双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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27 知らない双子1

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俺にはとにかく時間が足りない。
勉強、勉強、勉強の時間を過ごした。
俺が悪いわけではないのだが、あの体育祭の一件以来、前にも増して遠巻きに見られるようになり俺の周りに寄ってくるのは、東堂か、天海か、あのチワワくらいだ。
東堂が快く俺の分からない箇所を教えてくれるというのでそれに甘え、放課後は図書室で勉強した。さすが学年一位だけあり、東堂は何を聞いても答えてくれる上に、説明も分かりやすい。
そんなところも、黒月さんと似てるかもしれない。
そんなある日突然見知らぬ生徒から話しかけられた。

「「ねぇ」」

見れば、とても綺麗な顔をしている双子だった。

「なに?」

答えると双子はお互いに顔を見合わせてクスクスと笑い、とても感じが悪い。
いつものチワワのようなあの絡みかとうんざりして、思わずため息を吐きそうになった。

「君って、柊木誠だよね?」

片方が首を傾げてそう聞いてきた。
まだ俺は誠だと偽っている身分なので素直にうなずいた。

「そうだけど。何か用?」

「もっちろん用があるから話しかけているんだよ」
「君さ、どうやって会長に取り入ったか知らないけど、最近調子乗りすぎなんじゃない?」

「はぁ。俺は調子に乗っているつもりはないけど……。そう見えてしまったのならすみませんでした。では失礼します」

こんな無駄な時間を過ごしているのは本当にもったいない。
それなら英単語の1つでも覚える時間にしたいくらいだ。
踵を返そうとする俺の前に、双子の片方が立ち塞がった。

「逃げないでよ。ねぇ、どうやって取り入ったの?」
「取り入ったつもりはありませんから、どうやってと言われても困ります」
「君って感じ悪いね。いつも会長といる時はキャピキャピしてたじゃん。あれ、やっぱり演技だったんだ」

蔑むような目で俺を見る双子にうなずいて返した。

「まぁ、そうでしょうね」
「「はぁ?」」

双子は当然のように怒ってしまってから俺は発言について失敗してしまったことに気がついた。

「……とにかく、俺と付き合って欲しくないんだったら、東堂に言ってくれ」

東堂には悪いが、そちらで対応して欲しい。

「「何それ!」」

双子は声を荒げた。俺は小さく息をつく。
こんなに絡まれるなら、東堂と付き合うことで得られるメリットなど、もはやないに等しいだろ。むしろマイナスと言ってもいいくらいだ。
明日の放課後に今までの礼と共に、今後偽装交際を辞めると伝えよう。
そう決意していると、双子の片方が泣き始めた。

「何で。会長は何でこんなやつと付き合うの……? 何で僕たちじゃダメなの?」
「悠人……。会長だって僕たちの良さを分かってくれるよ」
「でも、もう断られてるし」
「何度だってアピールすればいいんだよ」

話を聞いてる限りだと双子は2人で東堂と付き合うつもりらしい。
その付き合い方はかなりマニアックだろうから東堂の気持ちを変えるのは難しそうだ。

何にせよ、こいつらが東堂と付き合えるかどうかは俺には関係のない話だ。

「なぁ。もう行っていいか」
「「まだ話は終わってない!!」」

「そっか」
「そんなだから刺されるんじゃないの!?」
「……えぇ……」

あまりにひどい言われように、ドン引いて言葉を失うと、双子は聞いてもいないのに東堂の良さを話し始めた。

「君は知らないだろうけど、会長は素晴らしい方なんだ」
「そうだ。君にはもったいないんだ」
「かっこいいし、優しいし、頭もいいし、運動もできる」
「しかも、僕たちを見分けることができるんだ!!」

そこが一番大事、というように最後の言葉は声を張り上げて言われた。
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