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4 誠からの電話
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寮の部屋に戻ってからすぐに買ってきたパックのおかゆを湯煎にかけ、もう一つ買ってきた頭に貼り付ける冷却シートを手に持って天海の部屋をノックした。
中からは返事はないが中に入ると、天海はスースーと寝息を立てて苦しそうに眠っている。
冷却シートを頭に貼ると、少しだけそのシワが和らいだ。
それから居間に行き湯煎したおかゆを器に入れて戻ってきて、天海を起こし、かゆを口元に持っていくと、雛鳥のように何の抵抗もなくパクリと食いつかれ少しだけびっくりした。
こうやって誰かの世話をするのは俺の自己満だ。
両親は俺がどう頑張っても俺を見てくれることはなかったが、同級生たちはそうでもなかった。
俺が親切にすれば嬉しそうにするし、好意も返ってくる。
それに気がついてからいつしかそう生きることが普通になっていた。
「おいしい?」
「……鼻が詰まってて味、分からない」
「そっか」
既製品に手を加えたりもしていないので、鼻が詰まっていなかったとしてもまずいなんてことはないだろう。
ブーブーブー
ちょうど食べさせ終わったタイミングで胸ポケットに入れていたスマホが鳴り、天海の部屋を後にした。
「はい」
『あ……、紫?』
電話から聞こえてきた声は、俺がここにいる元凶である誠だ。
「誠。俺に電話なんかして大丈夫なの?」
そもそも俺たちは会話をすることもなく、入れ違いで入れ替えられた。
両親は誠と俺が仲良く話すことを良しとしていないはずだ。
まぁ、俺も誠とは仲良くできそうにないので、それでいいのだが。
『あ、うん。父さんと母さんには内緒でかけてるから大丈夫だよ。僕にはそれほどうるさく言わないし……』
「あっそ。んで何か用?」
『いや、今日が初日だから心配だなって思って。ダメだよね。うざいよね』
「心配なんかしてないだろ。つか、そもそも俺がここにいるのもお前のせいなのに。呑気なもんだよな……はぁ。つまらない嘘はやめろよ。本当は他に用件があるんだろ?」
『……嘘じゃないよ。心配、してるよ。でもね、あ、あのね。実は心配だったんだ。僕がいない間、紫が僕の黒月を奪わないかどうか』
「はぁ!? 俺は男には興味ないって知ってるだろ? そもそも黒月さんだって俺を好きになるわけないだろ。失礼なことを言うのはやめろよ」
『でもでも万が一ってことがあるよね? 黒月はかっこよくて素敵だから惚れちゃっても仕方ないけど、黒月は僕のだから、不毛な恋がしたくなければ惚れないようにね?』
「意味わかんねぇ。それに誠は会長様ってのが好きだって聞いたけど」
『もちろん好きじゃないよ。あ、あのね、僕が好きなのは黒月だけ。でもあまりにも黒月が釣れない態度をとるから、他の人と仲良くして嫉妬してもらおうと思って……。でも嫉妬が行きすぎたみたいでこんなことになっちゃったんだね』
「何言ってるんだ? 本当に意味がわからない。なぁ、頭大丈夫か?」
『だって、黒月も僕のことが好きなんだから、単位とか点数とか誤魔化すはずでしょ? でも、そんなこと1回もしてくれなかった。それってきっと嫉妬してるからだよ。かわいいところがあるよね。でもこのままじゃ僕は学園生活を楽しめないから、2年生の間頑張ってね紫』
久々に話す誠は、信じられないくらい話が通じなくなっていて怖く感じた。
以前はこんなじゃなかったのにと思うが、それは俺が知らなかっただけなのかもしれない。
中からは返事はないが中に入ると、天海はスースーと寝息を立てて苦しそうに眠っている。
冷却シートを頭に貼ると、少しだけそのシワが和らいだ。
それから居間に行き湯煎したおかゆを器に入れて戻ってきて、天海を起こし、かゆを口元に持っていくと、雛鳥のように何の抵抗もなくパクリと食いつかれ少しだけびっくりした。
こうやって誰かの世話をするのは俺の自己満だ。
両親は俺がどう頑張っても俺を見てくれることはなかったが、同級生たちはそうでもなかった。
俺が親切にすれば嬉しそうにするし、好意も返ってくる。
それに気がついてからいつしかそう生きることが普通になっていた。
「おいしい?」
「……鼻が詰まってて味、分からない」
「そっか」
既製品に手を加えたりもしていないので、鼻が詰まっていなかったとしてもまずいなんてことはないだろう。
ブーブーブー
ちょうど食べさせ終わったタイミングで胸ポケットに入れていたスマホが鳴り、天海の部屋を後にした。
「はい」
『あ……、紫?』
電話から聞こえてきた声は、俺がここにいる元凶である誠だ。
「誠。俺に電話なんかして大丈夫なの?」
そもそも俺たちは会話をすることもなく、入れ違いで入れ替えられた。
両親は誠と俺が仲良く話すことを良しとしていないはずだ。
まぁ、俺も誠とは仲良くできそうにないので、それでいいのだが。
『あ、うん。父さんと母さんには内緒でかけてるから大丈夫だよ。僕にはそれほどうるさく言わないし……』
「あっそ。んで何か用?」
『いや、今日が初日だから心配だなって思って。ダメだよね。うざいよね』
「心配なんかしてないだろ。つか、そもそも俺がここにいるのもお前のせいなのに。呑気なもんだよな……はぁ。つまらない嘘はやめろよ。本当は他に用件があるんだろ?」
『……嘘じゃないよ。心配、してるよ。でもね、あ、あのね。実は心配だったんだ。僕がいない間、紫が僕の黒月を奪わないかどうか』
「はぁ!? 俺は男には興味ないって知ってるだろ? そもそも黒月さんだって俺を好きになるわけないだろ。失礼なことを言うのはやめろよ」
『でもでも万が一ってことがあるよね? 黒月はかっこよくて素敵だから惚れちゃっても仕方ないけど、黒月は僕のだから、不毛な恋がしたくなければ惚れないようにね?』
「意味わかんねぇ。それに誠は会長様ってのが好きだって聞いたけど」
『もちろん好きじゃないよ。あ、あのね、僕が好きなのは黒月だけ。でもあまりにも黒月が釣れない態度をとるから、他の人と仲良くして嫉妬してもらおうと思って……。でも嫉妬が行きすぎたみたいでこんなことになっちゃったんだね』
「何言ってるんだ? 本当に意味がわからない。なぁ、頭大丈夫か?」
『だって、黒月も僕のことが好きなんだから、単位とか点数とか誤魔化すはずでしょ? でも、そんなこと1回もしてくれなかった。それってきっと嫉妬してるからだよ。かわいいところがあるよね。でもこのままじゃ僕は学園生活を楽しめないから、2年生の間頑張ってね紫』
久々に話す誠は、信じられないくらい話が通じなくなっていて怖く感じた。
以前はこんなじゃなかったのにと思うが、それは俺が知らなかっただけなのかもしれない。
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