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先生をメロメロにする作戦を始めてからもうすぐ1ヶ月。
今日はついに先生の友人の結婚式へ行くためのフライトの日だった。

俺たちにとっては、一緒に暮らし始めた日が記念日だから、来年のその日に籍を入れようということで、今はまだ籍も入れていないし、番にもなっていないけれど新婚旅行も兼ねているので荷物はかなり多い。大きなキャリーバッグを1つずつと、ボストンバッグを1つずつを搭乗手続きの際に預けて、身軽になってから、空港内のお土産屋さんや、食事処を見て回ったり、飛び立つ飛行機を見たりして、俺たちはまだ飛行機にも乗っていないのにかなり楽しんだ。
どこで食事を摂ろうかとワクワクしながら見て回ったと言うのに、結局は歩くのに疲れてしまって、うどんのチェーン店で食べることになった。

「お友達ってお見合い結婚? オメガは大体旧家に生まれるって聞くし」

目の前の割端入れから2膳取って、1つを先生に渡す。

「ん? あー。あいつらは見合いじゃないな。俺たちみたいに恋愛結婚だ」

先生は俺を揶揄うようにニタリと笑った。

「そ、そうなんだ」
「まぁ、あいつらはちと特殊で、俺も事情は最近になって聞いたんだが……2人は、ずっと昔からお互いを想い合ってた、まさしく運命ってやつなんだよ」
「運命!? あの!?」

俺はびっくりして聞き返した。
だって、アルファとオメガの運命と言えば御伽噺のような話だ。
そもそもが数が少ない上に、日本のオメガはほとんど旧家で生まれ、家から出る事も極端に少ないと聞くし、一般家庭に生まれた俺や翔太みたいなオメガは、隠れるように生活するから、運命と出会うなんて、砂浜から砂糖粒を見つけるくらいありえない話だ。

「運命って言ってもアルファ側……四宮というんだが、四宮は最初のうち運命の番である千秋の匂いを嗅ぎ分けることが出来なかったし、いろいろ紆余曲折があったみたいだが、やっと式を挙げられるってんで2人とも張り切ってるみたいだ」
「へぇ~。運命って言ってもすぐにくっついた訳じゃないんだね」
「そうだな。ところで俺たちはいつ挙げようか?」

携帯どこ置いたっけ? みたいな軽い言い方で言われたので、頭が理解するのに時間がかかった。

「え?」
「結婚式」
「や、でも俺、呼べる人ほとんどいないし」
「そんなの、今回行く結婚式だってそうだろ。主役2人と2歳になる息子と、それぞれの両親と俺たちと使用人とかそんくらいだぞ?」
「でも、俺は籍入れてくれるだけで十分だし」
「そうか。ま、四宮と千秋の式を見てから決めてもいいかもな」

先生はいつも俺の意見を尊重してくれようとする。
過保護スイッチが入っている時は、俺の意見を聞き入れてくれない時もあるけれど、基本的には俺の思う通りにやらせてくれるのだ。

そうして、現地に到着して、俺たちは四宮さんと千秋さんの結婚式に参列した。

四宮さんはとってもかっこいい男性で、千秋さんははかなげな美人だ。
お揃いの真っ白なスーツに身を包んでいるはずの2人は、どちらも素敵だけど見た目で与える印象がだいぶ違うのが面白い。
2人は大変なことがあったなんて思わせないほど笑顔で心の底から幸せそうだった。
そして、スーツを身に纏った小さな2歳の男の子がリングボーイを立派に勤め上げていた。
四宮さんによく似たご夫婦と、千秋さんにあまり似ていないご夫婦。
けれど、どちらのご両親も自分の息子たちの晴れ姿を心の底から祝福しているのが、その表情から分かって、涙ぐむ姿なんか見たら、こっちまで涙が出そうになるほど、なんだか分からないけどとにかく胸にこみ上げてくるものがあった。

自分たちの結婚が誰かに祝福されるのは、とても幸せなことなのだろうと、2人の結婚式を見て思った。
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