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「あ、俺……寝ちゃってた」
「もう少し寝てろ」
「今何時?」
「20時。もう少し寝て、それから買ってきたものでお祝いしような」
「ん」
先生に促されるまままた眠って、起きたら21時を過ぎた頃だった。
先生に抱きしめられるのは、幸せすぎてあっという間に時間が経ってしまう。
「起きたか。腹減ったな?」
「うん」
「じゃあとりあえず服を着るか。座って待ってろ」
先生はそう言うとタンスから出したシャツとデニムをさっさと身につけ、俺の服を持って来た。
「ありがとう」
礼を言って受け取ろうとしたけど先生はそれをかわして、俺に服を渡してくれない。
「先生?」
「俺がやる」
「え? あ、ちょっと」
持ってきたシャツを俺に身に纏わせて、先生が前のボタンをつけ始めた。
先生は俺の抵抗など簡単にいなし、真剣な表情でボタンをとめている。
先生の隠れステータスである心配性が暴れ出した証拠だ。
俺は仕方なくされるがままに服を着させてもらった。
それから先生が買ってくれたシャンパンで乾杯して、チョコやお惣菜を食べた。
俺の歯磨きをしたいという先生とまた一悶着してから、そこは固辞して自分で歯磨きをして風呂も済ませると、こっちは譲れないからと髪の毛を乾かしてくれた。
歯磨きは恥ずかしすぎるから嫌だけど、先生の手は心地良いから、髪を乾かしてもらうのは好きだ。
先生の過保護は際限を知らない。
どこまでも世話を焼こうとするし、今や粗暴な態度を見せもしない。
それがとても嬉しいし、先生と付き合えていることはありがたいけど、不安だった。
「先生」
「ん? なんだ」
先ほど少し寝たから2人ともすぐには寝付けずに、布団の中でくっつきあっていたから、先生の声の振動が胸から伝わってくる。
「俺、先生のこと好きだよ」
「俺も静が好きだ」
「うん、ありがとう」
でも。
でもさ、先生。
先生はそう言ってくれるけど、神楽坂先生のことが好きだったんじゃないの。
なんで急に俺を好きって言えるの。
どれだけ先生が俺を好きだって言ってくれたって俺の不安は消えないんだよ。
だって。
今日俺は先生と初めてセックスをした。
先生は優しく扱ってくれて俺は気持ち良かったけど。
先生は俺のうなじを噛まなかった。
俺を先生のものにしてくれなかった。
こんなの我儘だって分かってるけど、俺は先生のものになりたいよ。
しばらくして先生の寝息が聞こえ始めた。
先生は仕事もして、俺の世話をやいているから、相当疲れているんだろう。
先生を労いたい。先生の疲れを癒したい。
けど、俺にそんなことできるはずない。
何も痛みのないうなじに手を当てて、俺は深く息を吐いた。
「もう少し寝てろ」
「今何時?」
「20時。もう少し寝て、それから買ってきたものでお祝いしような」
「ん」
先生に促されるまままた眠って、起きたら21時を過ぎた頃だった。
先生に抱きしめられるのは、幸せすぎてあっという間に時間が経ってしまう。
「起きたか。腹減ったな?」
「うん」
「じゃあとりあえず服を着るか。座って待ってろ」
先生はそう言うとタンスから出したシャツとデニムをさっさと身につけ、俺の服を持って来た。
「ありがとう」
礼を言って受け取ろうとしたけど先生はそれをかわして、俺に服を渡してくれない。
「先生?」
「俺がやる」
「え? あ、ちょっと」
持ってきたシャツを俺に身に纏わせて、先生が前のボタンをつけ始めた。
先生は俺の抵抗など簡単にいなし、真剣な表情でボタンをとめている。
先生の隠れステータスである心配性が暴れ出した証拠だ。
俺は仕方なくされるがままに服を着させてもらった。
それから先生が買ってくれたシャンパンで乾杯して、チョコやお惣菜を食べた。
俺の歯磨きをしたいという先生とまた一悶着してから、そこは固辞して自分で歯磨きをして風呂も済ませると、こっちは譲れないからと髪の毛を乾かしてくれた。
歯磨きは恥ずかしすぎるから嫌だけど、先生の手は心地良いから、髪を乾かしてもらうのは好きだ。
先生の過保護は際限を知らない。
どこまでも世話を焼こうとするし、今や粗暴な態度を見せもしない。
それがとても嬉しいし、先生と付き合えていることはありがたいけど、不安だった。
「先生」
「ん? なんだ」
先ほど少し寝たから2人ともすぐには寝付けずに、布団の中でくっつきあっていたから、先生の声の振動が胸から伝わってくる。
「俺、先生のこと好きだよ」
「俺も静が好きだ」
「うん、ありがとう」
でも。
でもさ、先生。
先生はそう言ってくれるけど、神楽坂先生のことが好きだったんじゃないの。
なんで急に俺を好きって言えるの。
どれだけ先生が俺を好きだって言ってくれたって俺の不安は消えないんだよ。
だって。
今日俺は先生と初めてセックスをした。
先生は優しく扱ってくれて俺は気持ち良かったけど。
先生は俺のうなじを噛まなかった。
俺を先生のものにしてくれなかった。
こんなの我儘だって分かってるけど、俺は先生のものになりたいよ。
しばらくして先生の寝息が聞こえ始めた。
先生は仕事もして、俺の世話をやいているから、相当疲れているんだろう。
先生を労いたい。先生の疲れを癒したい。
けど、俺にそんなことできるはずない。
何も痛みのないうなじに手を当てて、俺は深く息を吐いた。
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