妖怪達の薬屋さん

いちみやりょう

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9 見える薬

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「何か……いるの?」
「俺の同行者がいる。ケイってんだ。ケイも瘴気に当てられていた妖怪の1人で今は療養中と言ったところだな」
「な、なんで俺には見えないの」
「妖怪や霊が見える見えないってのは、人間が持つ霊力によるところが大きいが、波長なんかも関係している。大体の人間は生まれつき1つか2つの波長で生きていて、霊力が高いと生まれつき複数の波長を持っていることが多いといわれている。だから必然的に妖怪と波長が合いやすく見えやすくなるというわけだ。ケイが今、とっても弱っている状態にあるというのもあるが、少しも見えていないと言うことは、そもそもケイとダンダーの波長が合わないんだろう」
「……そっか。それは、何だか寂しいな。今までも俺が見えないだけで街にももっといたのかな」
「そうかもしれないな」
「あのさ。さっきの話だけど、俺が召喚とかしなければ瘴気がここまで蔓延することはなかったってことだよね。それって俺のせいってことだよね」

ダンダーが今にも泣きそうな顔で呟いた。

「ちげぇよ。そんなことをお前にやらせた、その陰陽師が悪いに決まってる。気に病む必要はない」
「でも、俺が余計なことをしなければ」
「陰陽師には厳格にいろいろな決まりがある。今回のこともその規約に違反した行為だ。お前は被害者みたいなもんだ。だが、気になるってんなら、俺の仕事を手伝ってくれよ」

ダンダーは少し思案した後恐る恐るといった様子で言葉を発した。

「妖怪退治……?」
「ははっ。ちげぇよ。俺がシオさんから受けた依頼はこうだ。『この街で起こっている異変を解決してください』。つまり妖怪を退治するわけじゃねぇ」
「じゃあ、どうするの?」
「俺の仕事をよく思い出せ。知ってんだろう?」
「えっと、薬屋……?」
「そう。俺は薬屋さんだからな。瘴気を抑える薬を作るんだ。っつってもこの街で一体どれだけの妖怪が瘴気に犯されてるか分からねぇが、とにかくたくさん作んなきゃいけねぇことだけは分かってる。人手はあるだけいい」
「それで、本当に妖怪達は治るの?」
「当然だろ?」
「分かった。俺、手伝う」
「おし。じゃあ初めっか」

高らかに宣言したキオウと、ダンダーとケイの薬作りは始まった。
偽水も背糸カエルも森で採るのが早いため、街から一番近いところにある森で作業を行うことになった。一番近いと言っても森までは片道で2時間だ。

キオウはシオにダンダーの外泊の許可を取り、3人で森へと向かった。

「あ、やべ。酒忘れちまった」

キオウは森へ向かう途中スキットルから酒を飲もうとしたときに、それが残り少なくなっていることに気がついた。

「酒ぇ~? そんなの要らないじゃん」

ケイが目を細め文句を言うが、キオウにとったらあの酒がないことは死活問題だ。

「いるんだよ。悪い、2人で先に行っててもらえるか? あー、って言っても見えねぇんじゃ、意思表示もできなくて面倒くせえか。ダンダー、これを飲んでくれ。1日くらいならケイが見えるようになるはずだ」

キオウはそう言って薬箱の中から1包薬を取り出してダンダーに渡した。

「これを飲んだら……、見えるように」

ダンダーはごくりと唾を飲んで、竹でできた水筒を開けその薬を水で一気に飲み込んだ。

「僕が見えるようになった?」

ケイがふふんと胸を張った。

「何でケイが得意げなんだ」

「見える……本当に、いたんだ」

ケイを視認したダンダーは驚きと喜びの声をあげた。
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