6 / 45
6
しおりを挟む
先生と暮らすようになってからも、月に1回は病院に通う。
今日はその日で、昼間のうちにも先生に会えるなんて俺的には最高の日だ。
先生は朝のうちにだるそうに出勤して行って、俺は昼過ぎにウキウキで家を出た。
「先生先生! 好き!」
「おい、病院では静かにしろって言ってんだろ」
看護師さんに診察室に呼ばれて、先生を見た途端テンションがバク上がりになった俺とは対照に先生はクールだ。
「あ……ごめん。先生、好き」
「分かったから」
先生はそう言っていつも通り俺に問診していった。
「俺、昼間も先生と会えるのめっちゃ嬉しくて、テンション上がっちゃった」
「夜も会ってんのに飽きねぇなぁ」
「そろそろ俺と付き合ってくれる気になった?」
「ねぇな」
「ちぇ」
「はい、じゃあ、結城 静さん。今日も異常ありませんね。お大事に」
「へへ。俺先生に名前呼ばれんの好き!」
「分かったから、ほら次の患者も待ってんだ。行った行った」
診察室から追い出され、会計を済ませた俺は、あの女性とすれ違った。
先生と関係している艶髪長髪キャリアウーマンの人。ネームプレートには佐藤 友里と書かれていた。佐藤さんは俺にお辞儀をして、俺もお辞儀を返したけれど、なんだか睨まれたような気がした。
帰り道を歩きながらなんで俺が睨まれんの!? と憤慨しながら帰りつくと、郵便ポストに俺宛の封筒が来ていた。
「誰だろ? 俺に手紙なんて送ってくる知り合い1人もいないけど」
部屋に持ち帰って、何の気なしに開けてみた。
「痛って!」
中からはカミソリが出てきた。
こんな古典的な嫌がらせするやついるのかよ……。
若干引きながらも、自分の血がついてしまった封筒の中身を確認して、同封されていた手紙を開いてみた。
『あなたのようなオメガが、そこに住んでいることは納得できません。あなたは嶺二さんの親切に甘えすぎなのではありませんか? ご自分がオメガであることを考えて、自分にもチャンスがあるかもとお思いかもしれませんが、そんなことはありえません。嶺二さんはオメガを憎んでいるはずですから。嶺二さんの優しさに甘えるのはやめて、早めにその部屋を出る事をお勧めいたします。こちらは身寄りのいないオメガなどどうすることも出来るのですから』
こわ。
こんなの脅しじゃん。
だけど書いてあることは正論だ。
まさしく正論すぎて心臓にナイフがグサグサと刺さって心が痛い……。
そして心と共に、結構深く切れてしまっていた人差し指の傷が痛かったので、軟膏を塗って絆創膏を貼った。
暗くなりそうな心を慌てて打ち消した。
何にもない俺が、さらに元気まで無くなったら流石に先生に追い出される。
今日は水仕事はしたくないので献立はパスタに変更だ。
具材はすでに切ってある缶詰類にして、パスタを茹でて……。
としている間に先生が帰宅した。
「先生! おかえり~! 好き好き!」
「はぁ……お前いつも元気だなぁ。ただいま」
「ご飯にする~? お風呂にする~? それともぉ」
「飯だ。腹が減った」
「りょーかい」
先生は帰ってくるといつも腹減ってるな。
それから、俺はおそらく手紙の主から、様々な嫌がらせをされた。
外に出ればいつの間にか服の裾を刃物で切られていたり、カミソリはあれ以降入っていないけれど不愉快な内容の手紙が送りつけられたりして疲弊した。
だから俺は先生に相談した。
今日はその日で、昼間のうちにも先生に会えるなんて俺的には最高の日だ。
先生は朝のうちにだるそうに出勤して行って、俺は昼過ぎにウキウキで家を出た。
「先生先生! 好き!」
「おい、病院では静かにしろって言ってんだろ」
看護師さんに診察室に呼ばれて、先生を見た途端テンションがバク上がりになった俺とは対照に先生はクールだ。
「あ……ごめん。先生、好き」
「分かったから」
先生はそう言っていつも通り俺に問診していった。
「俺、昼間も先生と会えるのめっちゃ嬉しくて、テンション上がっちゃった」
「夜も会ってんのに飽きねぇなぁ」
「そろそろ俺と付き合ってくれる気になった?」
「ねぇな」
「ちぇ」
「はい、じゃあ、結城 静さん。今日も異常ありませんね。お大事に」
「へへ。俺先生に名前呼ばれんの好き!」
「分かったから、ほら次の患者も待ってんだ。行った行った」
診察室から追い出され、会計を済ませた俺は、あの女性とすれ違った。
先生と関係している艶髪長髪キャリアウーマンの人。ネームプレートには佐藤 友里と書かれていた。佐藤さんは俺にお辞儀をして、俺もお辞儀を返したけれど、なんだか睨まれたような気がした。
帰り道を歩きながらなんで俺が睨まれんの!? と憤慨しながら帰りつくと、郵便ポストに俺宛の封筒が来ていた。
「誰だろ? 俺に手紙なんて送ってくる知り合い1人もいないけど」
部屋に持ち帰って、何の気なしに開けてみた。
「痛って!」
中からはカミソリが出てきた。
こんな古典的な嫌がらせするやついるのかよ……。
若干引きながらも、自分の血がついてしまった封筒の中身を確認して、同封されていた手紙を開いてみた。
『あなたのようなオメガが、そこに住んでいることは納得できません。あなたは嶺二さんの親切に甘えすぎなのではありませんか? ご自分がオメガであることを考えて、自分にもチャンスがあるかもとお思いかもしれませんが、そんなことはありえません。嶺二さんはオメガを憎んでいるはずですから。嶺二さんの優しさに甘えるのはやめて、早めにその部屋を出る事をお勧めいたします。こちらは身寄りのいないオメガなどどうすることも出来るのですから』
こわ。
こんなの脅しじゃん。
だけど書いてあることは正論だ。
まさしく正論すぎて心臓にナイフがグサグサと刺さって心が痛い……。
そして心と共に、結構深く切れてしまっていた人差し指の傷が痛かったので、軟膏を塗って絆創膏を貼った。
暗くなりそうな心を慌てて打ち消した。
何にもない俺が、さらに元気まで無くなったら流石に先生に追い出される。
今日は水仕事はしたくないので献立はパスタに変更だ。
具材はすでに切ってある缶詰類にして、パスタを茹でて……。
としている間に先生が帰宅した。
「先生! おかえり~! 好き好き!」
「はぁ……お前いつも元気だなぁ。ただいま」
「ご飯にする~? お風呂にする~? それともぉ」
「飯だ。腹が減った」
「りょーかい」
先生は帰ってくるといつも腹減ってるな。
それから、俺はおそらく手紙の主から、様々な嫌がらせをされた。
外に出ればいつの間にか服の裾を刃物で切られていたり、カミソリはあれ以降入っていないけれど不愉快な内容の手紙が送りつけられたりして疲弊した。
だから俺は先生に相談した。
18
お気に入りに追加
611
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
恋をしたから終わりにしよう
夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人
毎日をテキトーに過ごしている大学生・相川悠と年上で社会人の佐倉湊人はセフレ関係
身体の相性が良いだけ
都合が良いだけ
ただそれだけ……の、はず。
* * * * *
完結しました!
読んでくださった皆様、本当にありがとうございます^ ^
Twitter↓
@rurunovel
好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった
碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。
壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。
白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。
壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。
男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。
だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。
ノンケ(?)攻め×女装健気受け。
三万文字程度で終わる短編です。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
君は俺の光
もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】
ヤンデレです。
受けが不憫です。
虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。
もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。
ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。
結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを―――――
明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。
篠突く雨の止むころに
楽川楽
BL
キーワード:『幼馴染』『過保護』『ライバル』
上記のキーワードを元に、美形×平凡好きを増やそう!!という勝手な思いを乗せたTwitter企画『#美平Only企画』の作品。
家族のいない大原壱の、唯一の支えである幼馴染、本宮光司に彼女ができた…?
他人の口からその事実を知ってしまった壱は、幼馴染離れをしようとするのだが。
みたいな話ですm(_ _)m
もっともっと美平が増えますように…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる