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50 キャンプ場

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6人乗りの車は、話し合いの結果、助手席に俺、その後ろに東堂と省吾。一番後ろに森と天海という配置になった。他のメンバーには気づかれない程度だが、当然俺が助手席になったことで黒月さんの機嫌が良い。

「ゴールデンレトリバー!」
「バースデー」
「デート」

道中はしりとりが進んでいき、窓の外には普段見ない景色なんかも見られて楽しい。
しりとりなんて単純な遊びが、幾つになっても楽しいなんて不思議だと思う。
だけど、基本的にしりとりは誰かとするものだから楽しいのかもしれない。
思えば今まで誰かと暇な時間を共有するような、しりとりをするくらいの関係になったことなかった。

そして途中でスーパーに寄ってバーベキューの材料やインスタントコンロなどを購入してキャンプ場に到着した。

「はぁ~。長かったなぁ。まじ、先生に車出してもらえてラッキーだったな!」
「本当に、バスでこの長旅に耐えられたとは思えない」
「僕、今まで車酔いしなかったの初めて。先生、本当すごいんだね」
「生徒会長×その元親衛隊長……あり」

1人だけ到着の感想がおかしかったけど、誰も何も突っ込まなかった。

「じゃあ荷物下ろして、さっそくテント貼ろう」
「おう。あ、飯の係と分けよう」

話が進んでいく中、黒月さんはそそくさと俺に近づいてきた。

「では私はこれで。車に待機しておりますので、何かありましたら連絡ください」
「えっ。先生も一緒にやればいいじゃん」
「いえ、私がいると楽しめないでしょう? 同級生でハメを外しすぎない程度にハメを外して楽しんでください」
「そんな」

俺たちがそんな話をしている間にも、他の奴らで荷物を運び出し、キャンプ場の方に向かっていってしまっていた。

「ほら、早く行かないと置いていかれてしまうよ」

みんがいなくなったので、いつもの話し方に戻った黒月さんは、俺の背中をそっと押した。

「でも」
「道中は心配だから無理言って車に乗せたけど、今しかできないような楽しいことを、同年代の子と楽しんで欲しい気持ちはあるよ。保護者としてキャンプ場の受付は俺がしておくから行っておいで」
「……分かった」

うなずいて、俺はみんなの元に急いだ。
幸い俺が追いついたのは場所を決めただけの段階だったので、テント貼りに参加した。

「柊木、黒月先生は?」

天海が不思議そうな顔をしながら聞いてきた。

「邪魔したくないから車で待ってるって」
「えー、別に邪魔じゃないのにな」
「まぁ俺らの中に居て楽しいと思うタイプじゃないんだろ」
「あー。黒月先生って優しいし、教え方も上手いから人気ではあるけど無表情だもんね」

そんなふうに話しながら作業した。
黒月さんってやっぱ人気あるんだ。

「でも先生、柊木を見る時だけ笑ってたよね。俺、初めて見たよ」

森がそういうと他のメンバーも次々とうなずいた。

「先生と仲良いのか?」
「や、まぁ、仲は、良いかな?」

どう答えるのが正解か分からず戸惑っていると、天海がパチンと手を叩いた。

「そうだ柊木。先生も食べ物準備してるかもしれないけど、せっかくだしお肉焼いたら、車まで持ってってあげたら?」
「え、俺?」

突然の天海の提案に俺は首を傾げた。
すると天海が訳知り顔でニタリと笑った。

「他の人が行ってもいいの?」

声を潜めて聞く天海の顔は、もう完全にカップルウォッチャーで、俺の彼氏が黒月さんであることは完全にバレてしまっているようだ。

「分かった、俺が行くよ」
「だよね!!」

カップルウォッチャーが嬉しそうに笑った。

他のメンバーも何かを察したのかそれきり深くは訪ねてくることがなく、テントも無事貼り終わり、バーベキューが始まった。

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