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親衛隊

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月曜日学校へ行くと何だかクラスがざわざわとしている。
俺が教室に入ったらみんなこっちを見てきてヒソヒソと何か話している。

何だよ。

「千葉柚紀! どいつだ!」

教室の入り口から突然名前を叫ばれてびっくりして、そちらの方向を見てみたけど全く見たことない生徒たちだった。
だけど大勢で押しかけたその生徒たちは揃いも揃って可愛らしい見た目だ。

「俺だけど……、なんですか?」
「お前か!! ちょっときてもらおうか!」
「え、今からですか? 授業始まりますよ」

俺は特待生枠で入ってるから単位など落とせない。授業が分からなくなったらどう責任とってくれるんだ。

「いいからこいよ!!」

彼らは有無を言わさず俺の腕を引っ掴み引きずってでも連れて行こうとしてくる。
如何せん力の弱い俺だから彼らのように可愛らしい見た目の生徒だとしても数に頼られると手も足も出ない。
俺は引きずられてあっけなく校舎裏に連れてこられた。

「僕は蓮水会長の親衛隊隊長、藤田だ!」
「親衛隊……それが俺になんのようですか」

というか親衛隊なんてものがあるのか。すごいな重鷹さん。

「お前、蓮水会長を脅してるんだろ!!」
「は? 俺が会長を脅してる?」
「しらばっくれるつもりか!! 土曜に会長とお前が一緒に出かけて、しかも一緒に帰ってきたところを何人かの生徒が見てるんだよ!!」
「いや、土曜に確かに俺は……」

会長と出かけたと言おうとしたけど、本当にそれでいいんだろうか。
会長が俺なんかと仲良くしてると周りに知られるのは、会長にとって良くないことなんじゃないのか? 俺には悪い噂しかないんだし。少しでも会長の不名誉になることは避けたい。

「俺が会長といたのは、たまたまです」
「はー? たまたまー? たまたま朝一緒に出かけて、たまたま一緒の時間に帰ってきたって?」
「そうです」
「そんなの信じられるわけないでしょ!!」

怒りでプルプルと震えている彼に、俺は息を吐いて見下した目をむけた。

「なんですか? じゃあ、あんたは会長が、俺なんかの脅しに屈して俺の言いなりになるような弱い人間だと思ってるの?」
「そんなわけっ」
「でもあんたが言ってることはそういうことだろ」
「っ! ……さぃ……うるさいうるさいうるさい!!!」
「隊長!!」
「隊長っ、それはいくら何でも!!」

ずっと俺と話していた親衛隊長が一体どこにしまっていたのかナイフを取り出した。
うそ。俺刺されるの?
俺に向かってナイフを振り上げてくるその動作が嫌にスローモーションに見える。
怖くて体は動かない。

親衛隊長の周りにいる生徒たちは慌てふためいていたり、驚いて固まって動けなくなっていたり、様々だ。

俺は振り上げられたナイフを見た。そしてその奥に見える校舎の中に重鷹さんが居るのを見つけた。
重鷹さん、助けて。
だけど重鷹さんはこちらに背を向けていて、一緒にいるのは…………日向。

日向は、重鷹さんに向かって笑顔で何か話してる。
重鷹さんは、どんな顔をしている?
分かってる。重鷹さんはちゃんと俺が好きだ。俺は重鷹さんを信じてる。日向とはたまたま話してただけだ。
だけど俺はその光景を見たくなくて、恐怖で動かなかったはずの体は動いて、ギリギリのところでナイフを避けることが出来た。

と、思ったけど背中にスーッと涼しい風が当たる。どうやら避けた拍子に背中部分の制服が切れたようだ。少しヒリヒリするから皮膚もやられているかもしれないけど。

「た、隊長! やばいですって!」
「こんなことっ、親衛隊解体どころかっ、退学も……」
「はー? じゃあ、脅せばいいだけでしょ?」
「隊長……」
「なに? 文句あるわけ?」
「いえ」
「じゃあ早く彼を……そうだ」

ニヤリと笑った親衛隊長に俺は恐怖を覚えた。

「彼を空き教室に運んで」

その一言で周りであわあわとしていた生徒たちが俺を取り囲んでまた俺はなす術もなく空き教室まで引きずられて運ばれた。
何をするつもりなのか分からず怖い。

「っ」

さっきまではあまり感じなかったけど背中の傷もどんどん痛くなっていってる。

「じゃあ、始めようか」

親衛隊隊長がそう言った。
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