意識を手放してしまった。
「おはようございます」
「……おはよう」
朝起きたら、気まずい俺をよそに坂本はいつもの笑顔で挨拶してきた。
そうか、確かに女を取っ替え引っ替えしている坂本にしたら何でもないことだろうな。まぁ相手が男ってのは何でもないかはわからないけど。もしかして、体だけならいいんじゃないのか? 俺は昨日のことを激しく後悔しているくせに全く逆のことも頭で考えてしまう。坂本がもし俺を抱けるんだったら、体だけだったら、坂本を縛ることもないし許されるんじゃないだろうか。
「どうかしました?」
坂本は、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「いっいや! 何でもない!」
「そうですか、ご飯できていますよ。食べていかれますよね」
「食べる、あ、ありがとう」
どこかぎこちなくなる俺の口調をさして気にする様子もなく朝ごはんを机に運んできてくれた。今日は、俺も坂本も休みだからゆっくりした時間が流れている。
「今日はどこかに出かけますか?」
「いや、俺はどこにも。坂本は?」
「俺も今日は予定がありません」
にこやかにそう答えた坂本に俺はつい聞いてしまった。
「あの……さ、坂本って男とやったことあんの?」
「いいえ、女性としかしたことはないです」
笑顔を絶やさず答える坂本に俺は緊張しながら続ける。
「えっと、さ……そのー」
「なんです? 随分と歯切れが悪いですね」
「えっと、俺のこと、抱ける?」
声がだんだんと小さくなってしまう。
「え?」
さっきまでいつもの微笑みを浮かべていた坂本の顔は明らかに引きつっていた。
「冗談だよ! 本気にすんなって。昨日の仕返し。なんつってな。じゃあ俺、自分の部屋帰るわ! ごちそうさま!」
そう捲し立てて、俺は自分の部屋までダッシュで戻った。
坂本、何も言わなかったな。まぁそうか、普通女しか抱けねーよな。いや、これで良かったんだ。坂本がいやいや俺を抱くことなんてない。そういうのは嫌だってずっと思ってたじゃねーか。
俺はスマホの画面を見る。
1人でいたくねーし。
ーー今日会えない?
相馬さんにラインを送る。すぐに既読がついた。
「既読つくのはや」
ーーもちろん。この前の店でいい?
ーーうん
18時、店が開店と同時に俺たちは席につく。
「で? 何かあったの?」
席につくなり相馬さんは聞いてくる。
俺は昨日あったことから今日の朝のことまでかいつまんで話した。
「なるほどね。随分思い切ったね」
「俺も言うつもりはなかったんだけどさ、つい、もしかしてセックスだけならいけんじゃねーかなって思ってしまって」
「まぁ、フェラされたらその先もいけるかなと思うわな」
「だろー? でもあいつは悪くないんだ。あいつは俺や俺の家族に対して何でも尽くしたがるから」
「洋介の親父さんが恩人なんだったっけ?」
「そう、だから多分恩人の息子が困ってたから抜いてやったくらいに思ってたら、調子に乗った俺に、俺のこと抱けるかなんて聞かれてドン引きしたんだと思う」
「いくら恩人の息子でもノンケの男がフェラするのは結構勇気がいることだと思うよ」
相馬さんは優しそうな笑顔でそう言ってくれた。やっぱりどことなく雰囲気が坂本に似ている。
「あいつは、志波家の人間が死ねって言ったら笑顔で死のうとする男だよ。実際そんなこと言ったことないから分からないけど」
目の前のグラスについたしずくを指でなでながら続ける。
「だから、俺はあいつにそんなこと言ったらいけなかった。多分あのままあの部屋にいたらあいつは俺のことを抱いたと思うから」
好きな男と、気持ちのないセックスなんて虚しいだけだろ。と付け加える。相馬さんは持っていたグラスを静かに置くと俺の方へ体ごと向いた。
「じゃあ、好きじゃない男と気持ちのないセックス、する?」
相馬さんは、いつもの笑顔ではなくいたってまじめな顔をしながら聞いてくる。
「ふふ、付け込むのがうまいね。いいよ」
そう俺が言った後すぐ後ろから、「ダメです」と聞こえた。振り返ると坂本が怒った顔で立っていた。
「うぇ!? 坂本? なんでここにいんの」
俺の問いかけはまるっと無視して坂本はカウンターにお金を置き俺の腕を掴んだ。
「帰りますよ」
そのまま俺の腕を引っ張っていこうとする。
「いや、俺、相馬さんと……」
「なんです?」
「いえ、何でもありません」
鬼の形相の坂本に俺は何も言えなくなる。坂本の怒った顔初めて見た。
「相馬さん! ごめん。また今度!」
俺が相馬さんに言うと相馬さんは笑顔で手を振ってくれた。だけど、坂本は今度はありません! と怖い顔で言ってくる。
坂本は車に俺を押し込むと運転席側に回って車に入ってきた。
「帰るのか?」
「いやですか」
坂本は、いつもの笑顔じゃない。まだ怒った顔をしている。
「お前、何怒ってんの?」
坂本は無言で苛立たしげにタバコを出して一息すう。
「……わかりませんか」
「は? え、なにが?」
ゆっくり車を発進させる。
「家が嫌だと言うならラブホにでも行きますか」
坂本から発せられた言葉が理解できない。ひどく冷たい声だ。なんだ? ラブホ?
あぁそうか。そういうことか。俺の願い通りに俺のことを抱いてやろうと思ってんのか。
あぁなんてことだ。体だけでもと思ったけど、実際本当にそうなったらなんて胸が痛むんだ。
あんなことを言わなければ良かった。つい、なんて言い訳にしかならない。俺は、ゲイで何人かとセックスしたこともあるけど、坂本は違う。坂本は俺や俺の家族が望むことは何でも叶えようとしてしまう。坂本のそんなところを俺は利用してしまうのか。俺を抱いた後、坂本が傷つくんじゃないのか。だめだ。そんなことはだめだ。
「おい、車止めろ、俺はさっきの店に戻る」
「だめです」
「おい、坂本、車を止めろ。言うことを聞け」
「……あんまり、うるさくすると口を塞ぎますよ」
坂本の普段聞かない、ひどく冷酷な低い声に俺はそれ以上口を開けなかった。
それからしばらく無言で車に乗っていた。いつも乗っているはずの車なのに今はひどく心地悪く感じだ。坂本がタバコを何本吸ったか数えきれなくなった頃、着きましたよ。と言われあたりを見渡す。森の中にある家の前にいた。何戸か同じ家が建っているようだ。
「ここは?」
「コテージです。今はオフシーズンなんで俺たちしかいないようですね」
「……俺、帰る、っむ、んー」
俺が言い切らないうちに俺の口を坂本の口に塞がれる。
「んー、んっは、ん、む」
その激しすぎるキスにだんだんと体に力が入らなくなってくる。坂本はゆっくり口を離すと俺の顔を見て、フッと笑った。その冷たい顔にゾクリと体が反応する。
「さぁ、車を降りてください」
そう言うと、坂本は運転席から降りて助手席の方までゆっくりと周りドアを開けた。しばらく動けないでいると坂本は俺の耳に顔を寄せて「もしかして無理矢理がいいんですか?」と聞いてきた。俺が慌てて首を振ると坂本は冷たい目で俺を見た。
「じゃあ早く降りた方がいいですよ」
俺はなぜか怒っているらしい坂本をさらに怒らせないように慌てて車から降りた。
「坂本、ちょっと待って!」
車から降りると右手を掴まれてグイグイとコテージの方まで引っ張られた。
ドアを開け中に入るとオフシーズンで人の出入りが少ないからなのか少しだけかび臭さを感じた。
「脱いでください」
「は?」
「服……セックスするのに邪魔でしょう」
「そのことは、もういいんだって。冗談だって言っただろ」
「冗談? 生憎俺にはそんな冗談は通じません。無理矢理やられたくないなら早く脱いだ方がいい」
坂本の目は本気だった。
「何泣いてるんです? 泣きたいのはこっちなんですが」
「……ないて、ない」
「泣いてるじゃないですか。ほら」
そう言って坂本は親指の腹で俺の目尻を拭った。
「そんなに俺とするのが嫌ですか。あなたから誘ったくせに」
「俺は……俺は……そうだ。坂本とはやりたくない。朝のは昨日の仕返しだったんだ。ほら、昨日あんなことしたのにさ、動揺してるの俺だけだったし」
坂本が俺なんかを抱かずに済むようにそう言った。
「そうですか」
坂本は先ほどまでと何も変わらないトーンで言った。
そして玄関に置かれていたリュックのところまで行くと中から何かを出した。暗がりでこちらに近づくまで全く見えなかったが手錠のように見える。
「な、なんでそんなもん持ってんの……?」
「先ほど購入してきました。朝のあなたのあの様子じゃ、もしかしたら必要になるかと思いまして。できれば使いたくは無かったのですが」
「じゃ、じゃあ使わなきゃいいんじゃないかな」
「でも、あなたが俺とはやりたくないと言ったので」
「ごめん、話がよく分からないんだけど」
「分からなくても良いんですよ。あなたは今から無理矢理俺にやられるというだけのことですから。分かっても分からなくても結果は変わりません」
「なんで……。俺、冗談だったって言ってるのに」
「俺も言いましたよね。俺にはそんな冗談は通じません」
「坂本は女が好きなんだよな……?」
「ええ。今まで付き合った人も全員女でした」
確認して、俺は安心した。申し訳ないけど随分とやる気満々になって俺を抱いてくれようとしているらしいが、抱けるはずがない。
俺は自分で言うのもなんだが男らしい見た目の方だ。義務感で俺に対して勃つなら世の中に精力剤なんていらねーんだよ。
坂本は安心した俺の顔を見て少し不快そうな顔をした。俺は坂本のそんな表情も初めてみた。
「何、ほっとした顔をしてるんです? ああ、大体分かりますよ。どうせ俺に勃つわけないと思いましたね? 残念でしたね」
そう言いながら坂本は俺の手をつかんで自分の股にあてがった。
「なんか飲んだ?」
「いいえ」
動揺でびっくりするくらい失礼な発言をした気がする。
「さあ、もうおしゃべりは良いですから自分で脱ぐのか俺に脱がされるのか決めてください」
俺は何も言わなかった。この後に及んでまだ坂本が冗談ですと言うのを期待している。
だって坂本が俺の嫌がることをするはずがない。
だが坂本は無言でいる俺をみて小さくため息をつくと持っていた手錠を使って俺を後ろ手に拘束した。
俺の抵抗など全く意に介さずに簡単に拘束されて俺は半ば放心状態になった。
「どうしたんです? もう抵抗はやめたんですか?」
坂本は俺のシャツをカッターで裂きながら聞いた。
その次にベルトのバックルを外してズボンからベルトを抜き取った。
「や、めろって!」
どれだけ抵抗しても、何の意味もないというように、俺は簡単に裸にされた。
服を全てきっちりと着ている坂本に対して、全裸で拘束されている俺。思い出したように恥ずかしくなった。
坂本は俺を横抱きにするとそのまま奥の部屋まで歩いて行き扉を開けた。
そこにはシングルの簡易的なベットが置いてあった。
坂本は一旦、俺を手錠から解放し、だがすぐにベットの柵に手錠を通してベッドに俺を拘束した。
坂本は一旦外に出て行って戻ってきた時には棒の両端に拘束ベルトがついたようなものを持っていた。
坂本はそれを俺の足に取り付けて、俺は足を開いた状態で拘束された。
「おい、マジで、やめてくれ。お願いだ。頼む坂本。こんなのお互いのためにならねぇよ。本当に、謝るから!」
坂本はそんな俺の言葉にも反応せずに、ただただ冷たい目で俺を見下ろした。
「口を開けてください」
「……いった!!」
口を開けない俺の頬を強くつねった。
「さぁ、口を開けてください」
尚も冷たい目で見下ろしてくる坂本が恐ろしく、俺はおとなしく口を開けた。
そこに穴の開いた器具を取り付けられた。
口を閉じられなくする器具らしい。その両橋についた紐を頭に回されて固定された。
「ああ、可愛いですよ。洋介さん」
口を閉じられず、足を思い切り開いた状態で拘束された俺をみて、可愛いと感じるのはおかしい。
俺が抵抗しなければ、俺は坂本とちゃんとセックスできたのだろうか。
「あ、あ、あ」
(これを解いてくれ、もう抵抗しないから)
だけどもうそう頼むことはできない。
まともな言葉が発せられない俺を、坂本はいつもの、あの微笑みでみている。
坂本はゆっくりとした動作で上着を脱いだ。ほどよく鍛えられた筋肉質な体。同じ男として嫉妬してしまうような綺麗な体に俺は目を逸らした。
今度はズボンを脱ぐようだ。目の端に映る坂本の動作がそう物語っている。しばらくして脱ぎ終わったのか坂本は近くの棚を開き中から液体の入ったものと大きな注射器のようなものを数個取り出した。
「さぁ、中を綺麗にしましょう」
「あ! あぁ!」
何をされるのか悟った俺は抵抗しようとした。
だが身動きが取れない俺に抵抗する方法もない。すぐに尻を掴まれて注射器を差し込まれた。
「あ、ああ! あああ」
俺の腰の下にはクッションを敷かれて、ちゃんと中に入っていくように腰を高くさせられた。
「もう1本分くらいいっときましょうか」
そう言って坂本は限界まで俺の体に液体を入れてやや三角形のようなディルドを液体が出てこないように最後に入れた。
お腹がぐるぐるとうるさい。腹痛でもう頭も回らなくなってきた。
その時、坂本は俺を抱えてベットから下ろした。
ベットの柵に拘束されたまま、俺はベットに体を預けるように跪いた。
(ああ、やっと出せる……)
だがそう期待した俺を嘲笑うように坂本は俺の口に自分の昂ったそれを突っ込んだ。
「ん゛あ゛ぁ」
喉から嫌な音が出る。
生理的な涙が出てくる。坂本は数回腰を動かした後、すぐに引き抜いた。
「きついですか?」
心底心配したような顔でそう問いかけてくる坂本に、俺は恐怖した。
誰がそのきつい目に合わせているんだ。だが拘束された口で坂本に向かってそう言うことはできない。
せめてもの抵抗に俺はキッと坂本を睨みつけた。
「睨みつける元気があるなら大丈夫ですね。さ、もうお腹も限界でしょう。出していいですよ」
坂本は俺の後ろに手を回して三角のディルドを抜き取った。
少し大きな音を立てて漏れたが、人間としてのプライドを捨てきれずギリギリのところで排泄を止めた。
「ん……」
苦悶の表情を浮かべる俺に坂本は微かに笑みを浮かべ、俺のアナルに自分の凶悪なでかさのそれをあてがった。
「!!」
坂本は抵抗しようとする俺の腰を掴み、ゆっくりと腰を進めてきた。
「……っ。ほらっ、全部入りましたよ」
坂本は俺を後ろから抱え込み緩やかに律動し、右手の人差し指と中指を俺の口に突っ込んできた。
口を閉じることができない俺はただただヨダレを垂らすだけだ。
律動の間にいまだ入ったままの浣腸液が漏れ出る音とお腹がぐるぐるとなる音、パンパンと乾いた音が部屋じゅうに響いている。
その時、坂本は突然俺の中から抜け出た。突然のことに俺は排泄を止めることができずに大きな破裂音と共に全て排出した。
全ての液が出終わると坂本はぐったりとする俺にもう一度挿入してきた。
「ああっ……」
脱力した俺はただ声を出すことしかできない。
坂本はそんな俺にお構いなしに、何かを探すように腰を回した。
坂本のそれがその一点に当たった瞬間、目の前を稲妻が走ったような衝撃があった。
坂本は俺の反応で気がついたのかそこばかりを上から押しつぶすように執拗に攻めてきた。
「ああっあ! あひゃ、あっああ、あああああぁあ、あ」
言葉にならない声を上げながら俺は絶頂した。
「……ふっ、……後ろだけでいけたんですか。っ、かわいいですね。っ、でも、俺はまだまだいけないので、っ、付き合って、もらいますよっ」
坂本は激しく律動しながらそう言った。
それから俺は朝になるまで犯され続けた。
朝起きると俺は坂本に後ろから抱きつかれながら寝ていた。
寝ていたと言うよりも気絶していたの方が近い。
猿轡は外されていたがお尻にはまだ異物感がある。
あれから何回中に出されたかも覚えていない。
中のものを今からでも外に掻き出さないと、お腹痛くなる。そうは思ってもいまだ手錠でベットの柵につながったままでどうすることもできない。
俺が少しだけ身じろぐと、すぐに後ろで起きた気配がした。
「んー」
坂本が唸りながら起き上がるのと同時にお尻に違和感が走る。
なぜいまだにお尻に違和感があったのか思い至って俺は勢いよく体勢を変えた。
ずるりと体からそれが抜ける感覚。
「あー、抜けちゃった」
坂本が間の抜けた声で言った。
「さ、か……もと、なんで」
渇きで喉がピリつくも、なんとかそれだけ言った。
坂本は無言で横の棚からペットボトルを取ってストローをさして俺の口元に差し出してきた。恐る恐る口をつけて飲んでみたが、特に変な味はしない。
俺は勢いよく飲んだ。
しばらくして坂本が口を開いた。
「申し訳ありません」
「……いや、俺が悪いんだ。坂本に頼めば必ず実行すると分かっていたのに。ごめん……本当に、ごめん。坂本は、俺と違ってノンケなのに。俺なんかと……あんなやり方になってしまうのは、仕方ない」
「洋介さん、それは違います」
「違わないよ。いいんだ、俺は。ありがとな坂本、こんな願いを叶えてくれてさ」
坂本に好きだと言ったことはない。だけど、セックスできるかどうか聞いただけでここまでやってしまう男に告げない方がいいだろう。
身動いだ拍子に手錠がカシャリとなった。
坂本はその音に一瞬ハッとした顔をした。
「違うんです! 洋介さん。俺は、あなたが望んだからこんなことをしたわけじゃありません! 俺は……俺は、洋介さんのことが好きなんです」
珍しく声を荒げた坂本にそう言われて一瞬勘違いしそうになった。そんな自分に苦笑した。
「俺も、坂本のことが好きだよ」
「違います! 俺のは、俺の好きは恋愛感情です」
一瞬思考停止して応えた。
「……は? だってお前、今まで散々女と付き合ってきただろ」
「全て体だけの関係です。交際していたわけではありません」
「今そういうことを聞いているんじゃなくて、坂本のセックスの相手はいつだって女だっただろ」
「はい。でも好きになったのは洋介さんだけです。めちゃくちゃに抱き潰したいと思うのも、骨の髄まで甘やかしたいと願うのも。そうでなければ、いくら恩人の息子でもわざわざ隣の部屋に住んで世話しようだなんて思いません」
「……本当に? 本当に俺のことが好きなのか?」
「俺は、洋介さんだけを愛しています」
その瞬間、俺は涙が溢れ出した。
「俺も……坂本のことがずっと前から好きだった。あ、あ……愛してる」
坂本は俺を強く抱き寄せて、優しいキスをした。
14
お気に入りに追加
106
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後のとこが好きです!二人とも可愛いです!
はー様
嬉しいコメントありがとうございます☺️