代わりにくらいなれると思った

いちみやりょう

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会長サイド①

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2年になって俺は生徒会長になった。入学式の挨拶の途中で、あの子を見つけた。
1年前、俺が一目惚れした少年だ。
誓って普段はそんな軽薄なことはしないのだが一年前俺は気がついたらその少年にキスをしていた。
彼も俺のキスを嫌がらなかったし、これが運命ってやつなのかと柄にもなく浮かれた。
だけど、その後すぐ連絡先を交換し忘れていたことに気がついて後悔した。
その日はたまたま街に居ただけで、すぐに寮に戻らなければいけなかったし、当時生徒会長ではなかったものの生徒会のメンバーだったために忙しくそのあとは街に降りて彼を探す時間が取れなかった。
あの時、少年を襲っていた男が呼んでいた「日向」と言う名前だけが彼について知っている唯一の情報だった。

そんな彼がこの学園に入学してきてくれた。
やっぱり俺たちは運命なのかもしれないな。

入学式も終わり、数日経った頃食堂に居た彼に声をかけた。

「日向」
「……だれ?」
「覚えていないのか?」
「あ、あー、蓮水会長、でしょ?」
「そうだが、俺たちは一年前にも会っている」
「一年前……? あ、なるほどねぇ。えっとぉ、運命的な出会いだから、どんな出会いだったか、蓮水さんの口から聞きたいなぁ」
「俺はあの時、お前を助けたあとお前を見て運命だと思った。俺と付き合ってくれないか」

一年前と全く口調の違う彼に戸惑いつつ襲われていたということは、食堂で大きな声で話すようなことではないと判断してそう伝えた。


「でもぅ、僕、蓮水さんのことよく知らないしぃ、友達からだったらいいですよぉ」

運命という言葉を聞いて周りが様々な声を上げている。
付き合うのは断られてしまったが、まぁ友達からでも問題ないだろう。

その後すぐ、俺と日向が付き合っているという噂が流れ始めた。
食堂にいた生徒たちが噂を流したんだろう。
それと同時に俺のことが好きだったらしい黒髪の、千葉柚紀という生徒が日向に嫌がらせをしているという噂も流れていた。しかもその柚紀という生徒はとんでもなくビッチらしい。

だが、実際のところ俺は日向と付き合っていない。
俺はアプローチを続けているが、日向にのらりくらりとかわされる。
でも俺の中の違和感は少しづつ少しづつ大きくなっていた。
あの時は会った瞬間に運命だと思ったのに、日向に再会してからは一度もそういう風には思えなかったからだ。

ある日の放課後、廊下を歩いていると空き教室から何やら話し声が聞こえた。
そのまま素通りしようとした時、中から助けてと声がした。
何となく、あの時の日向の姿が目に浮かんだ。

「おい! そこで何をしている!!」

俺が勢いよく空き教室のドアを開けると裸の黒い髪の綺麗な少年と俺の一つ上の学年の生徒が3人いた。見るからに合意そうには見えなかったが、3人がすぐに逃げて行ったところを見るとやはり合意じゃなかったんだろう。
だが、少年の姿に思い出した噂が一つ。
俺のことが好きだからと、日向に嫌がらせをしていたビッチと噂の千葉柚紀、彼がそうだろうか? ネームプレートにはローマ字でYuzuki Tiba と記入されている。
やはり彼だ。

震えている彼を見てビッチというのは嘘なんじゃないかと思った。

だが

日向のことを”どう扱ってもいい人間がいる”そう言った彼を許せないと思った。
だからそう思われる辛さを彼に分らせようと思った。
俺は柚紀のことを誤解していることにこの時はまだ気がついていなかったんだ。
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