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先生と暮らすようになってからも、月に1回は病院に通う。
今日はその日で、昼間のうちにも先生に会えるなんて俺的には最高の日だ。
先生は朝のうちにだるそうに出勤して行って、俺は昼過ぎにウキウキで家を出た。

「先生先生! 好き!」
「おい、病院では静かにしろって言ってんだろ」

看護師さんに診察室に呼ばれて、先生を見た途端テンションがバク上がりになった俺とは対照に先生はクールだ。

「あ……ごめん。先生、好き」
「分かったから」

先生はそう言っていつも通り俺に問診していった。

「俺、昼間も先生と会えるのめっちゃ嬉しくて、テンション上がっちゃった」
「夜も会ってんのに飽きねぇなぁ」
「そろそろ俺と付き合ってくれる気になった?」
「ねぇな」
「ちぇ」
「はい、じゃあ、結城 静さん。今日も異常ありませんね。お大事に」
「へへ。俺先生に名前呼ばれんの好き!」
「分かったから、ほら次の患者も待ってんだ。行った行った」

診察室から追い出され、会計を済ませた俺は、あの女性とすれ違った。
先生と関係している艶髪長髪キャリアウーマンの人。ネームプレートには佐藤 友里と書かれていた。佐藤さんは俺にお辞儀をして、俺もお辞儀を返したけれど、なんだか睨まれたような気がした。

帰り道を歩きながらなんで俺が睨まれんの!? と憤慨しながら帰りつくと、郵便ポストに俺宛の封筒が来ていた。

「誰だろ? 俺に手紙なんて送ってくる知り合い1人もいないけど」

部屋に持ち帰って、何の気なしに開けてみた。

「痛って!」

中からはカミソリが出てきた。
こんな古典的な嫌がらせするやついるのかよ……。
若干引きながらも、自分の血がついてしまった封筒の中身を確認して、同封されていた手紙を開いてみた。

『あなたのようなオメガが、そこに住んでいることは納得できません。あなたは嶺二さんの親切に甘えすぎなのではありませんか? ご自分がオメガであることを考えて、自分にもチャンスがあるかもとお思いかもしれませんが、そんなことはありえません。嶺二さんはオメガを憎んでいるはずですから。嶺二さんの優しさに甘えるのはやめて、早めにその部屋を出る事をお勧めいたします。こちらは身寄りのいないオメガなどどうすることも出来るのですから』

こわ。
こんなの脅しじゃん。
だけど書いてあることは正論だ。
まさしく正論すぎて心臓にナイフがグサグサと刺さって心が痛い……。

そして心と共に、結構深く切れてしまっていた人差し指の傷が痛かったので、軟膏を塗って絆創膏を貼った。
暗くなりそうな心を慌てて打ち消した。
何にもない俺が、さらに元気まで無くなったら流石に先生に追い出される。

今日は水仕事はしたくないので献立はパスタに変更だ。
具材はすでに切ってある缶詰類にして、パスタを茹でて……。
としている間に先生が帰宅した。

「先生! おかえり~! 好き好き!」
「はぁ……お前いつも元気だなぁ。ただいま」
「ご飯にする~? お風呂にする~? それともぉ」
「飯だ。腹が減った」
「りょーかい」

先生は帰ってくるといつも腹減ってるな。

それから、俺はおそらく手紙の主から、様々な嫌がらせをされた。
外に出ればいつの間にか服の裾を刃物で切られていたり、カミソリはあれ以降入っていないけれど不愉快な内容の手紙が送りつけられたりして疲弊した。

だから俺は先生に相談した。
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