妖怪達の薬屋さん

いちみやりょう

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11 瘴気に覆われた街

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「あれ? もう戻ってきたの? お酒は?」
「あ~。切らしちまってたみたいだ」
「キオウって結構抜けてるよね」

ケイの問いかけに、後頭部をかきながら答えたキオウに、ケイは笑った。

「なくて困るもんじゃないでしょ? それより見てよ。俺らでこんなに作ったんだ」

ダンダーがえっへんと胸を張って指した先には、背糸カエル入りの偽水が既に10個ほど干されていた。

「おお、すげぇな。さすがだ」
「へへ。だろ~? ま、ケイの指導のおかげもあるけど」
「ダンダーの飲み込みが早いんだよ」

2人は目を合わせて なー? と笑い合った。

「お前ら、俺がいない間に随分と仲良しになったんだな」
「そうなんだよ! ダンダーって話すのが上手いんだ。僕が知らないことたくさん知ってて聞くのが楽しいんだよ!」
「そんなの、ケイだって俺が知らないこと教えてくれて、楽しいよ」

頬を染めて照れながら言うダンダーに、キオウは口元を引きつらせた。

(数刻の間に、別人みたいになってやがるな。素直なのはいいことだが)

「おいおい、俺はお邪魔虫か?」
「ふふ。キオウがお邪魔虫なわけないじゃん。ほら一緒に薬作ろ?」
「……おう」

そうして、3人で素材を集めたくさんの薬を作った。
1週間ほどで多くの薬が出来上がり、とりあえず街に戻り症状の重そうなものから薬を飲ませていくことになった。

「とは言っても、どうやって飲ませるかだよなぁ」
「正気を保ってないもんね」

街への道すがら話す。
けれど街へと近づくと3人はおかしなことに気がついた。

「なぁ、なんか、街の上黒くない?」

ダンダーがポツリとつぶやいた。

「やっぱお前もそう思う? ありゃあ瘴気に見えるが」
「僕も……そう思う」
「ってか、それにしか見えねぇよな」

街の上空は瘴気で覆われていた。
3人はそれから無言で街に向かっていたが、もう少しで街に着くと言う時になって、ダンダーがもう耐え切れないと言うように叫んだ。

「じいさん……じいさん!!」

ダンダーが瘴気で覆われた街に向かって走り出しその姿はすぐに瘴気に包まれた。

「あ、おい! ダンダー!」
「ダンダー!!」

キオウとケイは慌ててダンダーの後を追って街に入った。
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