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34 迷惑系
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尻に違和感はあるものの、目の前の男たちを倒すのに、さほど苦労はしなかった。
俺のこういう部分はもしかしたら弟としても恋人としてちっとも可愛くないのかもしれない。
呻き声を上げながら俺の前に倒れ込む不良たちに俺を倒せるほどの力があれば良かったのにと他人任せな考えをしながら、俺は少し落ち着いていた。
寝不足でネガティブになっていた心は、仮眠を取ったことでましになり、さらに、不良たちをぶちのめしたことで、ストレス発散になった。
けれど、黒月さんの元から逃げ出してきた事実は変わらないので、明日のお昼は少し気まずい思いをするかもしれない。だが、こういうことは日を置くとさらに気まずくなるのは分かっているのでどれだけ気まずくても行くつもりだ。
「はぁ……。捨てられる、かな。いや、それはないか」
寮に帰る前に荷物を取らないといけないので、授業の終わりの鐘が鳴るなか、俺は教室まで向かっていた。
「お疲れ、柊木! 元気なく無い?」
「天海……」
天海が俺のクラスの前の廊下で手を振ってニコニコと笑っている。
お前のせいでと恨み節を言いたくなるのをなんとか抑えた。
もちろん、悪いのは自分だとわかっているからだ。
だが、睨んでしまうのは仕方がない。
「うわ、こわ。なんだよ。それにシャツに血とかついてるし。なんか物騒なんだけど」
「これは俺の血じゃねぇよ」
「いや、それもまた怖いんだけど。その見た目で強いなんて意外だよね……。ところで、なんで俺睨まれてるのかそろそろ教えてもらえる? 午後の授業も出てなかったみたいだし」
天海がどこまでものんびりとした口調で首を傾げるので、俺は肩から力が抜けた。
「昨日、天海が俺のベットで寝たろ?」
「え、うん。自分のベットに戻るのめんどくさくなっちゃってさ。なんで?」
なぜか若干嬉しそうな顔で尋ねる天海に内心ため息を吐きながら話した。
「今日、それが彼氏にばれたんだ。それで喧嘩になったと言うか」
「なるほど、それで僕が睨まれてるわけね」
天海は納得したように大きくうなずいた。
「天海のせいじゃないし俺が、悪いのはわかってる……。はぁ、睨んで悪かったな」
「いやいや、僕も結構悪いよ? 確信犯みたいなところあるし」
「確信犯だって? 何が」
「いや、なんか隠れ束縛系っぽい柊木の彼氏は、絶対他の男の匂いなんてわかると思ったんだよね。だから、わざと柊木のベットで一緒に寝たの」
「はぁ? なんで」
「だってせっかく付き合っているのに進展が全然無いんだもん。じれったいったら。だから荒療治……みたいな? もちろん、匂いで気がつかないなら他の方法を試そうと思ってたし」
悪びれる様子もなくそんなことを言う。
「天海……。お前、迷惑系カップルウォッチャーだったのか。いや、そもそも普通のカップルウォッチャーってのを知らないが」
「僕は柊木がうまくいけば良いと思って」
「気持ちは嬉しいが、俺らは俺らのペースで進むから、引っ掻き回そうとしないでくれるか」
そう告げると、流石に反省したのか天海は小さくなって「ごめん」と呟いた。
俺のこういう部分はもしかしたら弟としても恋人としてちっとも可愛くないのかもしれない。
呻き声を上げながら俺の前に倒れ込む不良たちに俺を倒せるほどの力があれば良かったのにと他人任せな考えをしながら、俺は少し落ち着いていた。
寝不足でネガティブになっていた心は、仮眠を取ったことでましになり、さらに、不良たちをぶちのめしたことで、ストレス発散になった。
けれど、黒月さんの元から逃げ出してきた事実は変わらないので、明日のお昼は少し気まずい思いをするかもしれない。だが、こういうことは日を置くとさらに気まずくなるのは分かっているのでどれだけ気まずくても行くつもりだ。
「はぁ……。捨てられる、かな。いや、それはないか」
寮に帰る前に荷物を取らないといけないので、授業の終わりの鐘が鳴るなか、俺は教室まで向かっていた。
「お疲れ、柊木! 元気なく無い?」
「天海……」
天海が俺のクラスの前の廊下で手を振ってニコニコと笑っている。
お前のせいでと恨み節を言いたくなるのをなんとか抑えた。
もちろん、悪いのは自分だとわかっているからだ。
だが、睨んでしまうのは仕方がない。
「うわ、こわ。なんだよ。それにシャツに血とかついてるし。なんか物騒なんだけど」
「これは俺の血じゃねぇよ」
「いや、それもまた怖いんだけど。その見た目で強いなんて意外だよね……。ところで、なんで俺睨まれてるのかそろそろ教えてもらえる? 午後の授業も出てなかったみたいだし」
天海がどこまでものんびりとした口調で首を傾げるので、俺は肩から力が抜けた。
「昨日、天海が俺のベットで寝たろ?」
「え、うん。自分のベットに戻るのめんどくさくなっちゃってさ。なんで?」
なぜか若干嬉しそうな顔で尋ねる天海に内心ため息を吐きながら話した。
「今日、それが彼氏にばれたんだ。それで喧嘩になったと言うか」
「なるほど、それで僕が睨まれてるわけね」
天海は納得したように大きくうなずいた。
「天海のせいじゃないし俺が、悪いのはわかってる……。はぁ、睨んで悪かったな」
「いやいや、僕も結構悪いよ? 確信犯みたいなところあるし」
「確信犯だって? 何が」
「いや、なんか隠れ束縛系っぽい柊木の彼氏は、絶対他の男の匂いなんてわかると思ったんだよね。だから、わざと柊木のベットで一緒に寝たの」
「はぁ? なんで」
「だってせっかく付き合っているのに進展が全然無いんだもん。じれったいったら。だから荒療治……みたいな? もちろん、匂いで気がつかないなら他の方法を試そうと思ってたし」
悪びれる様子もなくそんなことを言う。
「天海……。お前、迷惑系カップルウォッチャーだったのか。いや、そもそも普通のカップルウォッチャーってのを知らないが」
「僕は柊木がうまくいけば良いと思って」
「気持ちは嬉しいが、俺らは俺らのペースで進むから、引っ掻き回そうとしないでくれるか」
そう告げると、流石に反省したのか天海は小さくなって「ごめん」と呟いた。
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