28 / 57
27 知らない双子1
しおりを挟む
俺にはとにかく時間が足りない。
勉強、勉強、勉強の時間を過ごした。
俺が悪いわけではないのだが、あの体育祭の一件以来、前にも増して遠巻きに見られるようになり俺の周りに寄ってくるのは、東堂か、天海か、あのチワワくらいだ。
東堂が快く俺の分からない箇所を教えてくれるというのでそれに甘え、放課後は図書室で勉強した。さすが学年一位だけあり、東堂は何を聞いても答えてくれる上に、説明も分かりやすい。
そんなところも、黒月さんと似てるかもしれない。
そんなある日突然見知らぬ生徒から話しかけられた。
「「ねぇ」」
見れば、とても綺麗な顔をしている双子だった。
「なに?」
答えると双子はお互いに顔を見合わせてクスクスと笑い、とても感じが悪い。
いつものチワワのようなあの絡みかとうんざりして、思わずため息を吐きそうになった。
「君って、柊木誠だよね?」
片方が首を傾げてそう聞いてきた。
まだ俺は誠だと偽っている身分なので素直にうなずいた。
「そうだけど。何か用?」
「もっちろん用があるから話しかけているんだよ」
「君さ、どうやって会長に取り入ったか知らないけど、最近調子乗りすぎなんじゃない?」
「はぁ。俺は調子に乗っているつもりはないけど……。そう見えてしまったのならすみませんでした。では失礼します」
こんな無駄な時間を過ごしているのは本当にもったいない。
それなら英単語の1つでも覚える時間にしたいくらいだ。
踵を返そうとする俺の前に、双子の片方が立ち塞がった。
「逃げないでよ。ねぇ、どうやって取り入ったの?」
「取り入ったつもりはありませんから、どうやってと言われても困ります」
「君って感じ悪いね。いつも会長といる時はキャピキャピしてたじゃん。あれ、やっぱり演技だったんだ」
蔑むような目で俺を見る双子にうなずいて返した。
「まぁ、そうでしょうね」
「「はぁ?」」
双子は当然のように怒ってしまってから俺は発言について失敗してしまったことに気がついた。
「……とにかく、俺と付き合って欲しくないんだったら、東堂に言ってくれ」
東堂には悪いが、そちらで対応して欲しい。
「「何それ!」」
双子は声を荒げた。俺は小さく息をつく。
こんなに絡まれるなら、東堂と付き合うことで得られるメリットなど、もはやないに等しいだろ。むしろマイナスと言ってもいいくらいだ。
明日の放課後に今までの礼と共に、今後偽装交際を辞めると伝えよう。
そう決意していると、双子の片方が泣き始めた。
「何で。会長は何でこんなやつと付き合うの……? 何で僕たちじゃダメなの?」
「悠人……。会長だって僕たちの良さを分かってくれるよ」
「でも、もう断られてるし」
「何度だってアピールすればいいんだよ」
話を聞いてる限りだと双子は2人で東堂と付き合うつもりらしい。
その付き合い方はかなりマニアックだろうから東堂の気持ちを変えるのは難しそうだ。
何にせよ、こいつらが東堂と付き合えるかどうかは俺には関係のない話だ。
「なぁ。もう行っていいか」
「「まだ話は終わってない!!」」
「そっか」
「そんなだから刺されるんじゃないの!?」
「……えぇ……」
あまりにひどい言われように、ドン引いて言葉を失うと、双子は聞いてもいないのに東堂の良さを話し始めた。
「君は知らないだろうけど、会長は素晴らしい方なんだ」
「そうだ。君にはもったいないんだ」
「かっこいいし、優しいし、頭もいいし、運動もできる」
「しかも、僕たちを見分けることができるんだ!!」
そこが一番大事、というように最後の言葉は声を張り上げて言われた。
勉強、勉強、勉強の時間を過ごした。
俺が悪いわけではないのだが、あの体育祭の一件以来、前にも増して遠巻きに見られるようになり俺の周りに寄ってくるのは、東堂か、天海か、あのチワワくらいだ。
東堂が快く俺の分からない箇所を教えてくれるというのでそれに甘え、放課後は図書室で勉強した。さすが学年一位だけあり、東堂は何を聞いても答えてくれる上に、説明も分かりやすい。
そんなところも、黒月さんと似てるかもしれない。
そんなある日突然見知らぬ生徒から話しかけられた。
「「ねぇ」」
見れば、とても綺麗な顔をしている双子だった。
「なに?」
答えると双子はお互いに顔を見合わせてクスクスと笑い、とても感じが悪い。
いつものチワワのようなあの絡みかとうんざりして、思わずため息を吐きそうになった。
「君って、柊木誠だよね?」
片方が首を傾げてそう聞いてきた。
まだ俺は誠だと偽っている身分なので素直にうなずいた。
「そうだけど。何か用?」
「もっちろん用があるから話しかけているんだよ」
「君さ、どうやって会長に取り入ったか知らないけど、最近調子乗りすぎなんじゃない?」
「はぁ。俺は調子に乗っているつもりはないけど……。そう見えてしまったのならすみませんでした。では失礼します」
こんな無駄な時間を過ごしているのは本当にもったいない。
それなら英単語の1つでも覚える時間にしたいくらいだ。
踵を返そうとする俺の前に、双子の片方が立ち塞がった。
「逃げないでよ。ねぇ、どうやって取り入ったの?」
「取り入ったつもりはありませんから、どうやってと言われても困ります」
「君って感じ悪いね。いつも会長といる時はキャピキャピしてたじゃん。あれ、やっぱり演技だったんだ」
蔑むような目で俺を見る双子にうなずいて返した。
「まぁ、そうでしょうね」
「「はぁ?」」
双子は当然のように怒ってしまってから俺は発言について失敗してしまったことに気がついた。
「……とにかく、俺と付き合って欲しくないんだったら、東堂に言ってくれ」
東堂には悪いが、そちらで対応して欲しい。
「「何それ!」」
双子は声を荒げた。俺は小さく息をつく。
こんなに絡まれるなら、東堂と付き合うことで得られるメリットなど、もはやないに等しいだろ。むしろマイナスと言ってもいいくらいだ。
明日の放課後に今までの礼と共に、今後偽装交際を辞めると伝えよう。
そう決意していると、双子の片方が泣き始めた。
「何で。会長は何でこんなやつと付き合うの……? 何で僕たちじゃダメなの?」
「悠人……。会長だって僕たちの良さを分かってくれるよ」
「でも、もう断られてるし」
「何度だってアピールすればいいんだよ」
話を聞いてる限りだと双子は2人で東堂と付き合うつもりらしい。
その付き合い方はかなりマニアックだろうから東堂の気持ちを変えるのは難しそうだ。
何にせよ、こいつらが東堂と付き合えるかどうかは俺には関係のない話だ。
「なぁ。もう行っていいか」
「「まだ話は終わってない!!」」
「そっか」
「そんなだから刺されるんじゃないの!?」
「……えぇ……」
あまりにひどい言われように、ドン引いて言葉を失うと、双子は聞いてもいないのに東堂の良さを話し始めた。
「君は知らないだろうけど、会長は素晴らしい方なんだ」
「そうだ。君にはもったいないんだ」
「かっこいいし、優しいし、頭もいいし、運動もできる」
「しかも、僕たちを見分けることができるんだ!!」
そこが一番大事、というように最後の言葉は声を張り上げて言われた。
91
お気に入りに追加
1,128
あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる