双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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16 試験

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東堂に許可が下りたことを話すと、早速親衛隊のお茶会なるもので宣言をしてきてくれたらしい。それから1週間経つが、とりあえず水が降ってくることはなくなった。
だが、実害のない細々した嫌がらせに変わった。
下駄箱に俺の悪口オンパレードの手紙が入っていたり、果たし状みたいな物が入っていたり、告白の罰ゲームに使われたり、数人で物言いたげに俺の前で道を塞いだりだ。
めちゃくちゃ面倒くさい気持ちはあるが、俺的には汚水をかけられたりするよりは、遥かに実害がないので放置している。

そんな中、中間試験が近づいてきた。
もちろん自信はあるが、この学校は腐っても名門進学校なので油断はならない。

「紫様の成績なら大丈夫だとは思いますが、私に教えられるところがあったら、質問してくださればしつこいくらいに教えますので、何なりとおっしゃってくださいね」
「うん。ありがとう」

黒月さんは部屋中にコーヒーの良い匂いを漂わせながら、俺にコーヒーを入れてくれた。

だが、しつこいくらいに教えるって、なんか怖い。

湯気の立ちのぼるコーヒーにそっと口をつけると、俺好みの少し香ばしく苦めのコーヒーだった。

「……はぁ、おいしい。黒月さんって本当何でもできちゃってかっこいいよね」
「光栄です」

くそう。そつがない。
確かに黒月さんをかっこいいと思うし、付き合っているのだから大好きなのだが、同じ男としてここまでそつがないところを見ると、少しだけ悔しい気持ちにもなる。

「あのさ、今回のテストで5位以内に入ったら、ご褒美頂戴」

そんなわがままを言ってみると、黒月さんは目を丸くした。

「ご褒美ですか? そんなの、いつも頑張ってる紫様には今すぐにでも差し上げたいくらいですが」
「あはは。気持ちは嬉しいけど、やっぱ自分の手で勝ち得たご褒美が欲しいんだよ」
「そうなのですか。では、一体何が欲しいんですか?」
「へへ。それはもらえるのが確定してから言うよ」
「では、楽しみにしております」

何をねだられるか分からない恐怖は、黒月さんには存在しないらしい。その証拠に黒月さんはやたら嬉しそうな顔で笑っている。
俺もとりあえず約束を取り付けたことで俄然やる気が出た。ああ、今更ながら、ご褒美ってもらったことないから俺も今から本当楽しみだ。

そして俺はテスト勉強を猛烈に頑張った。
クラスメイトたちはなぜか俺に分からない問題を質問してくるけど、意外と自分の勉強にもなり、快く教え、自分の分からないところは黒月さんに聞きに行った。
やっぱり勉強は嫌いじゃない。
分からなかったところが分かるようになる過程も楽しいし、テストの点数などで結果が分かりやすく出るところが最高だ。

そうして試験は無事終わり、試験の順位が貼り出された。
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