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重鷹さんの部屋
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ーーピーンポーン
「あれ? いないのかな」
いつもはチャイムを押したらすぐに出てきてくれる重鷹さんが出てこなかった。
しばらくしたら出直そうと思って振り返ったら、後ろでドアが開いた。
「なんだ、重鷹さんいたんだ。どうしたんですか?」
「ああ、柚紀悪い。今はちょっと……」
ばつが悪そうに目を逸らした重鷹さんに不思議に思って、重鷹さんのいる玄関を覗き見た。
重鷹さんのより小さいサイズの靴がある。
俺が見てることに気がついたのか重鷹さんは”違うぞ”と慌ててそう言った。
「あー、実は晶馬がいるんだ」
「ああ。晶馬君が。お昼は突然泣いちゃったけど大丈夫なんですか?」
「突然って言うか……、柚紀、晶馬になんか言ったか?」
「俺が? 何も言ってないですけど。むしろ話しかけないでキモいって言われましたけど」
「晶馬が? なぁもしかして柚紀、拗ねてるのか?」
「え? 何を拗ねるんですか?」
「俺が、柚紀以外を大切にしてること」
「弟のように可愛がっているんだから大切にして当たり前だと思いますけど」
「だよな。柚紀なら分かってくれると思ってた。なぁ、柚紀には申し訳ないんだが、晶馬が柚紀のことを怖がってるんだ。晶馬が落ち着くまででいいから少し距離を置かないか?」
「え」
「頼む」
「重鷹さん、せめて少しくらい話し合いを」
そう言ったのに、部屋の奥から重鷹さんを呼ぶ晶馬の声が聞こえたら、重鷹さんはすぐに話を切り上げて、もう一度”悪い”って言ってドアを閉めてしまった。
ドアが閉まる寸前、奥でこちらを勝ち誇ったように見つめる晶馬と目が合った。
重鷹さん、本当に婚約者がいるの?
弟のように可愛がっているって俺より大事なの?
そんなこと、女々しくて、めんどくさく思われそうで、俺は聞けない。
その次の日から鬱陶しい日々が始まった。
俺は物語の悪役になった気分だ。
晶馬が俺に近づいては勝手に転んで泣き始めたり、俺に話しかけて返事が冷たいと泣き始めたり。それでも俺は大好きな重鷹さんが大切にしている弟分だから我慢していた。
俺の悪い噂が流れ始めても今度はクラスメイトは俺を信じてくれているのが俺の心をかなり安心させてくれた。
何回も重鷹さんに訴えた。
だけど重鷹さんは弟に夢を見ているのか、”柚紀の勘違いじゃないのか?”と否定してくる。
俺は重鷹さんに嫌われたくなくてあまり強くいえなくなった。
俺と何でも話し合える関係になれて嬉しいって言ってたのに。
嘘つき。
ある日、俺が悶々としながら階段を上がっていると階段の上に晶馬がいた。
ニヤニヤとこちらを見下したように見てくる晶馬を見てこの後の展開が予想できた。
俺が突き落とされるか、晶馬が自分で落ちて俺に突き落とされたと言うかだ。
何年お前みたいなのと関わってきたと思ってるんだ。
そして、その2択の場合俺が落ちたほうが断然いい。
だって、重鷹さんに嫌われない。
俺が階段を登るたび、だんだんと前のめりになってくる晶馬をため息をつきながら見上げた。
どうやら晶馬が落ちるほうらしい。
後一段登ったら晶馬は階段を落ちるだろう。
だから俺は階段に足をかけずに後ろに倒れ込んだ。
晶馬がびっくりした顔をしている。
へへ。ざまぁみろ。
思惑が外れて残念だったな。
「あれ? いないのかな」
いつもはチャイムを押したらすぐに出てきてくれる重鷹さんが出てこなかった。
しばらくしたら出直そうと思って振り返ったら、後ろでドアが開いた。
「なんだ、重鷹さんいたんだ。どうしたんですか?」
「ああ、柚紀悪い。今はちょっと……」
ばつが悪そうに目を逸らした重鷹さんに不思議に思って、重鷹さんのいる玄関を覗き見た。
重鷹さんのより小さいサイズの靴がある。
俺が見てることに気がついたのか重鷹さんは”違うぞ”と慌ててそう言った。
「あー、実は晶馬がいるんだ」
「ああ。晶馬君が。お昼は突然泣いちゃったけど大丈夫なんですか?」
「突然って言うか……、柚紀、晶馬になんか言ったか?」
「俺が? 何も言ってないですけど。むしろ話しかけないでキモいって言われましたけど」
「晶馬が? なぁもしかして柚紀、拗ねてるのか?」
「え? 何を拗ねるんですか?」
「俺が、柚紀以外を大切にしてること」
「弟のように可愛がっているんだから大切にして当たり前だと思いますけど」
「だよな。柚紀なら分かってくれると思ってた。なぁ、柚紀には申し訳ないんだが、晶馬が柚紀のことを怖がってるんだ。晶馬が落ち着くまででいいから少し距離を置かないか?」
「え」
「頼む」
「重鷹さん、せめて少しくらい話し合いを」
そう言ったのに、部屋の奥から重鷹さんを呼ぶ晶馬の声が聞こえたら、重鷹さんはすぐに話を切り上げて、もう一度”悪い”って言ってドアを閉めてしまった。
ドアが閉まる寸前、奥でこちらを勝ち誇ったように見つめる晶馬と目が合った。
重鷹さん、本当に婚約者がいるの?
弟のように可愛がっているって俺より大事なの?
そんなこと、女々しくて、めんどくさく思われそうで、俺は聞けない。
その次の日から鬱陶しい日々が始まった。
俺は物語の悪役になった気分だ。
晶馬が俺に近づいては勝手に転んで泣き始めたり、俺に話しかけて返事が冷たいと泣き始めたり。それでも俺は大好きな重鷹さんが大切にしている弟分だから我慢していた。
俺の悪い噂が流れ始めても今度はクラスメイトは俺を信じてくれているのが俺の心をかなり安心させてくれた。
何回も重鷹さんに訴えた。
だけど重鷹さんは弟に夢を見ているのか、”柚紀の勘違いじゃないのか?”と否定してくる。
俺は重鷹さんに嫌われたくなくてあまり強くいえなくなった。
俺と何でも話し合える関係になれて嬉しいって言ってたのに。
嘘つき。
ある日、俺が悶々としながら階段を上がっていると階段の上に晶馬がいた。
ニヤニヤとこちらを見下したように見てくる晶馬を見てこの後の展開が予想できた。
俺が突き落とされるか、晶馬が自分で落ちて俺に突き落とされたと言うかだ。
何年お前みたいなのと関わってきたと思ってるんだ。
そして、その2択の場合俺が落ちたほうが断然いい。
だって、重鷹さんに嫌われない。
俺が階段を登るたび、だんだんと前のめりになってくる晶馬をため息をつきながら見上げた。
どうやら晶馬が落ちるほうらしい。
後一段登ったら晶馬は階段を落ちるだろう。
だから俺は階段に足をかけずに後ろに倒れ込んだ。
晶馬がびっくりした顔をしている。
へへ。ざまぁみろ。
思惑が外れて残念だったな。
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