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36 不在
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翌日、学校へ行きいつも通りに過ごした後、お昼のチャイムが鳴り数学第二準備室に向かった。
昨日のこともあって気まずいがノックをして数学準備室に入ると、そこには黒月さんはいなかった。
「あ、紫坊ちゃん。こんちわ」
「え、中島さん? なんで?」
中島さんは黒月さんのように柊木家に出入りする柊グループの社員だ。
黒月さんよりも数個年下らしい。
「黒月さんは今いないんすよ。会社の方でちょっとトラブルがあって。あ、でもお弁当は預かってますよ。どうぞ」
「ありがとう……。でもトラブルって何?」
お弁当を受け取りつつ尋ねると、中島さんは曖昧に笑った。
「まぁ、その詳しくは言えないんですが、根も葉もない通報のせいで監査が入りまして。少し面倒なことになってるんですよ」
「え……」
「実質的に現状は黒月さんが社長ですから、昨日の夜からいろいろと対応に追われてるんです。ああ、何も問題はありませんよ? その辺はちゃんとクリーンな会社だと胸を張って言えますから」
「そうなんだ。通報者ってもしかして」
「通報者は誰なのかわかりません。ですが可能性は大きいでしょうね」
中島さんは、俺の言わんとした人物を察してうなずいた。
俺を殺せなかった柊木夫妻は、今は牢屋に入っているはずだ。それでもこんなタイミングでそんなことをしてくるのは、柊木夫妻の可能性が高い。
もしもそうだとしたら本当にどこまで行っても人の足を引っ張ることしかしない人たちだ。
会社が面倒なことになる他に、柊木夫妻は知らずにやっただろうが、このタイミングで話せないなら、俺たちはもっと気まずくなってしまう。本当に良い嫌がらせだ。
「それにしても、お久しぶりですね~。誠坊ちゃんには最近もたまに会ったりもしていましたが、昔から紫坊ちゃんも誠坊ちゃんも俺が隣にいても黒月さんばっかりキラキラした目で見てて、寂しかったもんですよ」
「えー。そうだっけ?」
「そうなんです。今だって何も変わってないですけどね。ここに入ってくる時も黒月さんがいないことにガッカリして、俺がいた時も純粋に驚いただけで嬉しそうにすらしてくれなかったし」
拗ねるように言う中島さんが面白かった。
「そんなことないよ。久々に会えて嬉しいし」
「本当かな。まぁ、良いですけど。今日からしばらくは黒月さんの受け持ってる授業なんかは俺が代わりにすることになってるんで、よろしくお願いしますね」
「え、黒月さんそんなに長いこといないの?」
「まぁ、1週間くらいは確実に帰ってこられないでしょうね。それ以降は流れ次第って感じでしょう」
「そっか」
黒月さんと早く話し合いをしなければならないと思っているのに、本当にタイミングが悪い。
それに黒月さんがそんなに忙しいなんて心配だ。
大体、教師と社長の仕事だってオーバーワークなのに。
しかも黒月さんは昨夜から忙しかったはずなのに、弁当はいつも通り俺の好きなものばかりで構成されていて、野菜などのバランスもバッチリだ。
「黒月さんに、弁当は作らなくて良いって伝えておいて。忙しいのに、作ってもらうの申し訳ないからさ」
「え、でもそんなこと言ったら俺、半殺しにされるかも」
「え、なんで?」
怯える中島さんに尋ねると、中島さんはさらに顔を青くして首を振った。
「いえ、なんでもありません。それじゃあそう伝えておきますね」
「うん。よろしくね。あ、その件が終わって落ち着いたら、たっぷり時間を取ってもらうからって伝えておいてね」
「はい!」
今度は嬉しそうにうなずいた中島さんを横目に、俺は弁当の続きを食べおわり、教室に戻った。
昨日のこともあって気まずいがノックをして数学準備室に入ると、そこには黒月さんはいなかった。
「あ、紫坊ちゃん。こんちわ」
「え、中島さん? なんで?」
中島さんは黒月さんのように柊木家に出入りする柊グループの社員だ。
黒月さんよりも数個年下らしい。
「黒月さんは今いないんすよ。会社の方でちょっとトラブルがあって。あ、でもお弁当は預かってますよ。どうぞ」
「ありがとう……。でもトラブルって何?」
お弁当を受け取りつつ尋ねると、中島さんは曖昧に笑った。
「まぁ、その詳しくは言えないんですが、根も葉もない通報のせいで監査が入りまして。少し面倒なことになってるんですよ」
「え……」
「実質的に現状は黒月さんが社長ですから、昨日の夜からいろいろと対応に追われてるんです。ああ、何も問題はありませんよ? その辺はちゃんとクリーンな会社だと胸を張って言えますから」
「そうなんだ。通報者ってもしかして」
「通報者は誰なのかわかりません。ですが可能性は大きいでしょうね」
中島さんは、俺の言わんとした人物を察してうなずいた。
俺を殺せなかった柊木夫妻は、今は牢屋に入っているはずだ。それでもこんなタイミングでそんなことをしてくるのは、柊木夫妻の可能性が高い。
もしもそうだとしたら本当にどこまで行っても人の足を引っ張ることしかしない人たちだ。
会社が面倒なことになる他に、柊木夫妻は知らずにやっただろうが、このタイミングで話せないなら、俺たちはもっと気まずくなってしまう。本当に良い嫌がらせだ。
「それにしても、お久しぶりですね~。誠坊ちゃんには最近もたまに会ったりもしていましたが、昔から紫坊ちゃんも誠坊ちゃんも俺が隣にいても黒月さんばっかりキラキラした目で見てて、寂しかったもんですよ」
「えー。そうだっけ?」
「そうなんです。今だって何も変わってないですけどね。ここに入ってくる時も黒月さんがいないことにガッカリして、俺がいた時も純粋に驚いただけで嬉しそうにすらしてくれなかったし」
拗ねるように言う中島さんが面白かった。
「そんなことないよ。久々に会えて嬉しいし」
「本当かな。まぁ、良いですけど。今日からしばらくは黒月さんの受け持ってる授業なんかは俺が代わりにすることになってるんで、よろしくお願いしますね」
「え、黒月さんそんなに長いこといないの?」
「まぁ、1週間くらいは確実に帰ってこられないでしょうね。それ以降は流れ次第って感じでしょう」
「そっか」
黒月さんと早く話し合いをしなければならないと思っているのに、本当にタイミングが悪い。
それに黒月さんがそんなに忙しいなんて心配だ。
大体、教師と社長の仕事だってオーバーワークなのに。
しかも黒月さんは昨夜から忙しかったはずなのに、弁当はいつも通り俺の好きなものばかりで構成されていて、野菜などのバランスもバッチリだ。
「黒月さんに、弁当は作らなくて良いって伝えておいて。忙しいのに、作ってもらうの申し訳ないからさ」
「え、でもそんなこと言ったら俺、半殺しにされるかも」
「え、なんで?」
怯える中島さんに尋ねると、中島さんはさらに顔を青くして首を振った。
「いえ、なんでもありません。それじゃあそう伝えておきますね」
「うん。よろしくね。あ、その件が終わって落ち着いたら、たっぷり時間を取ってもらうからって伝えておいてね」
「はい!」
今度は嬉しそうにうなずいた中島さんを横目に、俺は弁当の続きを食べおわり、教室に戻った。
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