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「先生、先生っ!! 好きぃ」
「おい、うるせぇよ。病院だぞここは」
俺のアピールに全く動じないこの人は、この病院に週1日だけ来る第二性別科のお医者さんだ。
「えぇ~。だって先生が俺の気持ちに答えてくれないからじゃーん」
先ほどよりも声を落として先生に近づくと、先生は肩を落としてだるそうに息を吐いた。
俺は世にも珍しい、ベータの家庭に生まれたオメガだった。
大体のオメガは由緒正しい旧家に生まれる。
この世界はオメガに厳しい。
それも、一般家庭にオメガが生まれることはほとんどないから風当たりの厳しいオメガに対する制度もほとんど整っていない。声高に差別をなくそうと叫ぶヒューマニストだってオメガ差別を平気でする。そんな腐った世界だ。
生まれて早々、孤児院の前に捨てられていたらしい俺は、それからずっとこの病院に通わされていたし、勉強もここで教わった。
オメガなんて見下されて当たり前、馬鹿にされて当たり前。そんな事を言ってくる人しか周りにいなかった。
だけど、今目の前にいる先生は違った。
第二性別科のお医者さんだからなのか、俺みたいなオメガを見ても他の人と話すときと全く態度を変えたりしない。
第二性のトップに君臨するアルファで、イケメンで頭も良いくせに、先生は俺を見下したりしない。先生は誰に対しても粗暴な態度なのだ。
先生と初めて話した時は、初めて人間扱いをされたような気持ちだった。
だから俺は、雛鳥が初めて見たものを親だと思うように、俺を初めて人間にしてくれた先生に恋をした。
「先生先生っ、俺18歳になったら孤児院を追い出されるんだけど、そしたらさ、俺を雇ってよ! 俺家事できるし!」
「はぁ? てめぇの世話くらいてめぇでできるわ。アホ」
「で、でもでも、俺、オメガだし就職するの難しいんだよ。雇ってくれるところがないんだよ! ね? お願い!」
「行くとこねぇオメガを全員雇ってたら俺が破産すんだろ。はぁ、就職先は紹介してやっから」
「俺、先生んとこで働きたいんだ。お願い! なんでもするし! 先生に指1本触れないから! その紹介してくれるとこは、他のオメガに紹介してやってよ」
先生はなかなかうんとは言ってくれなかったけど先生の休憩中に、近くをちょこまかと動き回る俺が相当に邪魔だったのか、大きなため息をついたあと、了承してくれた。
「……わかったよ、うるせぇな。だが、あんまり散らかすなよ」
「散らかさないよ! むしろ片付けんのが俺の仕事だろ? 任してよ」
片付けようとして部屋を汚してしまう人がいるのは、漫画で見たことがある。
だけど、俺が実際そうだと思われているのなら心外だった。
「どうだかな……まぁ、期待しねぇでいるわ。んで、孤児院はいつ出なきゃならねぇんだ?」
「えっと、それがさ、来週の月曜日なんだけど」
「はぁ!? お前ぇそれもっと早く言えよ」
「だ、だってだって、先生がなかなか雇ってくれるって言ってくれないからじゃん!」
「……はぁ、分かった。じゃあ、とりあえず部屋見せとくから、夕方もっかいここに来い」
「わかった! ありがとう、先生」
「……ああ」
先生はまためんどくさそうに、頭をかいて診察室に戻って行った。
「おい、うるせぇよ。病院だぞここは」
俺のアピールに全く動じないこの人は、この病院に週1日だけ来る第二性別科のお医者さんだ。
「えぇ~。だって先生が俺の気持ちに答えてくれないからじゃーん」
先ほどよりも声を落として先生に近づくと、先生は肩を落としてだるそうに息を吐いた。
俺は世にも珍しい、ベータの家庭に生まれたオメガだった。
大体のオメガは由緒正しい旧家に生まれる。
この世界はオメガに厳しい。
それも、一般家庭にオメガが生まれることはほとんどないから風当たりの厳しいオメガに対する制度もほとんど整っていない。声高に差別をなくそうと叫ぶヒューマニストだってオメガ差別を平気でする。そんな腐った世界だ。
生まれて早々、孤児院の前に捨てられていたらしい俺は、それからずっとこの病院に通わされていたし、勉強もここで教わった。
オメガなんて見下されて当たり前、馬鹿にされて当たり前。そんな事を言ってくる人しか周りにいなかった。
だけど、今目の前にいる先生は違った。
第二性別科のお医者さんだからなのか、俺みたいなオメガを見ても他の人と話すときと全く態度を変えたりしない。
第二性のトップに君臨するアルファで、イケメンで頭も良いくせに、先生は俺を見下したりしない。先生は誰に対しても粗暴な態度なのだ。
先生と初めて話した時は、初めて人間扱いをされたような気持ちだった。
だから俺は、雛鳥が初めて見たものを親だと思うように、俺を初めて人間にしてくれた先生に恋をした。
「先生先生っ、俺18歳になったら孤児院を追い出されるんだけど、そしたらさ、俺を雇ってよ! 俺家事できるし!」
「はぁ? てめぇの世話くらいてめぇでできるわ。アホ」
「で、でもでも、俺、オメガだし就職するの難しいんだよ。雇ってくれるところがないんだよ! ね? お願い!」
「行くとこねぇオメガを全員雇ってたら俺が破産すんだろ。はぁ、就職先は紹介してやっから」
「俺、先生んとこで働きたいんだ。お願い! なんでもするし! 先生に指1本触れないから! その紹介してくれるとこは、他のオメガに紹介してやってよ」
先生はなかなかうんとは言ってくれなかったけど先生の休憩中に、近くをちょこまかと動き回る俺が相当に邪魔だったのか、大きなため息をついたあと、了承してくれた。
「……わかったよ、うるせぇな。だが、あんまり散らかすなよ」
「散らかさないよ! むしろ片付けんのが俺の仕事だろ? 任してよ」
片付けようとして部屋を汚してしまう人がいるのは、漫画で見たことがある。
だけど、俺が実際そうだと思われているのなら心外だった。
「どうだかな……まぁ、期待しねぇでいるわ。んで、孤児院はいつ出なきゃならねぇんだ?」
「えっと、それがさ、来週の月曜日なんだけど」
「はぁ!? お前ぇそれもっと早く言えよ」
「だ、だってだって、先生がなかなか雇ってくれるって言ってくれないからじゃん!」
「……はぁ、分かった。じゃあ、とりあえず部屋見せとくから、夕方もっかいここに来い」
「わかった! ありがとう、先生」
「……ああ」
先生はまためんどくさそうに、頭をかいて診察室に戻って行った。
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