双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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35 カップルウォッチャーの真意

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天海とはそれで和解して、一緒に寮に帰った。
それから今日の分の遅れを取り戻すように勉強をした。
昼間に仮眠したからか、頭は割とすっきりしていたが、勉強が捗ることはない。
頭の大部分を黒月さんとのことが占めているからだ。

黒月さんも、多分今いろいろ悩んでいるかもしれない。
トントンと部屋のドアがノックされ、返事をするとひょっこりと天海が現れた。

「天海、どうした?」
「あの、さ。ベットのこと、本当にごめんね」
「ああ、もう良いんだ。明日またちゃんと謝るし」

そう言うと、天海はモジモジと何か言い辛そうに見えた。

「まだ何か言いたいことがあるのか?」
「いや、うん。あの、こんな僕に言われても嫌だろうけどさ、柊木たちは会話が足りていないと思うんだ」
「会話が? どうしてそんなことが分かる?」

相手を天海に言った覚えはないし、もしも天海が相手を知っていたところで、俺たちに会話が足りないなどと、天海は知る由もないだろう。

「今回は、方法を間違えちゃったけど、本来の僕はカップルウォッチャーだよ。だから、分かるんだ。どうしてカップルがそんなふうに進むのか、ってずっと考えながら見てきたから」
「すごいな。もしそれが当たってるなら、天海はカップルウォッチャーというよりも、もはや学者だな」

その言葉に、天海はゆるく首を振った。

「僕はそんな大層な考えじゃなくて、せっかく好き同士で付き合ったカップルが、すれ違って別れたりするのが嫌なだけなんだ。だから、柊木も、せっかく彼氏と付き合えたのなら、思ってることを話し合って、仲良くして欲しい」
「天海」

俺は天海はただ面白がっているだけだと思っていて、そんなふうに想ってくれているとは思っていなかったのでかなり驚いた。
天海の気持ちを嬉しく思った俺とは対照的に、天海は申し訳なさそうに肩を窄めた。

「今回は僕が暴走しちゃって、柊木がそんなに落ち込むほどの喧嘩をさせてしまったから、本当、どの口が言ってんだって感じだけど」
「いや、ありがとうな。確かに、俺たちはお互いのことが好きだと言う割には会話が少ない。だから、あの人の思ってることが俺には分からないし、あの人も俺の思っていることが分からないんだと思う。天海の言う通りだよ」

会話が足りないのに、俺がネガティブになって喧嘩して、さらに会話する時間を少なくしてしまった。

「明日は、ちゃんと話してみるよ。ありがとう、天海」
「……っ。うん。こちらこそ」

天海は嬉しそうに笑ったあと、頬を掻いた。

「本当、2年に上がってからの柊木は別人みたいだよね」
「え? べ、別人?」
「みんな言ってるよ。話しかけたいけど、今まで悪口とか言ったし、遠巻きにしてたから、話しかけられないって。でも、みんな、最近の柊木が頑張って勉強したり、運動したりしているのを見てるから、気になって仕方ないみたい」

どうやら本気で別人に疑われているわけではないらしいのでホッと胸を撫で下ろした。

「そうか。普通に話しかけてきてくれて良いけどな」
「はは。そうだよね。柊木はきっとそう言うんじゃないかって思ってた。じゃあそう言うふうに僕が周りに伝えておくよ」
「ああ。ありがとう」

正直、今更誠の代わりをしていることに意味などない。
だからバレてしまっても最悪、俺に問題はない。
俺は俺で高卒認定試験を受けて大学に入れば良いし。
だが、俺はここでの暮らしを気に入ってしまっているのかもしれない。
どうしても約束の2年のうちはこのままここに止まりたいと思っていた。
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